予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
医療・健康・介護のコラム
人はなぜ食べ過ぎるのか?
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
私はもう長いことダイエットの研究をしているのですが、ときどき、「はて?」と改めて考え直すことがあります。
それは「なぜ人は太るのだろうか?」ということです。
自明に見えて、実は深い問いです。たとえば、直感的には「食べるから太る」と思いがちですが、因果が逆転している可能性もあって、「太っているから食べる」というメカニズムも存在しています。ただ考えすぎると深みにはまるので、ここはひとまず、「食べる→太る」と仮定して先に進みたいと思います。
さて、次に浮かぶ疑問は、「なぜ食べるのか?」ということです。これも突き詰めると泥沼にはまりますが、一つの答えは「おいしいから食べる」になります。
ここまでの議論は、当たり前に映るかもしれませんが、「おいしいとは何か?」を考えはじめると、だんだん科学的になってきます。
おいしい=味覚+嗅覚
そもそも「おいしい」は脳が作り出す感覚なのですが、単純に考えると「おいしい=味覚+嗅覚」と言えます。
味覚とは「甘い、うまい、辛い、酸っぱい、苦い」の5味のことを指します。通常はこの舌が作り出す感覚が味の大きな要素を占めると考えがちですが、実は嗅覚のほうがより影響力をもっています。
出典(英文):
http://flavourjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13411-015-0040-2
(英国の学術出版社「バイオメド・セントラル」ウェブサイトより)
舌より鼻で味が決まる。直感的には信じがたい話ですが、経験に照らせば納得がいくと思います。たとえば、風邪などで鼻が詰まって嗅覚が働かないときは、味が分からなくなった経験が誰しもあると思います(ちなみに人間は1万種類のにおいをかぎ分けるそうです)。
このように考えてくると、ダイエットに関して手掛かりが見えてきます。たとえば、味覚が「脂と糖」にまみれた状態では、どうしても、もっともっと食べたくなります。しかし、味覚が「うまみ」に反応するようになれば、たくさん食べなくても満足するようになれるので、太りにくくなります。
「香料」が人間の食欲をそそる
また嗅覚についていえば、「香料」の存在を考える必要があります。ジャンクフードなどには必ず「香料」が含まれており、それが人間の食欲をそそるようにできています。そのため「香料」と適切に付き合い、なるべく加工されていないものを食べることが、太らないためには大事になると考えられます。
……と、ここまで書いたところで、「はて、自分は香料の存在を普段気にして食べていただろうか?」と気づきました。なるべく「脂や糖」を過剰に摂取しないようにとは気を付けているのですが、「香料」は完全に見落としていたなと反省しています。
もちろん、香料がすべて悪いというわけではなく、あくまで「あまりにおいしすぎると食べ過ぎてしまう」のがよろしくないので、飲食物を選ぶ際はきちんと原材料を見て、香料が入っているものは気を付けながら食べたり飲んだりしたいなと思いました。
それではまた次回!
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