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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

コラム

がんに効く?食事療法の嘘(上)生活習慣を見直す…その効果は?

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ベータカロチン摂取はがんを増加させる!

 ビタミンやサプリメントでがんを予防できるのか?ということに、世界の研究者は古くから関心を抱いてきました。

 実際に、ビタミンやサプリメントのがん予防効果を検証するために、世界では多くの研究がなされました。

 ある治療法が本当に効果があるのかを検証するのには、治療群と治療をしないコントロール群とを無作為(ランダム)に振り分けて、その長期的効果を検証する「ランダム化比較試験」が必要です。このランダム化比較試験が治療介入を伴う研究法では、最も信頼性が高い研究となります。

 がん予防の研究でも、特定のビタミンを飲んでもらう群と、飲まないコントロール群(プラセボ群)とにランダムに振り分けて、がんの発生率を長期的に検証した研究が多く行われました。

 その研究結果をまとめたもの(システマティックレビューと言います)を、米国の政府機関の米国予防医学専門委員会(USPSTF)が2013年に報告しています(注2)。

 その結果は、2万7,658人を対象とした2つの研究では、マルチビタミン摂取により、がんの発生をわずかに予防できたというものでしたが、32万4,653人を対象とした24の研究結果は、どのビタミン、サプリメント摂取(ビタミンA、C、D、葉酸、セレン、カルシウム)をしても、がんの発生は予防できなかったという結果でした。

 このうち、ベータカロチンと、ビタミンEを使った予防研究は研究結果が一定して否定的でした。

 そして、ベータカロチンを使った11万2,820人を対象とした6つのランダム化比較研究をまとめた結果では、何と、ベータカロチンを予防的に飲んでもらった群では、がんを予防するどころか、喫煙者に対して、肺がんの発生が増えてしまいました。

 これらの研究で使われたベータカロチンの投与量は、1日30mgと大量のベータカロチンが使われました。ベータカロチン30mgというと、トマト1個にベータカロチンが0.8mg含まれると言われていますので、トマト37個分に相当します。

 ベータカロチンは、緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA前駆体です。日本でも健康食品として一時期はやりました。

 ベータカロチンを過剰摂取すると、なぜ、がんが増えてしまったのかは、明らかではありませんが、偏ったものを過剰摂取することは、正常細胞を痛めつけることにもなります。細胞のがん化の機序はまず、正常細胞に傷がつくこと、すなわち、遺伝子に異常が起こることから始まりますので、ベータカロチンの過剰摂取が何らかの仕組みで遺伝子異常を引き起こしたのかもしれません。

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katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

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2件 のコメント

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正しい情報はどこで手にはいりますか?

太郎

「間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。」 そのとおりだと思いますが、患者やその家族や患者予備...

「間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。」

そのとおりだと思いますが、患者やその家族や患者予備軍は正しい情報がどれなのか、解らないで困っているのではないでしょうか。本屋さんにはものすごい量の情報が溢れており、いずれも医学者として立派な(と思われる)方々が自信満々に書いているので、一般人は信じてしまいます。

風邪を引いて熱があるとき、熱い風呂に入るべきか、ぬるい風呂に入るべきか、すら、はっきりしません。解熱剤を飲むべきかどうか、はっきり分かりません。飲む方にも一理あり、飲まない方にも一理あります。正しい情報は何なんでしょう?というのと同じで、一般人にはわからないのです。正しい情報を知りたくて、こうした記事を読んでいるのです。

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副作用対策の食事療法

すずめの父

すい臓がんの抗がん剤治療を続けています。私は,食事療法でがんと直接向き合うつもりはありません。抗がん剤の副作用を和らげる目的で,がん予防の食事療...

すい臓がんの抗がん剤治療を続けています。私は,食事療法でがんと直接向き合うつもりはありません。抗がん剤の副作用を和らげる目的で,がん予防の食事療法を続けています。野菜,全粒粉,低脂肪の肉,魚,減塩などです。厳格ではなく,ちょくちょく脇道に逸れます。
6年ほどの経験で,がん予防の食事療法は免疫力を高めているように感じます。口内炎が悪化することなく治る,風邪が治るのが分かる・・などの効果がありました。抗がん剤治療の副作用を軽減する効果もあると考えています。嘔吐感を防ぐ,下痢もひどくない,白血球濃度が高い,・・・比較的順調なので効果があるのかなと思います。
副作用対策の観点で,先生の見解をお教えください。私は,消化器が受け付ける範囲で,食事療法を続けようと考えています。

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