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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(30) 医療扶助の最大の課題は、精神科の長期入院

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 生活保護費のほぼ半分を占めている医療扶助。どういう医療に使われているのか、どんな病気が多いのか、保険医療と比べて傾向の違いはあるのか。データをもとに見ていきましょう。

 今回言いたいのは、医療扶助は入院が多いこと、その中でも精神科の入院が多いこと、しかも長期入院が多いことです。いちばんに力を入れるべき改革の課題は、そこにあります。

入院医療費のウェイトが大きい

 まず、2013年度の医療扶助費の大まかな内訳を示します(金額は「生活保護費負担金事業実績報告)から)。

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 まずわかるのは、医科の入院医療費が9506億円、全体の55.7%と大きいことです。ここには、医療機関が受け取る入院時食事療養費(食事代)、入院時生活療養費(65歳以上で療養病棟に入院したときの食費・居住環境費)も含んでいます。

 医科の入院外医療費(通院、在宅医療)は23.6%です。院外処方で薬局が受け取る調剤費(薬代、調剤技術料、薬学管理料など)も15.5%あります。医科入院外、調剤、歯科、訪問看護を合わせたものが、外来を中心にした入院外医療のほぼ総額にあたり、7424億円(全体の約43.5%)です。

人数で7%の入院患者に、費用の55%

 医療扶助を受けた人数はどうでしょうか。2013年度の「被保護者調査」のデータを示します。

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 医療扶助による入院患者は、1か月平均で12万人余り。そのうち5万人余りが精神障害で、実に42.9%を占めています。これに対し、入院外の患者は162万人余りとはるかに人数が多いのですが、精神障害の割合は高くありません。精神障害の継続的な通院の大半が、障害者総合支援法の自立支援医療でまかなわれることが大きな理由です。

人数で見ると7.1%の入院患者に、医療扶助費全体の55%余りが使われているわけです。

 最初の表にあった医科の入院費を12で割ったうえで、この表の入院患者数で割ると、平均で1人あたり月64万0663円になります(食事療養費・生活療養費を含む)。入院外の医療費総額(医科入院外・調剤・歯科・訪問看護)を12で割り、さらに入院外の人数で割ると、1人あたり月3万8143円です。入院と通院では、費用のケタが違うことがわかります。

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原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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