泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト
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危険? コンドーム破損の確率

先日、勉強のために学会に参加してきました。その時、「感染対策」を勉強する中で、とんでもないことを知ってしまいました。
病院には、外よりも強いばい菌がたくさんいます。その理由は、「抗生物質」の使用です。手術をする患者さんや、感染症を起こしている患者さんには、抗生物質を使います。抗生物質は、体に害を及ぼす細菌を殺すことができますが、その抗生物質でもやっつけることのできない、しぶとい菌が生まれてしまうことがあります。
「耐性菌」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? そのため、病院の外よりも、中の方が危険なこともあるのです。
そのような強い菌に病院内で感染することを、「医療関連感染(院内感染)」と呼びます。我々は、できる限り医療関連感染を起こさないように、抗生物質を適切に使用したり、消毒をしたりします。
感染を予防するために、一番簡単で効果的な方法があります。それは「手指衛生」です。診察のたびに手を洗ったり、消毒したりする必要があるのです。さらに、適切にゴムの手袋を使用することも勧められています。
手術用手袋より不良品率は低い
そのゴム手袋に穴が開いていたら、患者さんに感染を起こしてしまったり、診察する医師が感染を起こしてしまったりする可能性があるので、大変なことになってしまいます。そこで、ピンホール不良(手袋に針穴が開いていないかどうかを調べること)に対する数値として、下記のようなデータが発表されました。
データ結果を示す、AQLとはAcceptable Quality Levelのことで「許容できる不良品率」とされます。例えば、手術用手袋の数値AQL1.5は、200枚で3枚までの不良品を確認したことを示しています。

このセッション自体は院内感染対策がテーマでしたが、性を専門とする私は、リスクの比較に使われたコンドームの数値に目を奪われました。このデータからは2点、重要な指摘ができます。
1)手術用手袋よりコンドームの方が、穴が開いていない可能性が高い。
2)コンドームのAQLは0.25なので、400枚に1枚は穴が開いてしまう可能性がある。
つまり、精液が1L出る人が400回セックスすれば、うち1回はコンドームに穴が開いてしまうのです。
普通、1回の射精で出る精液の量は数mlです。このため、多くの男性は心配する必要はなさそうですが、「自分は射精量が多いかも」と思い当たる人は注意してみてください。
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ANDOUさんのコメント
jacs
ANDOUさんに合わせて職を言えば、教育職(理系)です。 「 1、2とも、文章からは使用しているうちに穴が開いていくという印象を受けます。しかし...
ANDOUさんに合わせて職を言えば、教育職(理系)です。
「 1、2とも、文章からは使用しているうちに穴が開いていくという印象を受けます。しかし「400枚に1枚」は製造過程の不良率についての話で、使用していく中で穴が発生する確率ということではありませんので誤った内容です。」
1の場合、確かに主語がはっきり書いてありませんが、「製造過程で」と考えることもでき、必ずしも誤っているとは言えません。誤解を生む文章は避けるべきですが、完璧な文章を目指すと、何も言えなくなります。
2の場合、「穴があいてしまう」ではなく、ご指摘の通り「穴があいている」が正しいと思いますが、製造過程で穴があいたコンドームを使用すれば、今回の話題「避妊具としての意味」という点からは実質的に同じ事であり、ANDOUさんの意見はそれほど重要とは思われません。
ご職業柄、製品は上部で穴が空くことはないと仰りたいのかも知れませんが、それは今回の話題で論点が違います。
「そもそも「許容できる不良品率」は日本のコンドームメーカーに課せられた規格で、その規格を最低ラインとして各メーカー独自により厳しい検査基準を設定しています。」
条件としてAQL「許容できる不良品率」と断っていますから、これは話題のすり替えで、私には重要とは思えません。各メーカーの事情は、通常では誰にも分からないことです。
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誤解を生む文章の指摘
ANDOU
コンドーム製造メーカーに勤めている者です。私は企画部門担当ですので、今回取り上げられているピンホール不良に対する数値について専門家ではありません...
コンドーム製造メーカーに勤めている者です。私は企画部門担当ですので、今回取り上げられているピンホール不良に対する数値について専門家ではありませんが、下記の文章を誤りと感じました。
1「コンドームのAQLは0.25なので、400枚に1枚は穴が開いてしまう可能性がある。」
2「精液が1L出る人が400回セックスすれば、うち1回はコンドームに穴が開いてしまうのです。」
1、2とも、文章からは使用しているうちに穴が開いていくという印象を受けます。しかし「400枚に1枚」は製造過程の不良率についての話で、使用していく中で穴が発生する確率ということではありませんので誤った内容です。
そもそも「許容できる不良品率」は日本のコンドームメーカーに課せられた規格で、その規格を最低ラインとして各メーカー独自により厳しい検査基準を設定しています。またピンホールといっても様々で、私の勤めている会社では体液や粘液を通すピンホールのサイズより微細なサイズを想定しています。
日本のコンドームの品質は世界的に高く評価されていることは周知の事実です。品質についてはメーカー各社最も神経を使いデリケートな部分です。インターネットという拡散力の高いメディアの場合は特に、内容をきちんと確認された上での掲載をお願い致します。
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