ボクシング元世界チャンピオン 竹原慎二さん
一病息災
[ボクシング元世界チャンピオン 竹原慎二さん]膀胱がん(2)世界奪取に「やればできる」
同じ広島県出身の会長のいるジムに入った。朝6時頃に起き、午後3時まで内装会社の職人見習いとして働き、同5時からジムで2時間練習。掃除をして、すきま風の入るアパートに帰る毎日だった。昼間に肉体労働した後だから、練習はきつかった。
ジムで真剣に練習している人たちを見て、父がボクシングを勧めた意味がわかってきた。「同じ年頃の子も頑張っている。負けるものかと思いました」。スタミナ切れの原因ともなるたばこをやめた。もう、けんかはしないと誓った。
1メートル86、70キロ余と日本人では大柄だったので、17階級中5番目に重いミドル級を選んだ。連戦連勝で全日本、東洋太平洋チャンピオンになった。
「どんな強い相手にも、正々堂々と闘うだけ。勝つたびに自信がつき、ファンが増えるのも励みになり、苦しい練習もできた」
上京して8年目の1995年、世界タイトルマッチに挑んだ。アルゼンチン人のチャンピオンは4回防衛しており、一度もダウン経験のない強敵だった。
日本人がこの階級で勝てるとは思われていなかった。世界戦なのに生中継はなく、深夜の放送になった。この悔しさもバネに、第3ラウンドにダウンを奪い、12回3対0で判定勝ち。「やればできる」とつぶやいた。
だが、防衛戦を控え、目に致命的な異変が起きた。
◇
ボクシング元世界チャンピオン 竹原 慎二 さん(44)
【関連記事】