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ろう者の牧師 郡美矢さん…手話の説法、表情豊か

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教会に笑顔の輪

ろう者の牧師 郡美矢さん…手話の説法、表情豊か

「手話というもう一つの文化を持った存在と受け止めて」と話す郡さん=橘薫撮影

 国際手話通訳者の 郡美矢こおりみや さん(46)は日本では数少ないろう者の牧師の一人だ。表情豊かな手話とユーモアあふれる人柄で、教会に集う人たちに笑顔の輪を広げてきた。聞こえないことを「天から与えられた個性」と言う郡さんが、手話に込める思いとは。

 日曜の朝、広島市西区の三滝グリーンチャペルに20人のろう者が集った。手話礼拝のテーマは新約聖書の「マタイによる福音書」の一節。難解な文章を、喜怒哀楽の表情を交えながら、生き生きとした手話でひもといていく。静寂の空間に時折、笑いの声が漏れた。

 「聴者が声でつける抑揚を、私は顔の表情でつけます。聖書の文章を手話に置き換え、深く、分かりやすく伝えるよう心がけています」と郡さん。一言一句を訳すのではなく、時に端的に、時に形態模写も織り交ぜて――。躍動的で、その場をぱっと照らす力がある。

 両親ともにろう者で、手話を「第一言語」とする「デフ・ファミリー」で育った。手話のおしゃべりが絶えない家庭。そんな環境で「目で盗むことや物まねが得意になった」と笑う。

 聞こえないことを障害と思ったことはない。11歳から普通学校で学び、高校は有数の進学校に進んだ。「1番になりたい」と、柔道部に入り、全国大会にも出場。卒業後は、歯科技工士の資格を取った。

 当時、ろう者の進路は今よりもずっと限られていたが、22歳の時、「外国で働きたい」とカナダへ渡った。不慣れな英語、日本とは異なる手話に戸惑ったが、現地のろう者らと積極的に語らうことで乗り越えた。

 「面白く分かりやすい」と好評の郡さんの説法は、舞台俳優の芝居を見ているようだ。その手法は、留学先の米国で磨かれた。ろう者のキリスト教徒で作る劇団の一員として、いろいろな国で演じた。行く先々で爆笑を取り、「笑いは人の心をつなぐんだ」と実感したという。

 礼拝に通う60歳代の女性は、「美矢さんの明るさは、私たちを元気づけてくれる。仲間内でのおしゃべりも増えました」と話す。

 郡さんは昨年末、メッセージ集「あなたは見えないところで愛されている」(KADOKAWA)を出版。ストレスで疲れ果てた人、癒やしを求める人……。これまでに出会った人たちを思い、書きつづった。

 傾聴する相手には、ろう者も聴者もいる。「悪いことばかり取り出すのがうまい人にならないで」「困難に見える山も、登る道はいくつかある」。人生を思い悩む人たちを、少しでも笑顔にと心がけている。

 ろう者としての誇りを自覚する中で見いだした言葉も記した。「前例は自分で作ればいい」「ありのままの自分に自信を持つ」。当事者の思いを少しでも知って、との願いを込めた。

 ろう者と聴者、日本と海外――。垣根なく行き来して感じるのは、日本では、ろう者に対する誤解がまだ多いということ。もし道を尋ねた相手がろう者なら、「関わることを途中でやめず、ふれ合ってほしい」と言う。「聞こえないこと以外は何でもできる。手話というもう一つの文化を持った存在だと受け止めてもらえたら」

 

  メモ  郡さんは1970年徳島県生まれ。カナダで歯科技工士として勤務後、米国に留学し、神学とろう教育を専攻。牧師としても働いた。2006年帰国。兵庫や広島のキリスト教会で牧師を務める。日米、韓国などの手話を操る。(佐々木栄)

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