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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(30) 医療扶助の最大の課題は、精神科の長期入院

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入院診療費のほぼ3割が精神科

 医療扶助では、どんな病気が多いのか。2015年の「医療扶助実態調査」から、詳しいデータを拾い出してみましょう。この調査は、同年6月に審査された診療報酬明細書(レセプト)の診療費部分を集計したものです。レセプトは通常、前月分の診療をまとめて請求するので、このデータは、おおむね5月分の状況を示しています。

 次の表は、入院診療のデータです。「件数」はレセプトの数で、1か月の間に診療を受けた人数と考えてかまいません。「推計年間額」は1か月の請求を12倍して筆者が算出しました。「1件あたりの金額」は、レセプト1件あたりの平均診療費です。「1件あたり日数」は、1か月のうち平均何日入院していたかを示します。「1日あたり金額」は、入院していた日あたりの費用で、病気によって差があります。

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 最も多いのは「精神・行動の障害」で、件数で35.5%、金額でも28.4%を占めます。1件あたりの金額は37万円台と少し安めですが、1件あたりの入院日数が28.4日と長く、ずっと入院している患者が大半であることがわかります。患者の3分の2は統合失調症です。

次に多いのは循環器系の疾患で、件数で15.2%、金額では19.7%。その多くは脳梗塞などの脳血管障害と、心臓疾患です。

全体の平均で1件あたりの金額が46万円台と、先ほどの試算(月64万円台)より少ないのは、レセプト1枚あたりの金額である(その月ずっと入院している患者ばかりではない)ことと、食事療養費・生活療養費が入っていないためです。

外来通院は高血圧・整形外科・糖尿病が多い

 今度は、入院外(通院・在宅医療)のデータを見てみましょう。

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 一番多いのは循環器系の疾患で、件数でも金額でも22.4%。大部分は高血圧です。2番目は筋骨格系・結合組織の疾患で、件数で13.0%、金額で12.2%。これは整形外科の扱う脊椎や関節の病気が中心です。3番目は内分泌・栄養・代謝疾患で、件数で11.3%、金額で13.4%。メインは糖尿病です。

全体の平均では、ひとつの医療機関に月に2日ぐらい通院して、1回の受診に8496円かかったという計算になっています。

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原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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