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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

子育て万能法はあるのか? 置き去り事件で「評論家」続出

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恵比寿のアトレ西館のビアガーデンに子連れで行っちゃいました。他にも子連れいましたよ。

恵比寿のアトレ西館のビアガーデンに子連れで行っちゃいました。他にも子連れいましたよ。

 週末に関東も梅雨入りしました。雨の日に2人の子どもを連れて歩くのはなかなか大変です。もう登山用の雨合羽で歩いてやりたいです。梅雨が終われば猛暑と蚊の季節。子どもを守るのは大変です。

しつけ議論のきっかけに

 先週、日本中だけでなく海外の注目も集めたのは、小学2年生の男の子がしつけのためとして山道に置き去りにされ、奇跡的に保護されたというニュースでした。「無事で良かった」の一言に尽きますが、今回の件を通してしつけや教育方法についての議論が巻き起こったのは興味深いことでした。

 この件は、結果的に心理的虐待にあたるとして児童相談所に通告されたとのことです。子どもは親の付属物という扱いでしたが、今は子どもの人権に対する意識が変わってきていてとても良いことだと思います。「しつけ」という名目で暴力や暴言を正当化する人はいまだにいるようですが、子どもの安全と、身体的、心理的虐待とならないことを守るのが教育の大前提だと思います。

とは言え悩む やんちゃな子どもの対処

 とは言え、やんちゃな少年に物事の善悪や節度を教えることの困難さについては、実際に子育てをしている人たちから「共感する」という意見が多数聞かれました。私自身も4歳の娘にいまだに手を焼くことも多く、 癇癪かんしゃく を起こしてどうしようもない時は、家の中で鍵のかかる部屋に逃げ込み、会話が成立する程度の冷静さを娘が取り戻すのを待つこともあります。

 その癇癪のきっかけはいつも本当に 些細ささい なことで、例えばおやつのプリンに(片手で運ぶために)スプーンを刺してテーブルに置いたら、「刺してほしくなかった!」とキレだすというようなことです。「ごめんね」と言ってもだめだし、「じゃあ、今からどうしたらいいのか」と聞いても「イヤだった」としか言わないし、怒ってももちろんだめで、殴られたり蹴られたりするので、その場から去る以外の方法が今のところありません。

 今回の件で素人から専門家まで「このようにすれば子どもの教育はうまくいく」というような意見をニュースサイトやSNSで多数見ましたが、子どもの好ましくない行動を注意して改めさせるという場面は非常にバリエーションが多く、私が参考にできるものは見つかりませんでした。「怒るのではなく叱る」とか「好ましくない行動は無視して良いことをとにかく褒める」などはよく見ますが、その程度でうまく行ったら悩みなんかありません。

 子どもは一人一人違いますし、成長段階で日々変化していきますから、子育てに「万能法」はありません。結局は、同年代の子どもを持つ親たちとつながりを持って、共感し合ったり相談し合ったりすることで子どもに分別がついていくのを待つしかないのかなあと思っています。

親同士の励まし合いも善しあし…

 ただ、「子育てに正解はない」というのと「どれでも正解」は決して同じではありませんが、親同士で励まし合うと極端なことも許容されてしまう結果になることがあります。また、思いきって悩みを吐露したのに「あらうちの子はそんなことないわ、大変ね。ご愁傷様」と言われた場合の落ち込みようはなかなか筆舌に尽くしがたく(経験済み)、親同士のつながり合いにも注意は必要です。

 子育てに悩むこと自体は悪いことではないと思うので、ベストと思うことを真剣にやるしかありません。私の娘の場合、 愛嬌あいきょう があってお友達とも仲良く遊べ、普段はママ大好きと言ってくれてラブラブなので、南の島に時々台風がやってくると思って頑張ります。ただ、飲食店など外出先でやられると、迷惑をかけるのもまずいし、あまり強引なこともできないし本当に途方にくれます。よく年配の方が「今の親たちは子育てができない」というようなことを言うのをききますが、「昔は体罰でもなんでもして子どもを手なずけていただけでしょ?」「子どもも多くて、今ほど迷惑がられなかっただけでしょ?」と思ってしまいます。

 昔に比べ、「虐待」や「体罰」がよくないという認識が広まってきたことはとてもいいことだと思います。私は「しつけ」という言葉が大人の価値観に合わせさせるようで大嫌いなのですが、今回の件を機に、「しつけ」という名の下に虐待レベルのことがまかり通ることがなくなるように願っています。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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9件 のコメント

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子供は千差万別

りつこ

子供は個々に違います。その子供の性格や言動を一番よく分かっているのは、実際にその子を育てている親でしょう。 どんな立派なマニュアルがあろうと、誕...

子供は個々に違います。その子供の性格や言動を一番よく分かっているのは、実際にその子を育てている親でしょう。
どんな立派なマニュアルがあろうと、誕生からの日々毎日の育児経験の積み重ねには及びません。親がその子のエキスパートです。
無責任な情報に惑わされず、信じるやり方でやればよいと思います。
そのやり方が尋常でなくおかしいようなケースは、しつけ方以前に、元々の親の人格や、あるいは判断力の誤りといった問題によるところも大きいのではないでしょうか。単純に子育て方法論として、ひとりよがりな正誤だけ語られることに違和感を覚えます。

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ある艦長の苦悩 思想と利害関係

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

有名なアニメのセリフに 「殴ってなぜ悪いか」 というのがありますが、体罰その他、罰をめぐる問題は複雑です。 何が過剰で、何が過小か、判断基準が主...

有名なアニメのセリフに

「殴ってなぜ悪いか」

というのがありますが、体罰その他、罰をめぐる問題は複雑です。

何が過剰で、何が過小か、判断基準が主観と主観のぶつかり合いなので、一般化しにくいのです。

それは、本文で宋先生が書かれた本意でしょう。

さじ加減が難しい。

子供は大人じゃありませんし、大人の中でも寛容な人から厳しい人まであります。

思想や利害関係のせいです。

利害関係があるほどに、意見がゆがみます。

家族は両極端でしょうが、むしろ、すごく遠い他人のほうが優しくなれる理由でもあります。

まあ、子育てとかよくわかりませんけど、トラブル家庭が多いほどに、自分が家庭を持った時のストレスも多いだろうので、心の準備だけしときます。

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子どもに聞いてあげてください

ゆうまま

先生のお話を見ていてほほえましく思うとともに、子育てはやはり知識が必要だと感じます。お医者様になるには資格がいるけれど、母親になるのに資格はあり...

先生のお話を見ていてほほえましく思うとともに、子育てはやはり知識が必要だと感じます。お医者様になるには資格がいるけれど、母親になるのに資格はありません。

6歳までの子どもの物事の認識の仕方は大人とは全く違います。
そして彼・彼女の中には明確な秩序・ルールが存在します。
なので親がやってあげるのではなく、まずプリンの話で言えば「プリンだよ」と声をかけ、それから「食べるのには何がひつようかな?」「スプーンかな?」といいスプーンを渡してみれば、自分でやりたいようにやると思います。

良かれと思って大人がすることは大抵的外れで、それに反発されると大人はむっとして感じが悪くなります。
でも彼彼女にも意志があるのです。そこを理解したうえで、尊重できる親御さん・教育者が増えることを願ってやみません。

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