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医療・健康・介護のコラム
「アトピーの聖地」豊富温泉に行ってきました
ほぼ日本最北端の温泉を2月に訪れました。北海道稚内市から少し南に位置する豊富町の 豊富 温泉です。私は割と温泉好きであちこちに行っている方だと思いますが、豊富温泉のような温泉は初めてでした。写真で見ると一目瞭然ですが、大量の油が浮いています。石油試掘に伴って噴出したということで、確かに石油のような臭いがします。
町営の日帰り入浴施設ふれあいセンターにある湯治用の風呂に入りました。お湯はヌルヌルして濃厚なスープのようで、保湿効果もたっぷりありそうでした。湯の温度は低めにしてあるので長風呂できます。風呂を出る時、もったいないと思い、あまり洗い流さずに出たところ、後で自分の体から漂う石油臭で頭がクラクラになりました。臭いが気になる人は、しっかり洗い流すか、油分が少ない一般向けの風呂もあるので、そちらの方に入れば大丈夫です。
この温泉が、赤い発疹ができて表皮が薄くはがれる皮膚病「 乾癬 」に効果があるというのは知っていたのですが、アトピー性皮膚炎の患者にも口コミで広まり、全国から来ていることは知りませんでした。医療ルネサンス「患者学 移動する」(3月30~4月1日、4~5日の全5回)の4回目で紹介したように、湯治目的で温泉の近くに移住してしまう人までいるのです。
皮膚病への効能をうたう温泉は数多くありますが、全国から移住してきたり、湯治によく来る人が地元にアパートを借りたりするような温泉は、ここぐらいではないでしょうか。すべての人に効くわけではないでしょうが、一般的な皮膚科での治療で改善しなかった人が、わらをもつかむ気持ちで来てみたら急によくなり、驚くことも多いとのこと。「アトピーの聖地」などと呼ばれるのも納得です。
ふれあいセンターによると、湯治に来て最初の2、3日目あたりに症状が一時悪化することがあるものの、2~3週間滞在すれば多くの人が改善効果を感じられるとのことです。油分に含まれるタール成分に炎症を抑える作用があるといわれていますが、豊富温泉の効果に関する研究はまだ少なく、科学的な解明が待たれます。
温泉のみならず、自然に囲まれたゆったりした環境も症状改善に良い影響を及ぼしているとの声も聞きました。東京から移住したアトピーの女性は「東京は人と人の距離が近くて、満員電車などでは顔をじろじろ見られてしまう。ここは人と人の距離が適度で暮らしやすい」と話していました。
北海道ならではの乳製品や肉製品も評判のようです。ふれあいセンターの食堂で食べられるエゾシカのジンギスカンもおいしいので、豊富温泉に行かれる方はぜひ食べてみてください。
藤田勝 |
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