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あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

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5歳過ぎのおねしょは病気かも…4つのチェックポイント

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トラウマになる前に受診を

 誰しも幼少時期には一度は経験するおねしょ。一般的には2歳を過ぎる頃からその頻度は減っていくが、5歳を過ぎてもしてしまう子供もいる。それは、おねしょではなく「夜尿症」という病気の可能性があるという。年齢が上がるにつれて子供の精神的なダメージも大きくなり、いじめよりも強いトラウマになりやすいとの報告もあることから、専門医らは医療機関に相談するよう呼び掛けている。親が気づいてあげられる4つのチェックポイントとは―。

6割が「受診させてよかった」

 乳幼児期の夜尿は「おねしょ」と呼ぶが、5歳を過ぎると「夜尿症」という病気の可能性があるという。その割合は、5歳で約15%、小学校では低学年で約10%、高学年で約5%とされ、ごくまれに成人しても続くケースもある。夜尿症は、アレルギー性疾患に次いで2番目に多い慢性小児疾患であり、日本では約78万人の子供がかかっているといわれる。

 夜尿症の子供約100人を対象にした調査では、夜尿症はいじめよりも精神的なダメージが大きいことが明らかになった。また、夜尿症が改善することで自尊心が回復することも分かっている。しかし、実際に医療機関を受診しているのは約78万人のうちわずか16万人と推計され、さらに治療を受けている子供はおよそ4万人と少ない。

  夜尿症が疑われる子供を持つ母親への調査によると、医療機関に相談したり、治療をしたりする夜尿症患者が少ない理由の一つとして、そうした母親の48%が「治したいがあまり通院はしたくない」という消極的な治療意欲を持っていることがあるようだ。だが、実際に子供を受診させた母親の62%は「(受診させて)よかった」と答え、「よくなかった」(6.6%)を大きく上回っている。

低学年からの改善治療で高学年までに“卒業”が可能

 そもそも、夜尿症の原因は何かー。子供の性格や親の子育てが問題といわれることがあるが、夜尿症の専門医でもある昭和大学藤が丘病院小児科の池田裕一准教授は「それは誤った考え方」と否定する。同准教授によると主な原因には以下の2つがあるという。

夜尿症の主な原因

  • 夜間多尿:夜間の尿量をコントロールする「抗利尿ホルモン」の分泌量が不十分なため、就寝中に尿が多く作られ、その尿量が夜間の機能的膀胱(ぼうこう)容量を超えてしまうことにより夜尿が生じる。夜尿症の中で最多の原因と考えられている
  • 就寝中の膀胱容量低下:就寝中は日中覚醒時に比較して膀胱の容量が約1.5~2倍程度に増大するが、覚醒時と比べて膀胱容量が増大しなかったり、反対に縮小したりすることにより、就寝中に作られる尿を膀胱内にためておくことができずに夜尿が生じる

※上記のいずれか、または両方が組み合わさり、さらに尿意による覚醒ができない場合に夜尿症になる。

 (出典:池田裕一准教授提供資料)

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  治療法は、「生活改善指導」「薬物治療」「アラーム療法」などがあり、これらの治療を行うことで、治療をしない自然経過に比べて完治する割合は約3倍高くなるというデータもある。同准教授は「小学校低学年で生活改善指導などによる初期治療を始めることで、宿泊行事が増える高学年までに夜尿症を“卒業”させることも可能」とアドバイスする。

 夜尿症の代表的な治療法

  1.  生活改善指導: (1)規則正しい生活をする、(2)水分/塩分の取り方に気をつける、(3)寝る前に必ずトイレに行かせる⇒これらに取り組むことで、1~2割程度の子供で夜尿症が治ることが期待できる
  2. 薬物治療:薬(抗利尿ホルモン製剤)を服用する⇒生活改善指導で効果不十分な場合、抗利尿ホルモン製剤もしくはアラーム療法が推奨されている(2010年発表の国際小児禁制学会ガイドライン)
  3. アラーム療法:夜尿アラームを用いる⇒夜間の就寝中、水分を感知すると警報が鳴る装置を用いた治療法。パンツの濡れそうな部分にセンサーを取り付けることで、アラームが鳴り、振動するよう設計されている

(出典:池田裕一准教授提供資料) 

親がチェックすべき4つのポイント

   池田准教授は、夜中のおねしょ以外に親が注意すべき点として、「昼間のちびりなど、少し漏らしてしまうこと」を挙げ、その場合には「早めの受診を」と呼び掛ける。「夜尿症の子供の中には発達障害のあるケースもあるが、障害のある子供でも、きちんと治療をすれば夜尿症は治る。夜尿症を克服すると、本人の自信にもなるので、まずは受診を」と続けた。

  池田准教授がまとめた、親がチェックできる夜尿症のポイントは下記の4つ。

 夜尿症のチェックポイント

  1.  昼間も失禁することがある
  2. 熱中しているときに漏らしてしまうことがある
  3. 落ち着きがない
  4. 寝る前にいつもトイレに行くのを忘れてしまう

(出典:池田裕一准教授提供資料)

  親であれば、子供がおねしょをしてしまった時はつい叱ってしまいがち。しかし、池田准教授は「たとえ自分の子供が夜尿症や、その疑いがある場合でも、子供を責めてはいけない」と主張。「逆におねしょをしなかったり、寝る前にきちんとトイレに行くことができたりしたら、褒めてあげるようにしてほしい。子供は気にしていなさそうに見えても、実際にはおねしょを克服すると、うれしそうにしている。子供は自分から『病院に連れて行って』とはなかなか言えないので、親が気に留めてあげるのがいい」と締めくくった。

  なお、夜尿症に関しては病気という認識が一般にあまりないことなどから、国際小児禁制学会(ICCS)と欧州小児泌尿器科学会(ESPU)が「世界夜尿症デー(World Bedwetting Day)」を制定し(2016年は5月24日)、関心を持ってもらうために、世界各地でさまざまな取り組みを展開している。

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