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知って安心!今村先生の感染症塾

医療・健康・介護のコラム

被災地で1人1人ができる感染対策

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 熊本地震によって、多くの被災者の方々が避難生活を強いられています。そして現在、避難期間が長引くことによって発生する感染症が話題となってきました。これまでの日常とは異なる衛生環境で生活を続ける中で、下痢、発熱、 (せき) などの症状を発症する人がいます。そして、避難所や車中などで多くの人が過密状態で生活することによって、集団の中で感染症の広がる可能性も高くなります。

 被災地の現場で生活している人にとっては、日常的な感染症も非常に大きなストレスです。できる限り感染症にかからないために、そして感染症を広げないために、今回は「被災地で1人1人ができる感染対策」について考えてみましょう。この記事が、現地で生活されている方々の健康のために、少しでもお役に立てることができれば幸いです。

日本における災害と感染症

  途上国での大規模災害では、赤痢やコレラ、あるいはネズミが媒介するレプトスピラ症など、特徴的な感染症が流行することがあります。しかし、日本においては、もともとの衛生的な生活環境、そして日常的な衛生教育レベルの高さもあり、そのような感染症が流行するリスクは高くはありません。しかし、通常でも発生している下痢症、呼吸器感染症、そして食中毒については、十分な量の水がなかったり、衛生用品が不足したりすることによって、集団感染がより起こりやすくなります。災害時の感染対策においては、いろいろな制限がある中で、その時、その場所の状況によって、何ができるのかを整理することが必要となります。

やれることは状況によって異なる

  日常的な感染症対策においては、「手洗い」と「咳エチケット」が基本となります。これらの方法は、いろいろな感染症に有効な、万能の感染対策なのです。しかし、被災後の現場においては、どのような生活環境で、どのような衛生用品を利用できるかによって、できることも違ってきます。特に十分な量の水がないことは、日頃の感染対策とは大きく異なるところです。

 被災した時には、以下のようなものが感染対策のためにも役立ちます。しかし、その時期や場所によって、何が準備されているかは異なります。以下では、そのような状況に分けながら、できる対策をまとめていきましょう。

<あると感染対策に役立つもの>

 ・ウェットティッシュ(アルコール性の方が効果も高い)

・アルコール性の手指消毒剤

・マスク

・ラップ

・ビニール袋

・ビニール製の手袋

 

被災地での「咳エチケット」

 

 インフルエンザなどの多くの呼吸器感染症は、「 飛沫(ひまつ) 感染」でうつります。飛んでいく粒が空気感染と比べて大きいため、咳やくしゃみで口から飛び出しても、通常は1~2メートル以内で地上に落ちてしまいます。飛沫感染においては、距離と方向が大切なポイントとなります。距離が離れていたり、違う方向に向いていたりすれば、飛び出した病原体が直接口などに入ってくる可能性も低くなるからです。くしゃみや咳によってうつる感染症では、本人が人にうつさないように気をつけることが、最も効果の高い予防策となります。感染している本人が気をつけることから、この予防を「咳エチケット」と呼ぶようになっています。

 

<マスクがない場合>

  咳やくしゃみをする時には、少し離れたり、顔の向きを変えたりするだけでも効果があります。よく手で口を覆う姿を見ますが、そうすると手が汚染されてしまい、その手が触れた環境を介して感染が広がる可能性があります。咳やくしゃみをするときには、手のひらで口を覆うのではなく、水平チョップのように肘の裏を口の前にもっていき、「肘の裏でブロック」するようにしましょう。テッシュがあれば、口をテッシュで覆うだけでも大丈夫です。

 

<マスクがわずかしかない場合>

 「うつらない」ように着けるマスクより、「うつさない」ように着けるマスクの方が有効です。咳やくしゃみで口から出る瞬間の飛沫物は、水分を含む大きな粒なので、マスクでブロックすることができるからです。したがって、数少ないマスクは、咳をしている人に着けてもらうようにしましょう。これだけで、感染が広がることを防げます。

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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