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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

がんに効く?食事療法の嘘(上)生活習慣を見直す…その効果は?

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がん予防は食事をバランスよくとること

 国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「日本人のためのがん予防法」には、がんに対する食事に関しては、

 偏らずバランスよくとる。
 * 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
 * 野菜や果物不足にならない。
 * 飲食物を熱い状態でとらない。
 と書かれています(注3)。

 ここでも、特定の食事やサプリメントは決して推奨していません。

 偏った食事療法、サプリメント摂取などは、がん予防どころか、がんを増加させることにもなりますので、注意が必要と思います。

がん体験者の食事について

 がん体験者、がんサバイバーの方が、どのような食事を取ればよいのか?ということに関しては、国立がん研究センターがん情報サービスで、米国対がん協会(American Cancer Society)が2012年に公表した、「がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン」第4版を引用して解説しています。

 こちらでも、特定の食事療法やサプリメントを推奨しているわけではなく、「野菜、果物、全粒穀物を多く含む食事パターンにしましょう」と書いてあるのみです。

 医学的な研究としては、早期乳がん患者を対象として、低脂肪食を摂る食事療法群と、一般的な食事を取る群との大規模なランダム化比較試験が行われました。一つの研究(2437人を対象)では、低脂肪食群が、乳がんの再発を24%低下させるという結果になりました(注4)が、もう一つの研究(3088人を対象)では、低脂肪食群と、一般食群とで再発率には差がありませんでした(注5)。

 このように、医学的研究でも、特定の食事療法が、がん体験者のその後の経過を改善するという確固たるエビデンス(科学的根拠)が示されていません。

 がんを予防するために、一般の方、また、がん体験者であったとしても、特定の食事療法やサプリメントががん予防につながるという医学的根拠はありません。

 がんを過度に恐れるあまり、自分で何とかしようと、偏った食事療法やサプリメントに頼ろうとする人は後を絶ちません。

 そのような食事療法は、決して楽なものでなく、生活の質まで落としてしまうものです。

 間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。

 次回は、食事療法の治療的効果についてお話しします。

参考

1. Harvard Report on Cancer Prevention. Volume 1: Causes of human cancer. Cancer Causes Control. 1996;7 Suppl 1:S3-59.

2. Fortmann SP, Burda BU, Senger CA, Lin JS, Whitlock EP. Vitamin and mineral supplements in the primary prevention of cardiovascular disease and cancer: An updated systematic evidence review for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2013;159(12):824-34.

3. 国立がん研究センターがん情報サービス. 日本人のためのがん予防法. http://ganjoho.jp/public/index.html.

4. Chlebowski RT, Blackburn GL, Thomson CA, Nixon DW, Shapiro A, Hoy MK, et al. Dietary fat reduction and breast cancer outcome: interim efficacy results from the Women’s Intervention Nutrition Study. J Natl Cancer Inst. 2006;98(24):1767-76.

5. Pierce JP, Natarajan L, Caan BJ, Parker BA, Greenberg ER, Flatt SW, et al. Influence of a diet very high in vegetables, fruit, and fiber and low in fat on prognosis following treatment for breast cancer: the Women’s Healthy Eating and Living (WHEL) randomized trial. JAMA. 2007;298(3):289-98.

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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2件 のコメント

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正しい情報はどこで手にはいりますか?

太郎

「間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。」 そのとおりだと思いますが、患者やその家族や患者予備...

「間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。」

そのとおりだと思いますが、患者やその家族や患者予備軍は正しい情報がどれなのか、解らないで困っているのではないでしょうか。本屋さんにはものすごい量の情報が溢れており、いずれも医学者として立派な(と思われる)方々が自信満々に書いているので、一般人は信じてしまいます。

風邪を引いて熱があるとき、熱い風呂に入るべきか、ぬるい風呂に入るべきか、すら、はっきりしません。解熱剤を飲むべきかどうか、はっきり分かりません。飲む方にも一理あり、飲まない方にも一理あります。正しい情報は何なんでしょう?というのと同じで、一般人にはわからないのです。正しい情報を知りたくて、こうした記事を読んでいるのです。

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副作用対策の食事療法

すずめの父

すい臓がんの抗がん剤治療を続けています。私は,食事療法でがんと直接向き合うつもりはありません。抗がん剤の副作用を和らげる目的で,がん予防の食事療...

すい臓がんの抗がん剤治療を続けています。私は,食事療法でがんと直接向き合うつもりはありません。抗がん剤の副作用を和らげる目的で,がん予防の食事療法を続けています。野菜,全粒粉,低脂肪の肉,魚,減塩などです。厳格ではなく,ちょくちょく脇道に逸れます。
6年ほどの経験で,がん予防の食事療法は免疫力を高めているように感じます。口内炎が悪化することなく治る,風邪が治るのが分かる・・などの効果がありました。抗がん剤治療の副作用を軽減する効果もあると考えています。嘔吐感を防ぐ,下痢もひどくない,白血球濃度が高い,・・・比較的順調なので効果があるのかなと思います。
副作用対策の観点で,先生の見解をお教えください。私は,消化器が受け付ける範囲で,食事療法を続けようと考えています。

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