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小児救急電話、保護者の相談増加…12都道府県が回線不足、厚労省研究班

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小児救急電話、保護者の相談増加…12都道府県が回線不足、厚労省研究班

 夜間や休日に「♯(シャープ)8000」の共通番号でつながる小児救急電話相談。子どもの急な病気やけがで、すぐに受診するか迷う保護者からの相談件数は増え続けている。全都道府県で使える体制が整ったが、認知度の向上や回線不足など地域ごとに課題を抱える。

 「赤ちゃん用のせっけんなら、少しなめた程度では問題ないでしょう。口元をタオルでふき、こまめにおっぱいをあげてください」

 「熱があっても、水分がとれているなら、すぐの受診は必要ないでしょう」

 今月上旬の夜、神奈川県内の一室で、2人の相談員が、「♯8000」の電話を受けていた。

 2人は、小児科で長年勤務した経験がある看護師。判断に迷う時は、いったん電話を切って、担当の小児科医に内容を照会して、回答する。受話器をおくと、すぐに次の電話がくる。

 「♯8000」事業は、2004年度に始まった。当時は、かかりつけの小児科が閉まっている夜間や休日に、各地域の小児救急の医療機関に患者が押し寄せ、問題になっていた。

 解決策の一つとして国が打ち出したのが、この救急電話相談の事業だ。受診を判断するのはあくまで保護者だが、「すぐに病院へ」「昼間、かかりつけ医へ」などの助言を行う。不要不急の受診を抑え、必要な受診は、しっかり促す。

 川崎市の会社員女性(38)は、長男(7)の体に突然発疹が出た時や、次男(1)が部屋で転んで唇から出血したりした時に、利用した。「自己判断では、不安が残る時もあるので、助かりました」と話す。

 事業は、国の補助で都道府県が実施する。14年度の相談件数は計約63万件。厚生労働省救急・周産期医療等対策室は「少子化や核家族化が進み、育児経験が少なく、身近に相談できる人がいない親が増えている」と意義を説明する。

 厚労省研究班が昨年3月、和歌山県など6県で、相談者への聞き取り調査を行ったところ、「相談前は受診しようと思っていたが、助言を受けて、今すぐ受診しないことにした」という人が35%にのぼった。

 研究班は、電話相談により、不急の受診が避けられて、各自治体が負担せずに済んだ6県の乳幼児・小児の医療費は初診料だけで年間約5000万円になると推計。相談事業費(年間約3800万円)を上回る効果があると評価した。

 相談件数を子どもの人口で割って利用率を都道府県別に算出すると、10%から0.3%まで幅があり、認知度にバラツキがあった。

 回線あたりの相談件数から稼働率も出した。兵庫はじめ12都道府県が、「回線の増加が必要」と分析された。研究代表者で慈恵医大小児外科講師の吉沢穣治さんは、「各都道府県の課題を整理し、誰もが必要な時に利用できる体制を整備するとともに、相談員の質を確保する研修の充実も大切だ」と話している。

3割は不急の相談

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厚労省が作成したアンパンマンを使ったポスター

 「♯8000」は、母子健康手帳などでも紹介しているが、認知度はまだ十分ではない。内閣府の2014年の調査では、電話相談を知っていると答えた割合は、就学前の子どもを持つ女性の58%、男性の17%だった。

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塩崎厚労大臣を表敬訪問、協力を誓うアンパンマン(今年4月、厚生労働省で)

 厚生労働省は認知度向上の切り札として、今年度から、「♯8000」事業のキャラクターにアンパンマンを採用した。先月、啓発ポスター5万枚を作成し、各都道府県に配布した。

 手つかずの課題もある。「#8000」は、救急の医療相談のために設置されているが、相談の3割は、主に育児に関するもの。「なかなか寝ない」「ご飯を食べない」「歯が生えてこない」といった悩みの対応は、30分以上に及ぶことも多い。

 夜間や休日の育児相談の受け皿が乏しい事情もあるが、緊急の判断を求める相談が受けられない恐れもあり、早急な対策が求められている。

 (中島久美子)

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