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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(29) 保護費のほぼ半分は、医療扶助に使われている

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 生活保護にかかる費用の中で、最も大きな割合を占めるものは何でしょうか? 日常の暮らしにあてる生活扶助? それとも住宅扶助? いいえ、圧倒的に大きいのは医療扶助です。医療扶助費は、生活保護費全体の半分近くを占めています。

 生命の維持、心身の状態の維持・改善は、生存権保障の最低ラインですから、適切な医療の提供は欠かせません。したがって生活保護の利用者は、公的医療保険と同じ内容の医療を受けることができます。自己負担はありません。それ自体は、当然だと思います。

 でもなぜ、医療扶助の支出額がそれほど多いのか。いくつか理由が挙げられます。コスト、人権の両面から、改革のメスを入れるべき部分もあります。

医療扶助費がかさむ四つの理由

 最初に、どうして医療扶助費がかさむのか、筆者の見方をざっと説明しておきましょう。

 第1に、生活保護世帯には高齢、病気、障害の人が多いことです。というか、病気、障害のために医療費がかさんだり収入を得られなかったりして、生活保護を受けているケースも少なくありません。だから当然、一般の世帯より、医療を必要とする人の比率が高く、症状も重い傾向にあるわけです。

 第2に、生活保護を受けた世帯は、国民健康保険・後期高齢者医療の加入対象から外れるため、医療費の大部分を保護費で負担していることです。生活保護には「他法・他施策優先」というルールがあり、他の制度があれば、そちらを先に使い、足りないときに保護費で補うのが原則ですが、医療だけは扱いが違います。

 第3に、医療扶助費の半分以上を入院医療費が占めていること。入院すると、外来通院や在宅医療に比べて大幅に費用がかかります。ここには、本当に入院が必要なのかという問題が含まれています。

 第4に、ごく一部の医療機関ではあるものの、患者が生活保護であることを利用して過剰な医療をするケースがあることです。「不正」にあたるとは限りませんが、ゆゆしきことです。

8割が受けている医療扶助

 さて、扶助の種類別に見た保護費の支出額と、それぞれの扶助の対象者数について、データを見てみましょう。2013年度(平成25年度)の実績は、次の通りです(金額は「生活保護費負担金事業実績報告」、人数は「被保護者調査」から。構成割合や比率などは筆者算出)。

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 8種類の扶助のうち生活扶助、住宅扶助は、生活保護利用者の大半が対象になるので、金額が大きいのは当然でしょう。教育扶助は小中学生のいる世帯、生業扶助は高校生の就学費が中心で、対象者数・金額は多くありません。

 医療扶助は、生活保護利用者の8割が受けており、総額で1兆7000億円余り。保護費全体(3兆6000億円余り)の47%を占めています。1970年代には60%を超えていた時期があり、しだいに割合は下がってきたのですが、それでも大きな金額と比率です。

 一方、介護扶助は、高齢者が多いわりには対象者数も金額も少ないことがわかります。葬祭扶助、出産扶助は、そのつどの必要に応じて支出され、わずかな件数・金額です。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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