ボンジュール!パリからの健康便り
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ルイ14世の痔の手術で手柄、外科医の地位向上
パリ大学はヨーロッパ最古の大学のひとつで、その起源は12世紀までさかのぼる。今回は、カルチェラタンの一角、メトロ・オデオンに近い医学校通りの大学構内にある医学史博物館=写真=へ行ってきた。
医学史博物館の原型はルイ15世の発案で、その命によりルイ16世が落成式を執り行った。1954年に現在の形の医学史博物館となる。1990年代の火災で一時閉館となっていたが、ギリシャ・エジプトから近代のものまで大変興味深い展示がされている。
ウインドーのなかの医療器具は、見た目では使用方法がわからないものがある。受付にいた学芸員の方が親切に説明してくださった。細長い矢の形をしたものは、15世紀に発明されたもので、突き刺さった矢を抜くための反対回りのビスが先端についているものであった。それが18世紀になると、銃弾を引き抜くものに変わっている。
「ロワイヤルの曲線」と呼ばれる細い曲線を描いた医療器具は、1686年に宮廷外科医のシャルル・フランソワ=フェリックス医師によってルイ14世の 痔瘻 の手術のために作られたものである。手術は大成功し、ルイ14世は大変喜び、おかげで当事は、内科医に比べて地位の低かった外科医の地位が向上した。しかし、その当時は麻酔などなく、どれだけ痛みに耐えたかのかははかりしれない。麻酔なども、王妃の出産時の激痛から麻酔の必要性が生まれたという。
こうしてフランスの医療は、国王や王族、また戦争によって負傷した戦士の治療のために開発され発展されてきたものが多いという。古い麻酔の器具なども展示されていたが、形は今のものととても良く似ていて形状としてはあまり変化がないようだ。当時の医師たちは王の病気やけがを治療することで名声を得て、王家から支援を受け、研究や開発を行ってきた。
その他にも、静電気を起こさせる機械など、不思議なものがたくさんあった。はじめはサロンなどで女性を座らせ、静電気を起こさせて髪の毛が逆立つのを見て喜んでいたものが、そのうち電気療法への研究へとつながっていったという。
意外と知られていないフランスの医療の歴史は古く、パリで一番古い病院は、ノートルダム寺院の 側 にある12世紀に建てられたホテルデューである。ここは、流行したペストに感染した患者を多く収容していた。ホテルデューとは神の家とも訳せるが、あまりにも多くの死者をだしたことから「死の家」と呼ばれていた。
余談であるが、ルイ16世が192センチの長身であったとは知らなかった。ルーブル美術館などにある肖像画をみると、背の低い小太りのイメージが強い。しかし、彼はまれにみる長身で、その妻マリー・アントワネットは、その遺品のコルセットから、ウエストが細く、スタイルの良い女性だったようだ。
■今週の一句
パリの庭 母思ひ出す 藤の花
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