排尿後の痛みが治らない 原因は?
2015年11月に血尿、頻尿、排尿痛で
急性膀胱炎から慢性膀胱炎に移行した可能性も
沢田勇吾・労働者健康安全機構福島労災病院泌尿器科部長渡辺毅・労働者健康安全機構福島労災病院院長(福島県いわき市)
一般に排尿痛を伴う泌尿器疾患としては、排尿の始めに痛む時は、性病(淋菌、クラミジア)を含む細菌性尿道炎、排尿が終わる頃に痛む時は急性膀胱炎、尿管結石、腎盂腎炎、排尿中に痛むときは慢性膀胱炎、尿道狭窄症などが考えられます。
お尋ねの方の場合、排尿後の痛みで、昨年11月には頻尿、血尿などの尿路系の症状(随伴症状)を伴ったので、急性膀胱炎が最も考えられます。4日間の抗生物質で細菌尿が消失した後に排尿痛・違和感が残存したのは、細菌性膀胱炎が完治していなかった可能性があります。2か月後に急性症状が再発した時にも、充分な期間抗菌薬治療(クラビット500mg?1日1回10日間)によって細菌尿が消失したにも拘わらず、排尿痛が消失しないのは慢性膀胱炎に移行した可能性もあります。一般に、慢性膀胱炎には膀胱結石、尿路結石、糖尿病、腫瘍などの基礎疾患があることが多いとされます。この方の場合は該当しないようですが、調べてみる必要はあります。
また、非感染性膀胱炎である間質性膀胱炎が基礎にある可能性もあると思います。この病気は、40歳以降の女性に多い病気で、膀胱内に尿が充満すると下腹部から陰部に痛みを生じ、尿意切迫(尿をしたくなる感じ)や残尿感(尿が残っている感じ)を繰り返し、時として我慢ならないほど強くなり、仕事や睡眠に影響を及ぼすこともあります。症状としては合わないところがありますが、一応考えてみる必要はありそうです。この疾患は、コーヒー、紅茶、アルコール、たばこなどの刺激物は症状を悪化させるとされますが、思い当たりますか?この場合、エコー(超音波検査)のみでは診断は困難で、膀胱鏡を含む精密検査が必要と思われます。いずれにしても、排尿障害を得意とする泌尿器専門医への受診をお勧めします。
さらに女性の場合、時に腟・子宮の炎症(外陰腟炎とよばれる腟または腟口周辺部の炎症ないし感染症、または子宮頸管炎など)など婦人科疾患があると排尿時に灼熱感を覚えることがあります。通常、下り物(帯下)による下着の汚れを自覚することも多いのですが、軽微で気づかない場合もあります。原因となる感染性微生物には、性行為以外で感染する細菌(主に大腸菌)と、性行為で感染する微生物(淋病、クラミジア感染症、トリコモナス症を引き起こす原虫)があります。これらのほとんどはクラビットが効果的ですが、トリコモナス症であれば、一般の抗生物質は有効ではありません
また、非感染性炎症である腟前庭炎(痛み刺激に対する外陰部の過敏性)や炎症性結合組織疾患(反応性関節炎、ベーチェット症候群)というまれな全身疾患の部分的な症候のこともあります。受診した泌尿器専門医と相談して、必要と考えられれば、婦人科に紹介してもらってください。(日本専門医機構協力)