文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

yomiDr.記事アーカイブ

野手は内科で、投手が外科なら…大谷選手のような二刀流の医師は?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 

内科医と外科医で、異なる治療戦略

 医療には内科系と外科系がありますね。消化器内科と消化器外科、循環器内科と心臓血管外科、呼吸器内科と呼吸器外科などがわかりやすいですね。野手と投手のようなものです。 () えて内科が野手で、外科を投手として比べているのは、内科医を志してその後に外科医になることは無理ですが、外科医を志して、その後に内科医になるひとは少なくないからです。野球では投手から野手はいますが、野手から投手に転向する人はほとんどいませんね。

 監督によって野球の作戦に違いがでるように、医療でも治療戦略が異なることがありますよ。わかりやすいのは心臓の病気で、心臓の血管が狭くなる病気、つまり狭心症になると、心臓血管外科の先生はバイパス手術を選択することが多く、一方で循環器内科の先生はカテーテル治療を選択することが多いと思います。自分が得意な領域の作戦を選択するという当たり前の帰結と思っています。そして両方の診療科が 切磋琢磨(せっさたくま) している病院では問題はおこりません。本当の二刀流ということです。しかし、片方の力が明らかに強い病院ではそちらの意見が優先されるでしょう。

 また、循環器内科しかない病院では、ある時は致し方なくカテーテル治療を選択しているかもしれません。また心臓血管外科の先生が循環器内科の仕事まで行っている病院では、循環器内科と 標榜(ひょうぼう) していながら、自然とカテーテル治療ではなく、バイパス手術の治療数が増加することもあるでしょう。内科領域と外科領域で異なった診療科が併存する場合には、ある意味致し方なく生じることかも知れません。

 

野球のようにわかりやすい評価、医療でも可能か?

 一方で、泌尿器科や産婦人科、整形外科などは内科的診療も外科的診療も行っています。つまり二刀流ですね。そこで問題になるのは、本当に一流の外科的診療も、一流の内科的診療もできるかがわからないことです。外科的手技はまったくできない泌尿器科医、産婦人科医、整形外科医もいるでしょう。また外科的手技にだけ興味がある人たちもいます。本当の二刀流の先生は思ったほど多くないのかも知れません。そして野球のようにわかりやすい評価が医療では難しいからです。野球の成績はデジタル的に評価が可能で、デジタルであれば誰もが納得する比較ができます。その点、医療評価という視点から手術数や外来診療数以外でのデジタル的なデータをあまり見ません。やっぱり医療は運と縁だと思う今日この頃です。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常の一覧を見る

最新記事