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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

地域のために働く管理栄養士へのきっかけは東日本大震災でした

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 熊本県・大分県の大地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。

 ニュースで被災地の状況を見聞きするたび、5年前の東日本大震災で被災した日々を鮮明に思い出します。当時、激しい余震を何度も経験するうち、緊急地震速報よりも早く、私の五官で感じる「地震センサー」が地鳴りを察知し、子供たちを抱き寄せるようになっていました。精神状態は全く「大丈夫じゃない」のに、不安そうな表情の2歳の娘には、「大丈夫だよ。ちょっと地球がくしゃみしただけだよ」などと、努めて笑顔で説明するようにしていました。

 繰り返し報道される「がんばれ」に対しても、「これ以上、何をがんばればいいの」と、むなしく感じたこともありました。今回の熊本の被災地の皆様の不安と無力感を おも うと、胸が苦しくなります。

 ですから、私は「がんばれ」とは言えません。むしろ、無理に 頑張がんば らなくてもいいと思います。一日も早く、被災された方が日常生活を取り戻すことができますよう、心からお祈り申し上げます。また、先陣を切って全国から被災地へ支援に入ってくださっている方々に、改めて敬意を表したいと思います。

地域のために働く管理栄養士へのきっかけは東日本大震災でした

もしものときのご飯の炊き方。(1)研いだ米と米の体積比1.2倍の水を土鍋に入れカセットコンロで加熱。沸騰したら3分間そのままに(2)土鍋を火からおろして座布団と毛布で保温すると、ごはんが炊けます

 

 今回から2回にわたって、東日本大震災がきっかけで在宅医療に関わることになった経緯を振り返っていきたいと思います。

 私は、埼玉県や宮城県内の長期療養型病院で管理栄養士業務を4年ほど行ったあと、2009年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取りました。ケアマネジャーとして最初に所属した事務所は訪問看護ステーションの中にありましたので、いつも訪問看護師と連携しながら、ケアプラン(介護サービス計画)を立てて支援をしていました。

 ケアマネジャーは、介護が必要な方のニーズを把握し、「どのような生活を送りたいか」というご本人やご家族の希望や目標をもとに、介護保険のサービスを組み合わせ、生活のコーディネートをする仕事です。

 同じ事務所の訪問看護師からは、時々、栄養に関する質問を受けました。

 「糖尿病の患者さんがいるのだけど、なかなか薬だけでは血糖値がコントロールできないのよね。主治医からは『1日1400キロカロリーの食事を』と言われているけど、それってどんなふうに食べればいいのかしら?」

 「腎臓病の患者さんがうなぎを食べたいって言うの。どのくらいなら食べていいのかしら?」

 腎臓病がある方は、たんぱく質の摂取を制限する場合があります。たんぱく質を多く含むうなぎを、どのくらいなら食べてもよいのかわからないため、食べること自体をあきらめている方がいたのです。

 また、病院を退院してからかなりの時間が経過している患者さんの場合は、自宅での生活で病状が変わり、「退院時栄養食事指導」の内容を実践するのが難しくなっていることもあります。在宅医療において、管理栄養士がやるべき仕事はいくらでもあるということを、このとき実感しました。

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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