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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

がんを正しく恐れること(上)~がんは検診さえしておけばよいというのではない~

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マスコミのがん報道の問題点

 マスコミにとっては、芸能人ががんになることは、かっこうのネタになります。がんは、怖い病気ですが、視聴者、読者の同情を誘うことができるため、視聴率を稼ぐことができるのだと思われます。

 マスコミでの芸能人のがん報道が流れるたびにいつも思うことは、正しくがんのことを報道してほしい、ということです。

 単に興味本位だけで、安易な情報を流してほしくない。また、公表した芸能人の方のプライバシーや気持ちには十分に配慮してほしいと願うものです。

 病気になったのは、本人が悪いことをしたわけではありません。それなのに、本人の自宅まで押しかけていって中継をするのは、どう考えてもおかしいと思います。

 そして、こうしたがん関連の報道の最後は、必ずといってよいほど、
 「がん検診しましょう」
 で終わることが多い。

 がん検診は、確かに大事なことなのですが、
 “がんは、検診さえしておけば、大丈夫”
 “がん検診しておけば、がんは克服できる”
 のようなメッセージは、大変誤解のあるメッセージであると思われます。

 正しくは
 “検診が有効ながんは、一部の限られたがんのみであり、検診が向かないがんもある”
 なのです。

 がん検診さえしておけばよい、というメッセージは、がんになった人に対する偏見にもつながります。

 「どうして検診しなかったの?」
 「検診しておけばよかったのに」
 と、自己管理ができなかった悪い人、というレッテル付けにもつながってしまいます。

 さらに、検診していても、がんになった人に対しては、
 “検診していても見つからなかったほど悪いがんになったかわいそうな人”になってしまいます。

 今回は、がん検診に対して、あまりに偏った情報が多いので、がん検診の有効性と害について、正しく解説してみたいと思います。

有効ながん検診は種類も年齢も限られている

 がん検診が有効ながんは、日本では、子宮 けい がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がんの五つとされています=表(注1)。逆に言うと、この5つのがん以外を見つけるため、がん検診を受けることはあまりメリットがなく、勧められないということになります。

 表 検診が有効ながん

対象臓器 効果のある検診方法 対象者 受診間隔
問診に加え、胃部エックス線または胃内視鏡検査のいずれか 50歳以上 2年に1回
子宮頸部 問診、視診、子宮頸部の細胞診、および内診 20歳以上 2年に1回
乳房 問診および乳房エックス線検査(マンモグラフィー) 40歳以上 2年に1回
質問(医師が自ら対面により行う場合は問診)、胸部エックス線検査および喀痰かくたん細胞診(ただし喀痰細胞診は、原則50歳以上で喫煙指数が600以上の方のみ。過去の喫煙者も含む) 40歳以上 年1回
大腸 問診および便潜血検査 40歳以上 年1回

 この表でも、すべての年齢に対して、がん検診が勧められる、というわけではなく、一定の年齢以上としています。

 例えば、乳がん検診は、40歳以上の女性に2年に1度の推奨となっています。

 ちなみに、米国や、英国では、乳がん検診の有効性が認められる年齢を50歳から74歳までとしていて、40歳代の検診を推奨していません(注2、3)。

 この理由としては、40歳代の女性が定期的に乳房エックス線検査(マンモグラフィー)を受けることは、有効性を害が上回ってしまうというのです。

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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2件 のコメント

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そうは言われても

ひしんじゅん

40代女性です。海外在住です。 若い頃から婦人科で健康チェックを受けていました。40を過ぎてからマンモグラフィーで石灰化が見つかり組織診、結果は...

40代女性です。海外在住です。

若い頃から婦人科で健康チェックを受けていました。40を過ぎてからマンモグラフィーで石灰化が見つかり組織診、結果は良性、ということが1年に2度あり、3度めで乳がんが見つかりました。早期で見つかったので良かったと思っています。

がんは非浸潤性だったので手術と放射線のみで治療は終わりましたが、半年に一度マンモグラフィーと超音波検査を受けるよう言われています。40歳以降は年に1度その検査を受けてきましたが、石灰化が見つかってからは半年に1度繰り返しています。組織診でも手術前の検査でも放射線を使っています。

こうした検査が健康に悪いのではと不安です。医師はマンモグラフィーの被曝はごく微量で、それによる健康被害のリスクより、検査をすることの方が有意義だから、という説明でした。検査の頻度を減らしたいとは思っても、一度がんにかかった以上、医師の指示に従わないことには勇気がいります。

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きみちゃん

その通りだと思います。

その通りだと思います。

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