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食事日記のススメ!何を食べると健康を保てる?(下)食事方法は自分の「癖」が出る

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(写真1)手作りいちごコンポートとケフィアヨーグルト、ナッツ、ドライフルーツが朝食の定番

(写真1)手作りいちごコンポートとケフィアヨーグルト、ナッツ、ドライフルーツが朝食の定番

 前回のカフェでは、食生活をセルフモニタリングすることについてのお話でした。今回は、「正しい食事の取り方を、一度は学習する必要がある!」をテーマに進めたいと思います。わたしは現在、とても充実した食習慣を持っています。朝食では、手作りのケフィアヨーグルトをほぼ毎日食べています。フルーツソースなどもよく作りますが、最近いちごのコンポートをつくり、ヨーグルトのトッピングにしています。その他に欠かさないのは、ドライフルーツやナッツです。この食習慣が自分のお (なか) にとても合うようで、アスリート時代から続けています(写真1)。

 皆さんは、食事に関するレクチャーを受けたことは、ありますか? わたしが覚えている人生最初の食生活に関するレクチャーは、たしか中学校の家庭科の授業だったと思います。「バランスの良い食事を楽しく取る」といったザックリとした記憶が残っているのみです。食事は一人で食べるより、家族や友人で食べることを推奨していたこともなんとなく記憶に残っています。この教示はおそらく、複数の人数で食事をすることで「食材の品目が増える」といった狙いがあったのだと思います。

 その後、アスリート生活を歩む中で、色々な方からスポーツと栄養、健康などの情報を聞くことがありました。また、出身の中京大学は体育学部だったことで、スポーツ栄養学の講義も履修しました。しかし、食生活の具体的内容、つまり、正しい食事の事例まではなかなか 辿(たど) り着きませんでした。アスリートとして摂取すべき栄養や食事の内容について、あまりよく分かっていませんでした。

 ようやく「我流ではいけないな」と思えてきたのが、社会人アスリートになってからです。本当に変わらないといけないと感じられたのは、2003年3月に子宮内膜ポリープが明らかになった際、病の現実を突き付けられ、身体のことを本気で考えるようになったことがきっかけでした。それまでは、「のらりくらり」の状態が続きます。

隠したい食習慣、己を知る怖さ…でも本気で向き合おう!

 スポーツ管理栄養士の先生から本格的なレクチャーを受ける日が訪れたのは、2002年ごろ、04年アテネオリンピック出場の2年前だと記憶しています。日本代表で国際試合に参加する際、内科、整形外科、筋肉や骨、体脂肪などを測る体組成やアライメント(姿勢などに影響が出る骨や軟骨の位置)のチェックなど、実に様々な検診を受けます。大学1年生の健康診断で極度の貧血が明らかになったことは、前回のコラムで述べましたが、それから数年 () つ間にも、何度か代表選手が受ける検診を受け、採血の機会がありました。そして、その都度、必ず貧血項目だけに指摘が入っていました。2002年の検診で内科のドクターから、「スポーツ管理栄養士の先生にアドバイスを頂いてはどうですか?」と勧められ、はじめて栄養レクチャーをいただく運びとなりました。アスリート時代、トレーニングの拠点は母校の中京大学(愛知県豊田市)でしたので、東京にいらっしゃる先生とメールなどでやり取りしました。まずは、所定の用紙に自身が日ごろ食べている食事の内容を1週間程度書き出し、先生にお送りし、その内容を分析していただきました。

 アスリートが自分で栄養管理をするのは、とても大変なことです。栄養士さんのような細かな計算は当然できません。アスリートとしての生活も忙しく、あまり面倒なことは出来ないと思っていました。更に、貧血を抱えていることで、常に疲労感があり、何事にも 億劫(おっくう) になることが多くありました。しかし、日頃の食生活を専門家にみてもらうことで、きっと新しい視点が生まれるという期待感が高まりました。とはいうものの、専門家の方に見ていただくとなると、相当ドキドキしました……。恥ずかしいというか、なんというか。それでも、食生活の見直しはいつか取り組まないといけないという自覚があったため、ありのままの食生活を (つづ) り、先生に郵送しました。

 返ってきた分析の内容をみて、自分の「食生活の癖」を自覚します。一定期間の食生活でチョイスしていた食品にかなり偏りがみられ、同じような食材を用いたワンパターンな状況が露呈しました。印象的な内容として、「緑黄色野菜を過剰摂取」とあり、他の食材とのバランスの問題を指摘されました。当時を思い出して笑ってしまうことがありますが、にんじんとブロッコリーを1週間繰り返し使いまわして食べていました。「めんどうくさがりもいいところ、アスリートなのに!」と今は「健康な身体」であるので、正しく判断ができるように思えます。提出した食事日誌には、何を何グラム食べていたかも計って報告することになっていましたので、摂取したグラム数を先生がご覧になり、「食べ過ぎ」との指摘でした。「食事はバランスの良い配分で取るように」と、貧血改善のための献立やレシピも何点か添えてお送りいただきました。

 わたしは料理もお菓子作りも元々大好きですが、趣味の範囲でした。そのため、十分な内容を継続することができていませんでしたので、そこから少し反省をします。しかしながら、多少の工夫や食事内容をノートに記載をするものの、2003年に子宮内膜ポリープが見つかるまではなかなかうまく継続できませんでした。とはいえ、この食事チェックも大きなきっかけとなり、前回のカフェで綴った「食事日記」の推進につながります。一度、専門家に見ていただくこと、指導を受けることで、知識提供があり、必ず何かを変えようと思うきっかけになると感じます。

食生活の変化にはきっかけがある

 少し昔を振り返りたいと思います。わたしが高校生の時、実は一時偏食に陥った経験があります。通っていた高校は、自宅から学校まで、片道約1時間30~40分程度かかりました。これを毎日、3年間繰り返しました。朝練習が7時30分から始まるので、それに間に合うように家を出る。6時前には玄関を飛び出し、近所のバス停に走っていきました。学校から帰り、寝るのは午後11時~午前0時ごろ。部活動をして疲れていることもあり、出かける準備がぎりぎり間に合う時間まで寝るようにして、起床は5時15分だったと思います。

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murofushi_yuka_200

室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

公式ウェブサイトはこちら

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