虹色百話~性的マイノリティーへの招待
医療・健康・介護のコラム
第42話 大学のなかの性的マイノリティー…広がる理解と活動
LGBT学生サークルが増えている
春、新年度がはじまって、大学にもフレッシャーズが溢れていますね。私が大学進学のため上京したのが1986年。武道館での入学式の日からちょうど30年、いったい私はどこへ流れついたのか……。人生はままならぬの思いがしきりです(苦笑)。
さて、性的マイノリティーの視点で大学の往時と今を比較すると、「変わったな」と思うものの一つに、LGBTサークルの存在があります。ネットで検索してみれば、ちょっとした大学なら、たいていLGBTサークルがあったりします。大学公認の場合もあります。
サークルはもちろん、性的マイノリティー当事者が集う場所。多くは性的マイノリティー当事者であることを参加条件にしていますが、まだアイデンティティーが揺れている人もいるでしょうし、場合によっては「アライ」と呼ばれる、性的マイノリティーを理解しサポートしたいという人が参加することもあるでしょう。
軽い活動では、ランチやお茶会をしながらダベる、新歓などの飲み会、メーリングリストや掲示板で交流、などなど。「生協のテラスでテーブルに置いたレインボーフラッグが目印です。気軽に来てください」なんてSNSで呼びかけていたりします。
いわゆる活動っぽいことなら、読書会やトーク、旅行・合宿、学園祭などでの企画(講演会や映画会、さては演劇など)、フリーマガジンの制作、パレードイベントなどへの参加、他大学サークルとのインカレ活動などなど。友達づくりや合コン・出会い系から硬いものまで、内部向けだったり外部向けだったり、学生サークルらしいことをLGBTをテーマに行っています。
大きな大学で歴史もあるサークルだと、卒業生がいろんな会社にいたりするので、先輩訪問で就活サークルの一面も。「先輩、この会社、カムアウトしても大丈夫っすか?」「見かけは移行してるんですけど、戸籍変更まだなんです。そういうの、受け入れてくれる会社ですか?」――学生の企業評価の目も意外に厳しいかもしれません。
欧米の大学でLGBTサークルは、70年代にゲイリベレーションが勃興したころに始まるでしょう(時代も世界的に学生運動の季節でした)。現在も、日本で悩んでいた当事者が留学先の大学でLGBTサークルを知り、目からウロコが落ちた話はよく聞きます。
日本のLGBTサークル――当初はゲイまたは同性愛サークル――は、早稲田大学のGLOW(グロウ、Gay and Lesbian of Waseda)が草分けで、1990年代の初期にゲイのドイツ人留学生とゲイの日本人学生が立ち上げたのを私も記憶しています。今も活発に活動を続けています。
大学へ入り、若者らしい「自分ってなに?」という課題に向き合うとき、やはりおなじ仲間と出会い、交流できることが、どれだけ本人の自己発見、自己受容にプラスとなるか、はかりしれません。往時と比べ、ちょっと羨ましい気がします。
セクシュアリティーの講義や担当教員も増えた
もう一つ格段に増えたのは、セクシュアリティー・スタディーズ、ジェンダー・スタディーズなど、性的マイノリティーにもかかわりのある講義です。
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米国大学留学経験者ですが、ゲイに限らず人種差別の為の講義や啓発活動がありました。そこでは差別が起こる構造などが話しあわれ、どのように対抗したらいいかを教わりました。差別に至る前にステレオタイプという固定観念があり次にそれを基とした偏見ができ、偏見をもって差別行為に至る3段階です。対抗するには知識をもち劣等感を抱かないようにすること。カラクリを見破ること。情報をただ吸収するだけでなく批判的分析を加えること。差別論者が使う言葉の定義を問うこと。大抵あやふやであるから。例えば知性の問題を取り上げたら、知性とは何ですか?ときいてみることです。少数派に限らず全ての人が学ぶことだと思います。
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とても励まされるコメントです。固定観念→偏見→差別行為という順番。これに対抗するには、差別のカラクリ看破→情報の批判的分析→差別論者の前提への問いかけという実践、そこで築かれる自尊感情が土台となっていくということでしょう。こういうカタチの学問を大学の外でも学べる機会を増やし、子どもたちにわかりやすく伝えていくことが、差別=いじめをなくすためにも、欠かせない取り組みだと思います。
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