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被災後に変調、「震災関連死」に注意…ストレス避け適度に運動

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被災後に変調、「震災関連死」に注意…ストレス避け適度に運動

 49人の死者を出した熊本地震から1か月が過ぎた。

 現在も避難生活を送る人は1万人以上。被災後に体調を崩して亡くなる「震災関連死」の疑いは14日現在、19人に上る。避難生活で命を落とさないようにするには何が必要なのか。

 被災のショックや避難生活の疲労が蓄積して体調を崩したり、持病が悪化したりして死亡する場合を震災関連死と呼ぶ。熊本県が関連死の疑いがあると発表した19人のうち大半は65歳以上の高齢者だった。

 同県医師会長の福田 しげる さん(70)は「震度7が2度起きた今回の地震は、住民に強いストレスを与えた。地震前まで体調が悪くなかった人でも、心身に不調を来している」と指摘する。

 これまでに判明した死因で目立つのが、脚の静脈に血栓(血の塊)ができ、肺の血管が詰まり、呼吸が苦しくなるエコノミークラス症候群だ。地震発生から5日目に車中泊していた51歳女性が死亡。入院治療が必要な患者は14日までに50人に達している。

 同症候群は2004年の新潟県中越地震でも問題になった。新潟大講師(心臓血管外科)の 榛沢はんざわ 和彦さんは「一度発症すると、何年も発症しやすい状態が続く」と注意を呼びかける。

 1995年の阪神大震災では922人が関連死と認定された。神戸市の663人の死因は肺炎やぜんそくなどの呼吸器系が38%、心臓病や脳卒中などの循環器系が35%の順で多かった。

 肺炎は高齢者に多い。また心臓病や脳卒中は心身のストレスが関係しているとみられる。高血圧や糖尿病などの持病悪化は発症の引き金となるため、薬の服用を忘れず、体を動かすなどの注意が必要だ。

 熊本の関連死を防ぐにはこれからが正念場だ。東日本大震災では、2012年3月時点の関連死のうち1263人を復興庁が調査しているが、約半数は地震から1か月経過した後だった。また死因で最も多かったのは「避難生活での肉体・精神的疲労」だった。

 被災地に看護師を派遣している「キャンナス」代表の菅原由美さんは「避難生活に疲れ切り、介護が必要となる人が今後も増えることが予想される。避難環境を改善し、精神面でも被災者を支えるために、看護、介護などの人手が一層必要になる」と話す。

被災者の環境整える…神戸協同病院・上田耕蔵院長

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 過去の震災関連死を調査している神戸協同病院(神戸市長田区)院長の上田耕蔵さん(65)に対策を聞いた。

 災害発生から2週間程度は、体調が悪い人、病気悪化の危険性が高い人を、医療機関につながりやすくすることが何より重要。場合によっては環境の良い場所への移動も必要になる。

 その後は、避難場所を改善するとともに、自宅に戻った住民を保健師などが訪問し支援が必要かどうかを確認する。ここでも医療や介護サービスに結びつけることが欠かせない。

 今後、最も注意すべき病気は、心臓病や脳卒中などの循環器疾患だ。大きな要因のストレスを減らすには、生活環境を整えるのが効果的。仮設住宅の早期整備やみなし仮設の活用が必要になる。

 しかし、被災者全員が仮設住宅などに移れるようになるまでには時間がかかる。体を動かさないで弱っていく「生活不活発病」や、夏に向けて増える食中毒や熱中症にも目配りしながら、様々な団体、専門家が協力して支援する体制が望まれる。

 (石塚人生)

 (2016年5月15日 読売新聞朝刊掲載)

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