予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
医療・健康・介護のコラム
人生100年時代(下)長寿の9つのルール
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
さてさて、今回のブログは「ブルーゾーン」についてお話をした前回の続きです。改めて復習をしておくと、ブルーゾーンとは「長寿者が多い地域」を指す学術用語です。
ところで、なぜ「ブルー」なのでしょうか? 実は単純な理由があります。ベルギーの人口統計学者プーラン教授が、長寿者が多い地域を、地図上に青いインクで円を描いたことがきっかけです。そのため、もし赤いインクで描いていたら「レッドゾーン」になっていたかもしれませんね(笑)
あまり日本では広まっていませんが、海外では「ブルーゾーン」という考えはかなり知られていると思います。特に、ブルーゾーンに選ばれている5地域の1つが沖縄ということもあり、「沖縄=長寿地域」ということは世界的に広く知られるようになりました。もちろん、現在の沖縄は全体としてみると必ずしも健康とは言えませんが、一方で長寿者が多いというのは確かな事実でもあります。
長寿の9つのルール
「そろそろ、長寿地域に住む人はどのような生活を送っているかを教えてほしい!」と思われている方も多いと思うので、先に結論だけ述べておきます。
【長寿の9つのルール】
ルール1 | 適度な運動を続ける |
ルール2 | 腹八分で摂取カロリーを押さえる |
ルール3 | 植物性食品を食べる |
ルール4 | 適度の赤ワインを飲む |
ルール5 | はっきりとした目的意識を持つ |
ルール6 | 人生をスローダウンする |
ルール7 | 信仰心を持つ |
ルール8 | 家族を最優先する |
ルール9 | 人とつながる |
出典:「ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿のルール」、(ダン・ビュイトナー著、ディスカヴァー・トゥエンティワン )
おそらく、この9つの長寿ルールをみても「どこかで聞いた話だな」と思われたのではないでしょうか。それもそのはずで、そもそも人が長生きするには何が大事かというのは、別に長寿地域を調べるまでもなく、すでにこれまで星の数ほどの研究が行われてきています。そのため「ブルーゾーン」を調べたからと言って、そんなに新しい「発見」があったわけではありません。
一般的な街を「ブルーゾーン」にできるのか
しかし、ここからが面白いのですが、「ブルーゾーン」について調べたジャーナリストのダン氏は、「あまり歩かず、ジャンクフードやドーナツを好むなど不健康な習慣を持つ人が多い地域、すなわち米国の典型的な都市をブルーゾーンにできるだろうか?」と考えを進めたのです。
そして2009年5月、人口1万8000人の小さなアルバート・リー市(ミネソタ州)で「ブルーゾーン・バイタリティー・プロジェクト」という試みを始めました。
たとえば次のようなことをやったそうです。
1)車をなるべく使わないようにするため、湖の周りの歩道を整備した
2)レストランでは小さい皿を使うことで食べる量を減らしてもらった
3)学校での食事メニューを健康的なものに変更した
4)食料品店の食べ物に「長生きするラベル」を貼った
5)やる気が続くように「人生の目的」を整理するセミナーを開催した
出典(英文):http://www.aarp.org/health/longevity/info-01-2010/minnesota_miracle.html
実施後、推定余命が2.9年も延びていた
プロジェクトは同年10月に終了し、最終的に3464人の市民が参加しました。
気になる成果ですが、1)ウォーキングに参加した人たちは体を動かすことが習慣になり、テレビやコンピューターから離れ、サイクリングやガーデニングをする人たちが増えた。2)プロジェクト参加者786人の健康状態から推定余命を測定するとプロジェクト実施前よりも2.9年延びていた、などがあったそうです。
このパイロットプロジェクトに刺激を受けて、さらにカリフォルニア州やアイオワ州でも取り組みが始まっています。個人的にこの「ブルーゾーン・プロジェクト」がすごいなと思うのは、1)効果があると分かっていることを、2)市民を巻き込んで適切に実施し、3)効果の検証をできる限りしていることです。
地域全体を動かす大切さ
私たちは一人で生きているわけではなく、一人ひとりが地域の中でつながって生きています。そのため、地域全体を動かさないことには、私たち一人ひとりの行動や意識も変わりにくいものです。
ぜひこのような取り組みが日本でも広まっていくとうれしいなと思いますし、そのためのサポートを、今後もやらせていただきたいと思います。
それではまた次回!
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