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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

突然視力を失うレーベル病、悲劇を乗り越えるために…

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 レーベル病は、正式にはレーベル遺伝性視神経症という名称の疾患で、比較的急激に両目の視神経(眼球に入った情報を脳に送る神経)に病変が起きて、著しい視力低下を起こします。

 8歳くらいから40歳代までに出現する確率が高く、進学、就職、昇進など社会における活動が花盛りの時期に、突然視力を失うという悲劇に見舞われます。しかも有効な治療法は確立していないので、それを診断する眼科医である私も、人生におけるそうした (つら) いドラマを、何度も目の当たりにしてきたのでした。

 今から約7年前、私が診察していた何人かのレーベル病患者さんに声をかけ、「患者の会を結成してみては」と促しました。

 レーベル病のような概ね1万人に1人くらいの有病率の比較的珍しい病気の場合、患者たちは孤立感を募らせます。健常な人は、当然その病気の何たるかを知りませんし、その辛さや不都合に思いを () せることはできません。そんな時、同病者が集まって、懇談したり、情報交換したりすることは、とても心強いことですし、患者自身が前向きに社会生活を送れる絶好の機会になりうることを、別の疾患での患者会立ち上げを支援した時に、痛切に感じたからでした。

 患者さんたちは話し合って、2011年に「レーベル病患者の会」を発足させました。 ホームページ も出来ています。

 先ごろ、御茶ノ水の井上眼科病院会議室で開催された第14回の集まりに久しぶりに参加し、驚きました。確か4、5人でスタートした会でしたが、この時は30人を超える患者とその家族が集まっていたからです。東京近郊ばかりでなく、群馬、仙台、山形、名古屋、岡山、和歌山など各地から参集していたのです。

 会の集まりでは、会員間で自分の病気との向き合い方や、治療などの体験談を語ったり、社会福祉に関する情報を共有したりしていました。

 その後、ミトコンドリア病(レーベル病もその一つ)研究における日本のリーダーの一人である後藤雄一医師の招待講演で、この病気の成り立ちや研究の現況について勉強し、多くの質疑応答が出ていました。

 最後に私が、現在世界で行われている治療研究の状況についての概要を紹介しました。アメリカでは遺伝子治療の試みもあります。

 また、ミトコンドリア病は母系遺伝をします。そのことから母子間や家族に生まれる、不幸な誤解や 軋轢(あつれき) についても触れました。

 これは、とても大きな問題ですので、次回改めて話題に致します。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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