ボンジュール!パリからの健康便り
コラム
病気や危険と隣り合わせ…それでも気高く、したたかに生きる娼婦たち
最上階のアパートの窓を開けると、それは、私がずっと心に描いていたパリの光景だった。暖炉の小さな煙突がいくつも突き出た屋根が、まるで山々の峰が連なるように幾重にも重なって、どこまでも続いていた。気持ちの良い風が頬をなぜた。
アパートの入り口には
驚いたことに、娼婦たちはとても美しいフランス語を話す。まるで19世紀の小説に出てくるような古典的な話し方をする。毎日顔を合わせ、あいさつを交わすうちに、何人かの娼婦と顔見知りになった。大学の帰り道、彼女らのたまり場となっているカフェで手招きされてご
私のアパートのキッチンの窓からは、ちょうどヒッチコックの映画「裏窓」のように、小さな中庭をはさんで向かい側の建物がよく見えた。真向かいの窓はいつも黒いカーテンが閉められていて、開いたことがなかった。
ある日、キッチンで夕飯の支度をしているとき、窓がパーッと開いて顔見知りの若い娼婦が顔を出した。屈託もなく「ボンジュール!」と手を振る。私も「ボンジュール」と答える。「今夜のお夕飯は何になさいますの?」「ラタトウイユです」「あら、私の得意料理ですわ」。こんな会話ができるほど、その距離は近い。
その窓の右手のエレベーターのガラス張りの廊下からは、娼婦たちが客を連れて上がってくるのがみえる。木曜日のこの時間はいつも、ゴージャスで
私の友人たちは当初、怖がってなかなか遊びに来てくれなかった。でも私の誕生日会をしてくれることになり、いよいよこのサン・ドニの娼婦通りへ友人たちがやってくることになった。娼婦たちには「今日は私の誕生日で、友人たちがパーティーに来るので通してあげてください」と話しておいた。私の住むアパートにはオフィスなどはないので、アパートのドアの前に立つ娼婦たちは、住人以外は中に入れようとしないからだ。
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古くからある危険な仕事
八重波
場所がパリなだけに、映画を観ているような気持ちで読ませてもらいました。 以前、トルコを旅した折に、エフェソスという大きな古代遺跡に行きましたが、...
場所がパリなだけに、映画を観ているような気持ちで読ませてもらいました。
以前、トルコを旅した折に、エフェソスという大きな古代遺跡に行きましたが、娼館への道しるべがあり、また、それがしっかり残っていることに、驚いたことを思い出しました。
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