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医療部発

医療・健康・介護のコラム

「その程度では障害年金はもらえないよ」と言われても(3)覆る決定、珍しくない

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 相談員、医師に続き、最後は国・日本年金機構です。患者の障害年金の請求に対し、「あなたの病気の程度では、障害年金はもらえません」と不支給の決定がなされることがあります。これにはさすがに、ダメか、と思うでしょう。

 「医療ルネサンス 患者学・病気と年金」の3回目では、いったん「ダメ」の決定書を受け取ってから、国に不服申し立てをして、ほどなく「支給します」という通知を受け取ったという多発性硬化症の男性の話を紹介しました。

 こうした決定が覆るケースは珍しくなく、不服申し立て後に患者側の訴えを認めるケースは、国の社会保険審査会が2014年度に関係した分だけで、推計300件起こっていました。審査をせずに誤認がわかった段階で「変えるから不服申し立てを取り下げてほしい」ということも国・地方の双方でよく行われています。取り下げは十分なデータがないので件数は不明です。

 社会保険労務士からは、障害年金の担当者に電話で間違いと思われる点を指摘しただけで、決定が変わったという話もあったと聞きました。

 とにかく「年金を支給しない」という決定が患者側の訴えで覆るケースは相当の数になるように思います。国・年金機構の決定も 鵜呑(うの) みにせず、障害の程度が国の要件に当てはまると思うならば、訴えることが必要です。自信がないなら、詳しい社労士に相談するとよいと思います。

 2015年1月に厚生労働省は「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査」という資料を発表しました。ネットでみることができます。それによると2010~2012年度に障害基礎年金の請求を受けて支給か不支給かを決めた件数のうち、大分県で「支給しない」と決めた割合は24%(1058件のうち258件が不支給)。一方、山形県は不支給の割合は6%(944件のうち60件が不支給)と、都道府県間で4倍差がありました。ある県で不支給になったケースが、他の県にいくと障害年金がもらえるという不公平な状況になっていた可能性があります。

 さすがにこの地域差はまずいと国も考えたのか都道府県ごとに行われていた審査を中央の1つの組織で行うことにしました。しかし審査を行う認定医によって、あるケースは認定されるのに、同じような別のケースは「ダメ」ということがあるといわれています。

 障害年金に関しては、こうした問題を検証するのに公表データが非常に少ないと思います。

 近年、障害年金の審査が厳しくなっているという声をよく聞きます。確かめるために国に障害年金の請求件数と受給が決まった件数を問い合わせました。新規受給を認める割合が年々低くなっていれば、厳しくなっているのが分かると思ったからです。

 驚いたことに、国では全国から何件の請求が寄せられているかデータを持っていませんでした。先に紹介した「地域差に関する調査」は10年度から3年分、基礎年金に限り集計したデータで、厚生年金はデータなしです。病気ごとの細かいデータなどは全くありません。国から年金機構に聞いてもらいましたが、結果は同じ。「請求件数の経過が分からないと将来予測ができないのではないですか」との質問に、国の障害年金の担当者は「受給件数が分かればいい」と答えました。

 このような基礎的なデータも持たない組織に、障害年金の受給が必要な人に今後もお金を届けられるか不安です。ルールに基づき、障害の程度に応じた障害年金の受給が認められているかどうか、外部から全体的なデータで分かるように国・年金機構は体制を整えたほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。

(終わり)

watanabe_100

渡辺理雄

2008年12月から医療部。脳卒中、リハビリテーション医療などを取材している。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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1件 のコメント

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私も障害年金は貰えなかった。

セイテン

私は腎不全で一度貰いましたが、移植したので停止。続けて心筋梗塞、ステント留置、ペースメーカーと治療しましたが、約30年の治療経過が複数の心臓治療...

私は腎不全で一度貰いましたが、移植したので停止。続けて心筋梗塞、ステント留置、ペースメーカーと治療しましたが、約30年の治療経過が複数の心臓治療のため始期不明で脚下。医師の理解力がないこともあり社労士の判断も覆えらないて言われ諦めました。

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