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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

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[難消化性デキストリン]食事とともに摂取すると効果的 

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 体脂肪、血糖値などの改善効果をアピールした食品のCMを見ると、買って試してみたくなる人が多いのではないでしょうか。今回ご紹介する難消化性デキストリンは、そのような食品の機能性成分として多用されているものです。

 

トクホの3割に機能性成分として含まれる

 

 健康の保持増進効果を 標榜(ひょうぼう) した食品を購入する際、「安い製品は効果がないので高い製品が良い」と思う人がいます。この考え方は正しいとはいえません。市場に流通している健康食品は玉石混交で、高額でも標榜している効果に全く根拠がない製品があります。そこで購入する際の判断基準にできるのが、国が個別製品ごとに有効性と安全性を審査して機能性の表示を許可した特定保健用食品(通称「トクホ」)、また、一定の科学的な根拠に基づいて事業者の責任で機能性を表示した「機能性表示食品」です。

 難消化性デキストリンは、トクホ製品の機能性成分として多用されており、現在の許可品のおよそ3割に該当し、「おなかの調子を整える」「食後の中性脂肪が気になる方に適する」「食後の血糖値が気になる方に適する」という表示がされています。原則としてトクホでは、消費者が実際に摂取する製品を用いたヒト試験が義務付けられています。従って、トクホ製品に多く利用されている難消化性デキストリンではヒト試験が多く実施されていて、その健康の保持増進効果については、かなりのデータが蓄積していると考えることができます。

 

消化され難い水溶性の食物繊維の一つ

 

 難消化性デキストリンは、その名の通り消化され難いデキストリン(デキストリンはでんぷんの一種)の総称で、水溶性の食物繊維の一つとされています。具体的には、トウモロコシのでんぷんに微量の塩酸を加え、加熱して 焙焼(ばいしょう) デキストリンというものを調製し、これにα-アミラーゼおよびグルコアミラーゼという消化酵素を作用させ、得られた未分解物を濃縮、脱塩、脱色して調製されています。難消化性デキストリンは、水に溶けやすく、粘性が低く、異臭味がなく、わずかな甘味をもち、長期間保存しても濁りや沈殿ができにくいといった性質から、飲料、米飯類、パン、スープなどの様々な食品に使われています。

 難消化性デキストリンは、その約90~95%が小腸で消化されずに大腸まで到達し、その約半分が腸内細菌の餌となって短鎖脂肪酸(酢酸などの炭素数が6以下のもの)になると考えられています。通常の消化される炭水化物は、その熱量(エネルギー)は1グラム当たり4キロカロリーですが、難消化性デキストリンの熱量は1グラム当たり1キロカロリーとなっており、体のエネルギー源になりにくい成分と言えます。

 

食事とともに摂取するのが効果的

 

 どのようにして難消化性デキストリンが機能性を発揮するかを調べると、おなかの調子を整える作用は、「1日5~10グラムの摂取量で、水分を抱え込んで便の軟らかさを保ち、便量を増やし、腸内細菌 (そう) のバランスを良くして 糞便(ふんべん) 量および排便回数を増加させる」と説明されています。

 また、食後の血糖値については、「1日4~6グラムの摂取量で、炭水化物とともに摂取すると、炭水化物の消化酵素(スクラーゼやマルターゼ)による分解によって生じるグルコースの血液中への輸送が緩やかになり、その結果として食後の急激な血糖上昇を抑える」と説明されています。脂肪の吸収については、「1日5グラム程度の摂取量で、食事由来の脂肪が消化管内でリパーゼによって分解された後、胆汁酸などとミセルと呼ばれる集合体を形成する過程に影響し、脂肪の吸収を抑制し、便中への脂肪の 排泄(はいせつ) を増加させ、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する」と説明されています。

 これらの作用機序と摂取量から、血糖や脂肪の吸収抑制については、およそ5グラム以上の難消化性デキストリンを摂取し、しかも炭水化物や脂肪とともに摂取することが重要であることがわかります。

 トクホの飲料などには「食事とともに」といった表示がされています。空腹時に摂取しても、おそらくその効果は期待できません。実際、難消化性デキストリンの血糖値に対する影響は、炭水化物を摂取しなければ認められず、また正常な血糖値の低下も起こさないようです。これは難消化性デキストリンには薬のような強い作用がなく、低血糖という有害事象を起こさないから安全と解釈することもできます。

 

複数の製品からの過剰摂取に注意

 

 難消化性デキストリンに限ったことではありませんが、食品に使われている機能性成分で体に対する作用が強いものはありません。消費者の自己判断で利用される食品に、強い作用があると、それは望まない影響が出やすいことを意味し、安全性の確保ができなくなるからです。では、難消化性デキストリンの摂取量と安全性の関係はどこまでわかっているのでしょうか。

 これまでの研究から、難消化性デキストリンを15グラム程度の量で4週間摂取しても問題となる影響は認められていません。過剰に摂取した際に認められる有害事象は下痢で、これは食物繊維に一般的に認められる症状です。下痢を起こさない最大の摂取量は、体重1キログラムあたり、男性では1.0グラム、女性では1.1グラムと報告されています。これは体重60キログラムの男性が、60グラム摂取しても下痢は起こさないという意味です。ただし、有害事象を受けるかどうかには個人差があるため、あくまで目安と考えた方がよいでしょう。また、下痢以外の有害事象が将来明らかにされる可能性が否定できないことも知っておいた方がよいでしょう。

 難消化性デキストリンは、トクホや機能性表示食品など様々な食品に使われており、気がつかないうちに複数の製品から重複して摂取し、過剰摂取状態になっている可能性もあります。そのときに参考になるのは、個々の製品に表示されている原材料名と難消化性デキストリンの含有量の確認です。個々の製品の表示をチェックすれば、難消化性デキストリンが含まれているか、含まれている場合はどれだけの量かを把握することができます。それによって、自分にとって難消化性デキストリンの摂取量が過剰量になっていないかどうかが推定でき、個々の製品を安心して利用することができます。

 

 以上のように難消化性デキストリンでは、有効性と安全性の科学的根拠が蓄積されていると言ってよいでしょう。しかし、難消化性デキストリンを含む製品の機能性が得られるかどうかは、その製品を、誰が、どのような目的で、どれだけの量と期間で摂取するかに大きく依存しています。血糖値や中性脂肪が気になるのであれば、日ごろの食生活や生活習慣を見直す「きっかけ」「動機づけ」として製品を用いることが、もっとも効果的な利用法です。

 難消化性デキストリンやそれを含むトクホ製品に関する情報の詳細については、以下のサイトを参照してみてください。

 ⇒ 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

 (国立健康・栄養研究所 梅垣敬三)

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国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、現在はその中の組織として位置づけられている。

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