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知って安心!今村先生の感染症塾

医療・健康・介護のコラム

人間にとって最も危険な生物は?…6月は「蚊」の発生防止強化月間です

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6月は「蚊」の発生防止強化月間です

 「蚊の用心!」

 ダジャレの 上手(うま) い下手は、さておき…。

 今回ご紹介するのは、東京都が作成した啓発ポスターです。よく見ると、頬に平手打ちのあとがついていますね。そして、さらにアップにしてみると…つぶされた「蚊」が頬にはりついています(笑)。

 もっと大きくして、つぶれた「蚊」の姿を見たい方は、こちらからどうぞ

 『蚊の発生防止強化月間ポスター』

 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/eisei/baikaikataisaku/boushi_gekkann.files/H28poster01.pdf

 デング熱、ジカ熱(ジカウイルス感染症)など、最近は「蚊」の媒介する感染症が話題となっています。東京都では6月1日~30日を「蚊の発生防止強化月間」と定めて、この時期から蚊の対策をすすめています。「まだ蚊も飛んでいないのに、どうして今なの?」という声も聞こえてきそうですね。でも、この時期を強化月間とした、ちゃんとした理由があるのです。もうすぐ蚊の増える季節がやってきます。みなさんも、今から蚊の対策を始めることにしましょう。

「人の命を奪っている生物」ランキング

 私は「蚊」が嫌いです。蚊に刺されると、かゆくて、かゆくて、たまりません。でも、蚊が嫌いな本当の理由は「かゆみ」ではありません。蚊が多くの感染症を運び、世界中の人に迷惑をかけ、命さえも奪うことがあるからなのです。

 ここで、興味深い報告をご紹介しましょう。世界中で「人の命を奪っている生物」のランキングです。

 https://www.gatesnotes.com/Health/Most-Lethal-Animal-Mosquito-Week

 このランキングで、人にとって最も危険な生物は、サメでもヘビでもありません。第1位に輝いたのは、なんと「蚊」だったのです(ちなみに、悲しいことに2位は「ヒト」となっています)。世界では、今もマラリアによって多くの人が亡くなっています。デング熱、ジカ熱、ウエストナイル熱、チクングニア熱、日本脳炎、黄熱・・・「蚊」は世界中で様々な感染症を運んでいるのです。

デング熱ではじまった蚊の対策

 2014年8月、約70年ぶりに「デング熱」の国内感染者が発生しました。東京都・代々木公園からはじまった国内での感染者数は、最終的に162人となり、社会的にも大きな話題となりました。東京都では、このデング熱流行があってから、蚊の発生シーズン前から蚊の発生防止対策を強化するようになっています。以前は「蚊」でいっぱいだった代々木公園も、今では驚くほど「蚊」が減ってきています。対策を徹底すると、こんなに減らすことができるのだと感心してしまうほどです。

 『蚊の発生防止強化月間』東京都

 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/eisei/baikaikataisaku/boushi_gekkann.html

 幸い昨年は、デング熱の国内発生は報告されませんでした。では、日本でデング熱を発症する人が、本当に全くいなかったのかというと、実はそうではありません。

 『デング熱に海外で感染、113人に…過去最多ペースで増加』

 /article/20160516-OYTET50042/

 デング熱は、東南アジアや中南米を中心に発生している感染症で、世界保健機関(WHO)の推計によると、世界では毎年5000万人から1億人が感染しているとも報告されています。日本からは、毎年1500万以上の人が海外旅行に出かけています。そして、日本を訪れる外国人旅行者も増えています。以下のページにある、2015年の東京都におけるデング熱の発生状況を示した報告をごらんください。国内発生が報告されていなくても、海外旅行等で流行国へ渡航して、帰国後にデング熱を発症する人は、一年中いたことがわかります。

 『デング熱の流行状況(東京都 2015年)』東京都感染症情報センター

 http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/dengue/dengue2015/

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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