泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト
妊娠・育児・性の悩み
日焼け止めは精子を減らす?

夏も近づくにつれ、徐々に日差しも強くなってきました。日焼け止めを使う人も多いでしょう。テレビを見ていても、昨今の美白ブームを受けて、
こんな
しかし、先日、驚くべき研究がコペンハーゲン大学から報告されました。なんと、日焼け止めが精子を減らす可能性があるというのです。
UVフィルターが精子に影響?

日焼け止めの外用剤(クリーム、ローション)の中には、紫外線を皮膚へ通さなくする成分(UVフィルター)が入っています。
アメリカとヨーロッパで承認されている29種類のUVフィルターを調査したところ、おおよそ半分のUVフィルターが精子の機能障害を起こすことがわかりました。
UVフィルターは、皮膚から吸収され、血流に乗って全身に回ります。アメリカ、スペイン、フランス、デンマークの研究では、テストされた95%の被験者の尿中からUVフィルターの成分が検出されたのです。
UVフィルターが体の中で何をするのかというと、それはプロゲステロンという女性ホルモンと同様の働きをしてしまうのです。偽の“プロゲステロン”として働くUVフィルターは、人の精子の機能に影響を及ぼします。
プロゲステロンは女性ホルモンですが、男性の体内でも作られます。精子の成熟や卵の受精に働きます。また、女性の卵に精子が向かう時の目印にもなりますし、卵にたどり着いた時にそのバリアを突き破る際にも働くことがわかっています。
このようにプロゲステロンは精子や受精に重要な働きをしているのですが、偽の“プロゲステロン”として働くUVフィルターは、精子の周囲のカルシウムイオン濃度を変化させることにより、精子の働きの邪魔をするというのです。
結果は、現時点では実験室の細胞実験の結果でしかありませんが、人の体でも起こりうる可能性が指摘されています。
ここ50年、世界的に妊娠率は低下していることが知られています。原因として、様々な化学物質、内分泌かく乱物質が指摘されていますが、日焼け止めもその可能性があるとは驚きです。
それでも適切な使用はおススメ

だからと言って、日焼け止めを塗らないで皮膚がんになってしまったら、元も子もありません。この研究者は日焼け止めの適切な使用を勧めていましたが、「できる限り、日が出ている時は外出を控え、外出しなければいけない時には帽子や服などでできる限り肌を隠すこと」とも語っていました。肌を焼いてもダメ、日焼け止めを塗ってもダメ、と言ったら何にもできなくて困ってしまいますよね。
様々な環境因子やライフスタイルが精子や卵子に影響を及ぼし、不妊症の原因になり得ることが指摘されています。例えば、たばこや肥満、過度のアルコールは不妊症の原因になり得ます。また、日々の生活で使用している様々なものに含まれている化学物質も、何らかの影響を及ぼすことが徐々にわかってきています。
「そんなこと言っていたら、何にもできなくなってしまうなあ」と思うのは私だけではないと思います。
精子を増やす日焼け止めでも研究してみようかしら――。
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子どもの頃に見た親父たちは、上半身裸で野良仕事をしていた。
筋肉質の皮膚から玉のような汗が光っていた。
日焼けを気にする人もなく、黄金に輝く麦を刈っていた。
子どもの数は、4人から10数人まで、今の少子化が嘘のようである。
これは、日焼け止めをしなかった所為だろうか。
薬漬けのカラダが、クスリによって蝕まれているとは、皮肉な現象と言えよう。
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