泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト
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松田優作さんも小倉智昭さんも…膀胱がんって、どんな病気?
先日、フジテレビ系列の朝の情報番組「情報プレゼンター とくダネ!」の司会を務められている小倉智昭さんが、
一番有名なのは、かつての映画大スター・松田優作さんでしょう。彼は若くして膀胱がんになり、亡くなってしまいました。その時は、泌尿器科の外来に、「自分も膀胱がんではないか」と心配して受診した人が数多くいて、外来が混み合って大変だった、と私の上司が話していました。他にも有名人では、菅原文太さんやボクシング元世界チャンピオンの竹原慎二さんも膀胱がんにかかっています。
では、膀胱がんとはどのような病気で、何に気をつけたらよいか、簡単に解説しましょう。
「痛みがないのに血尿」早めに受診を
膀胱にできる「尿路上皮がん」という腫瘍で、40歳以上の男性に多く発生します。主な症状は血尿です。痛みがないのに血尿が出てきている場合は、膀胱がんの疑いがあるため、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。
最大の原因は「タバコ」
もっとも大きな原因は、「タバコ」です。喫煙している人は、喫煙していない人と比較すると、膀胱がんが数倍発生しやすいことがわかっています。
また、特定の染料や化学物質が膀胱がんを引き起こすことがわかっており、そのようなものを扱う職業の人に多く発生します。先日も、とある染料工場の従業員が膀胱がんになったというニュースがありました。
(関連ニュース: 化学工場で膀胱がん、20人に…労災認定議論へ )
また、日本ではまれですが、「ビルハルツ住血吸虫症」という寄生虫が膀胱がんを引き起こすことも知られています。
内視鏡検査…男性の方が苦痛
膀胱がんを診断するのにもっとも重要な検査は、「膀胱鏡」という内視鏡検査です。これは、女性に比べると男性の方が、苦痛が大きい検査です。女性の尿道は5cmほどですが、男性の尿道はペニスがあるため15cmになっています。また、男性の方は尿道、括約筋、前立腺という通り道が曲がっています。このため、内視鏡を通すのが大変なのです。
以前は「硬性鏡」という鉄の棒をペニスの先から膀胱まで突っ込む検査であり、患者さんにとっては非常に苦しかったのです。現在は「軟性鏡」という細くて軟らかい内視鏡に変わってきているので、比較的苦痛が少なくなってきています。
膀胱鏡という検査では、内視鏡を膀胱まで入れて、膀胱の中に水をためてあげることで腫瘍の位置や形を診断します。私が初めて膀胱腫瘍を見たとき、率直に「きれい」と感じました。がんという恐ろしい病気ではあるのですが、膀胱の中でフワフワとたなびくイソギンチャクのように見えます。
ただし、それは予後(経過)の良い「表在性がん」というタイプです。膀胱の中にイソギンチャクのように、にょきにょきと育ってくるのです。予後の悪い「浸潤がん」では、膀胱の壁の奥深くまで食い込んでいるため、ベッタリとした顔つきの悪い腫瘍になっています。
また、CTやMRIなどで転移や深達度を調べる必要があります。
治療方法…手術前に抗がん剤を投与する場合も
表在性がんと浸潤がんによって治療方法が変わります。
表在性がんの場合は、経尿道的手術といって、内視鏡に付いた電気メスで腫瘍を削り取ってきます。手術は短時間で終了し、入院も1週間ほどで済む場合が多いですが、再発しやすいために定期的なフォローアップが必要となります。
浸潤がんの場合には「膀胱全摘」といって、膀胱を開腹手術で摘出しなければなりません。多くの場合は、回腸を用いて「新膀胱」もしくは「回腸導管」という膀胱の代わりとなるものを作る「尿路変更術」という手術が必要になります。また、手術前に抗がん剤の投与が必要になる場合もあります。
転移が認められる場合には、抗がん剤の投与が一般的です。
目で見て「尿が赤い」…必ず受診を
膀胱がんという病気は、決して多くはないのですが、命に関わる可能性がある重大な病気です。もしも、目で見て「尿が赤い」と感じた時(肉眼的血尿がある時)には、必ず泌尿器科を受診しましょう。
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