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[認知症のはてな](1)ほころび始める日常生活

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料理の手順忘れる、書類作れない…

[認知症のはてな](1)ほころび始める日常生活

 認知症は今や、誰にとっても、自分や身近な人がなりうる病気だ。

 新コーナーでは、認知症の基本的な知識や困った時に役立つノウハウ、支援やサービスの活用法を紹介する。第1回は、認知症の種類と症状、早期発見につなげるポイントなどをまとめた。

 「スーパーに出かけたのに何も買わずに帰宅したり、通販で買った商品の支払いを忘れて督促状が何度も届いたりしたのが始まりでした」。東京都目黒区の男性(73)が、妻(73)の変化に気づいたのは約10年前。病院で脳のCT(コンピューター断層撮影法)画像を撮ったところ、アルツハイマー型認知症と診断された。

 症状は徐々に進み、「庭の木の上に子どもがいる」などと、実際にはないものが見えると言うようになった。男性は、介護保険の訪問介護などを利用して自宅で妻の世話を続けたが、昨年6月、特別養護老人ホームに入所させた。「もっと早く病気について知っていれば、妻の生活も違ったかもしれない」と話す。

 認知症は、病気などが原因で脳の細胞が壊れることから発症する。記憶が抜け落ちたり、日時や場所がわからなくなったり、家事の段取りが立てられなくなったりする。こうした「中核症状」は、認知症になれば誰にでも起こる。さらに、周囲の人との関係や本人の性格によっては、妄想や 徘徊はいかい といった「行動・心理症状」が表れる場合もある。

 認知症にはいくつかの種類がある。記憶障害を伴う「アルツハイマー型」が約7割を占め、意欲の低下などが見られる「脳血管性」や、幻視が特徴的な「レビー小体型」などもある。

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 家族や身近な人が「認知症かもしれない」と気づくには、どこに着目すればよいだろうか。認知症に詳しい順天堂大大学院の新井 平伊へいい 教授(精神・行動科学)は「日常生活にほころびが出てきたら要注意」と話す。例えば、「前から知っている人の名前を思い出せない」のは単なるど忘れの可能性が高いが、「料理の手順を忘れる」「仕事で単純な書類を作れなくなる」などは認知症を疑った方がよい。

 不安を感じたら、まずはかかりつけ医に相談する。その際、新井教授は「医師が検査もせず、『年のせい』で片づけるようなら、別の病院も考えて」と話す。早期発見し、適切なケアにつなげる機会を逃す恐れがあるからだ。詳しい診断を受けるには、専門医の受診が必要だ。インターネットでも探せるが、自治体の地域包括支援センターから紹介してもらうこともできる。

 「種類にもよるが、15~20年かけて徐々に進行するのが認知症」と、新井教授。本人も家族も無理のない生活を続けるためには、介護保険を使い、ヘルパーやデイサービスなどの支援をうまく利用したい。

 家族への支援もある。認知症の人や家族がお茶を飲みながら交流したり、専門家の助言を受けたりできる「認知症カフェ」がその一つで、41都道府県に655か所(2014年度)ある。冒頭の男性は、現在、近くの認知症カフェでボランティアをする。「自分の時は孤独だったが、これから介護をする人には、こうした場所も利用してほしい」と話す。

25年に推計730万人

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 厚生労働省の調査では、65歳以上の認知症の人の数は2012年で約462万。糖尿病の有病率を加味すると、25年には730万人になると推計される。

 増え続ける認知症に対応するため、国は15年1月、省庁横断の国家戦略「新オレンジプラン」を公表した。「認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会」を目指し、啓発活動の推進や、64歳以下で発症する「若年性認知症」への対策の強化などが掲げられた。(板垣茂良)

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