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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

健康・ダイエット・エクササイズ

[EPA・DHA]血中脂質を改善する機能 

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 食品に含まれている「油」には、サラダ油やオリーブ油といった植物由来のもの、牛脂やラードといった動物由来のものなど、様々な種類があります。サラダ油は液体ですが、牛脂は固体です。この違いは、油の構成成分である「脂肪酸」の性質の違いによります。一般に、動物由来の油は「飽和脂肪酸」という二重結合を含まない構造を持つ脂肪酸の割合が高いため固体となり、植物由来の油は「不飽和脂肪酸」という二重結合を含む構造を持つ脂肪酸の割合が高いため液体となります。ところが、魚は動物ですが、その油は液体なのです。これは、魚由来の油に、今回解説しますEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)という名前の不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることによります。 

栄養成分としてのEPA・DHA

  EPA・DHAに限らず食品に油として含まれる脂肪酸は、体を動かすエネルギー源となる他に、体を形作る細胞の外枠(細胞膜)の材料にもなっており、複数の種類の脂肪酸が正常に働くことで体の機能が維持されています。私たちは、必要に応じて炭水化物などの別の栄養成分から脂肪酸を体の中で作り出す能力を持っています。しかし、一部の不飽和脂肪酸は体の中で作ることが出来ず、食品から摂取する必要があります。

 このような脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれ、欠乏すると皮膚炎などが発症します。EPA・DHAはこの必須脂肪酸の一つでn-3系脂肪酸注)に分類される脂肪酸です。このようにEPA・DHAは栄養成分としての役割を持っていますが、それとは別に独自の機能を持っていると考えられています。 

血中脂質を改善する機能

 EPA・DHAの機能性が注目されるようになったきっかけとして、1970年代にデンマークで行われたイヌイット(エスキモー)の食生活と健康に関する研究が挙げられます。イヌイットの人々の暮らす地域は低温のため穀物や野菜などを栽培することが難しく、食事は漁で得られる魚などの生肉が中心でした。通常、肉に偏った食生活を送ると心臓病による死亡率が非常に高くなると予想されるのですが、結果はそうはなりませんでした。この原因について研究が進み、魚の油に含まれるEPA・DHAに血中脂質を改善する機能(中性脂質を下げる作用や、HDL-コレステロール=いわゆる善玉コレステロール=を増やす作用)があることが明らかとなりました。現在、中性脂肪が気になる方に適した特定保健用食品として、EPA・DHAを関与成分とした商品が幾つか許可されています。

認知機能への効果は現状では不明

 DHAは体の中で脳や目に多く存在し、特に脳において何らかの役目があるのではないかと注目されてきました。DHAと脳・精神機能との関係については数多くの研究がなされており、DHAの値が低いと注意欠陥多動障害、アルツハイマー病やうつ病といった症状となるリスクが高まると報告されています。しかし、DHAの摂取は、必ずしもこれらの疾病の予防や治療に効果があるとは言えず、さらなる研究が必要です。

 また、DHAを含む健康食品は、このような疾病の予防・治療目的ではなく、記憶力を向上し学習効率を高めると期待して用いられる場合が少なからずあるように思います。これについても、DHAの摂取により記憶力が高まったことを示す研究結果がある一方で、効果が認められなかったとする報告もあるという現状です。また、このような試験で評価される「記憶力」とは多くの場合非常に単純なものだということも重要です。例えば、「4162357」という数字を覚えてもらって、数分後にそれが正確に思い出せるか、といった内容のテストが行われます。学習において記憶は確かに重要ですが、全てではありません。DHAと単純な記憶力に関する研究結果が、必ずしも学習効果に直結するわけではないということにもご注意いただければと思います。 

リウマチやアトピーの予防・治療の研究も

 体の中では、EPA・DHAを基として炎症を抑える作用を持つ幾つかの生理活性物質が作られます。そのため、EPA・DHAの摂取によって炎症性疾患に効果がある可能性が考えられますが、実際にリウマチやアトピーなどの予防や治療に役に立つかどうか明らかにするためには、さらなる研究が必要です。

含有量が多いのはマグロ赤身よりトロ

 EPA・DHAは魚に多く含まれていますが、その含有量は魚の種類によって異なります。含有量が多いのがイワシ、サバ、サンマ、マグロといった青魚です。また、同じ魚でも食べる部分によって含有量が違います。EPA・DHAは脂肪の一部ですので、脂肪が少ない部分だと含有量が少なくなります。例えば、マグロだと、脂身(トロ)100gにはEPAとDHAを合わせて約4.5gが含まれていますが、赤身だと0.15g程度しか含まれていません。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、n-3系脂肪酸注)の摂取目安量を1日2g前後としています。適切な食品を選べば普通の食生活で十分な量をることができます。

EPA・DHAのサプリメント

 EPA・DHAを含むサプリメントが多数流通しており、誰でも手軽に利用することができます。ただし、EPA・DHAを大量に摂取すると、血液が固まりにくくなり、出血が止まりにくくなる可能性があります。消費者庁が定めている栄養機能食品の規格基準では、サプリメント・健康食品として通常の食事に上乗せして摂取する場合、n-3系脂肪酸注)の1日量は2gを超えないようにとされています。

 EPA・DHAの安全性・有効性に関する科学的根拠の詳細をお知りになりたい方は、以下のサイトをご参照ください。

国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

EPA

DHA

(国立健康・栄養研究所 竹林 純)

注)n-3系脂肪酸:特定の化学構造を持つ幾つかの不飽和脂肪酸をまとめた呼び方。n-3系脂肪酸に含まれる脂肪酸には、魚由来のEPA・DHAの他に、植物油由来のα-リノレン酸などがある。

 

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