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医学用語を分かりやすく…患者の誤解をなくす

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CTで「体を輪切り」?…

医学用語を分かりやすく…患者の誤解をなくす

「分かりやすい言葉が医療の信頼につながる」と話す明治大学教授の田中さん

 インターネットの普及などで、医療関係以外の一般の人でも病気や治療の詳しい情報に接する機会が増えた。医師や看護師ら医療の専門家が使う「病院の言葉」(医学用語)を、分かりやすく、かつ、人を傷つけない表現にする取り組みが行われている。

 病院で病気の説明などに使われる言葉は分かりにくい。国立国語研究所が2004年に行った調査によると、一般の人の84・3%が「言い換えたり、説明を加えたりしてほしい言葉がある」と答えた。

 「 喀痰細胞診かくたんさいぼうしん (痰に含まれる細胞を調べること)」「 飛沫ひまつ 感染(せきやくしゃみで病気がうつること)」などの専門用語が分かりにくいと答えたのは57・1%、「プライマリーケア(身近な医師による総合的な医療)」などの外来語が56・5%、「CT(コンピューター断層撮影法)」など英語の略語が47・3%だった。

 調査に携わった明治大学教授(日本語学)の田中牧郎さんは、分かりにくい理由として、〈1〉言葉が知られていない〈2〉言葉の理解が不正確〈3〉理解を妨げる心理的な負担がある――の3点を挙げる。

 調査では〈1〉に当たる医学用語としては、「クリニカルパス(退院までの道筋を示した表)」(認知率8・9%)、「イレウス(腸閉塞)」(同12・5%)、「寛解(症状が落ち着いて安定した状態)」(同13・9%)などで、9割近くが理解できていなかった。

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 〈2〉の不正確な理解では、言葉そのものは知られているものの医療現場での意味と違うために誤解されるケースが多かった。典型的な例は「ショック」という言葉だ。医学的には「血圧が下がり生命の危険がある状態」を指すが、46・5%が「急な刺激を受けること」、28・8%が「びっくりすること」など日常的に使われる意味と思っていた。

 田中さんは、医療側が日常的に使われる言葉で言い換え、誤解しやすい言葉は丁寧に説明することが必要だと指摘した上で、「医療側と患者との間で、誤解なく情報が共有されることは、信頼関係につながる」と話す。

 医療現場で、最も分かりやすい説明を求められるのは、小児科だ。「子どもは知っている言葉が少ないので、耳慣れない言葉を使うと誤解されてしまう」と長崎大学教授の森内浩幸さんは指摘する。

 例えば「非特異性」。「ひとくいせい」→「人食い性」として怖がらせてしまう。「頭の中を映すMRI(磁気共鳴画像)」と説明すると、「頭で考えていることが映る」、また「CTという輪切りの写真」と言うと、「体を輪切りにされる」と勘違いされることもあったという。

 医学用語の多くが昔に作られていて、患者や家族を傷つけやすい表現も多く、置き換えが進められている。「害」というマイナスイメージの強い言葉を避けるために「~障害」という用語を「~症」と置き換える傾向にある。「奇形」を別の表現にする検討も日本医学会で始まった。森内さんは「差別用語ではなくても相手が傷つく恐れがある場合を、医師は現場で考える必要がある」と言う。

 医学用語は、医学的に正確であることが前提だが、患者や一般の人には分かりやすく傷つかない表現であることが求められている。

 

  メモ  「医学用語」について、医療の専門家だけでなく、患者や市民の立場で考えるシンポジウムが16日午後1時、東京都文京区の日本医師会館大講堂で開かれる。無料。先着500人。問い合わせは主催の日本医学会((電)03・3946・2121)へ。(山田聡)

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