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子どもがすぐ寝る読み聞かせ…絵本に心理学ミックス

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自律訓練法をベースに

 「読み聞かせると子どもがすぐ寝る」と評判の絵本が75万部のベストセラーになっている。作者の心理学と行動科学の知識が生かされているという。その仕掛けと支持される背景を探ってみた。

 奈良県 斑鳩いかるが 町の小学3年生、西橋 駿しゅん 君(8)は夜11時過ぎまで起きているのが日常だった。担任教師から「授業中に居眠りしている」と注意された母親の雅子さん(47)は昨年11月に発刊された「おやすみ、ロジャー」(飛鳥新社)を読み聞かせてみた。

 「20分ほどで本当に寝ました」と雅子さん。駿君の感想は「僕、眠り方がわかった」。今では夜9時台に就寝している。

 絵本はスウェーデンの行動科学者カール=ヨハン・エリーンさんが考案した。子ウサギのロジャーが眠りを求めてさまようストーリー。「ゆっくり、ゆっくり」といった繰り返しが多いほか、読み方の指示があるのも特徴で、特定の箇所をゆっくりとか、あくびしながらとか、変化を加えて読み聞かせる。自費出版だったが、英訳されるとたちまちヒットした。

 日本語版を監訳した快眠セラピストの 三橋みはし 美穂さんは「この本は自律訓練法をベースに作られていることがポイントの一つ」と説明する。

 自律訓練法は、リラックスする姿勢や自己暗示を手順に沿って実践する心のトレーニング。体の力を抜いた状態で、「気持ちが落ち着いている」「手足が重たい」「手足が温かい」などと、段階を追って暗示していく。心身のバランスが崩れる自律神経失調症の治療に効果がある。

 国際医療福祉大教授で心療内科医の村上正人さんは「自律訓練法は本来、眠るためのものではないが、眠りに応用することは可能」と話す。村上さんは講義前にこの手法で学生をリラックスさせているが、実際、途中で眠ってしまう学生もいるという。

 絵本研究者には、「絵本は催眠術ではない」と批判的な声もある。

 「絵本というより、実用書と思ったほうがいい」と言うのは、読み聞かせの効用を科学的に実証した東京医科歯科大教授で脳科学者の 泰羅雅登たいらまさと さん。「読み聞かせは、感情をつかさどる大脳辺縁系を発達させ、子どもの感受性を豊かにする。内容が面白いと寝てくれないという指摘もあるが、この本は、そんな絵本とは別。寝かしつけに悩む親にとって助かるツールでしょう」

 子どもの夜更かしは、心身の不調につながる場合もある。文部科学省の調査だと、午後9時前に寝る小、中学生の18%が「自分のことが好き」と答えたが、遅く寝るほど減る傾向で、やる気につながる自己肯定感が乏しくなることがうかがえた。

 子どもと眠りについて研究する小児科医の 神山こうやま 潤さんは「昔の人には自然に身に付いていた眠り方が、今は失われ、この本が“おばあちゃんの知恵”のように活用されているのではないか」とみる。

 社会全体が夜型になった現代。神山さんは「早く寝かせようと躍起になるより、親子で眠りを大切にする意識を持って」とアドバイスしている。

 

  メモ  文部科学省の全国調査は、生活習慣と子どもの自立の関係を調べた。小中高生約2万3000人が回答。昨春発表された。休日と平日で起床時刻が2時間以上ずれる子どもほど授業中に眠くなることが多い、寝る前にテレビなどに接する子どもほど、朝、布団から出るのがつらいと感じている――などがわかった。(高梨ゆき子)

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