文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点

医療・健康・介護のコラム

がんの障害年金を知っていますか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

がんの障害年金について知っていてほしいこと

 障害年金制度について教えていただいたのは、「がん患者会シャローム」という患者会の方からなのですが、シャロームさんに許可を得て、がん患者の障害年金について、知っていてほしいこと(注4)を転載させていただきます。 

① 申請は、がん発症から1年半経過していなければならない(そうでない特別な場合もあるが、それについての詳しい説明は省く)。

② がんの再発・転移者であり、根治が困難な状態であること(再発・転移をしていない場合でも受給される場合はあるが、困難である。また、決して余命半年でなくても受給されることは言うまでもない)。もし、受給者が根治した場合は、支給は取り消される。 

③ 厚生年金に加入している人は、障害認定3級から支給されるが、国民年金加入者は、2級からである(簡単に言うと、厚生年金加入者の方が、国民年金加入者より支給されやすい)。 

④ 一方、厚生年金加入者は、日本年金機構(旧社会保険庁)で審査されるために、認定までに約半年くらいかかるが、国民年金加入者は、年金事務所(旧社会保険事務所)で審査されるので、申請から3か月後くらいから支給される。 

⑤ がんになって退職をし、国民年金加入者であっても、発症時に厚生年金に加入していれば、厚生年金加入者として申請出来る。

⑥ 老齢年金を一度でも受けていた場合は、かなり受給が困難であること(当会では、2人申請を試みたが、2人とも認定されることはなかった)。 

⑦ このがん患者の障害年金は、身体障害者の年金とは別物であり、認定医でないと診断書が書けないということはないし、障害者手帳も給付されない。もちろん、申請には不要である。 

⑧ このがん患者の障害年金は、遺族が申請することも出来る。ただし、受給できる期間は、5年間と限られている。

 精神・知的障害に関する障害年金のデータですが、障害厚生年金が日本年金機構本部1か所で全国の審査決定をされているのに対し、国民年金加入者が対象の障害基礎年金は各都道府県の事務センターで審査決定されているため、認定基準が統一されておらず、地域格差があることが指摘されています(注5)。

 年金は、国民が将来のために備え、積み立てている大切なお金です。

 適切な形で、適切な人に使われてほしいと思います。障害年金は、国民が誰でも受けられるきちんとした公的年金ですので、皆が知っていてほしい情報と思います。

 がんになって、お金のことまで心配をしなければならない時代となりました。

 高額な抗がん剤の費用は、学会でも、新たな副作用の一つとして考えるべきでは?と指摘(注6)されているくらいです。

 がんの障害年金制度は、ぜひ知っておいてほしい情報として書かせていただきました。

 参考

 1.がんと暮らしを考える会
 http://www.gankura.org

 2.政府広報オンライン. 障害年金の制度をご存じですか? がんや糖尿病、心疾患など内部疾患の方も対象です
 http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201201/2.html

 3.障害年金支援ネットワーク
 http://www.syougai-nenkin.or.jp

 4.がん患者会シャローム代表個人ブログ
 http://sugitocancer.blog87.fc2.com/blog-entry-1916.html

 5.厚生労働省 精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-nenkin.html?tid=246772

 6.Khera N. Reporting and grading financial toxicity. J Clin Oncol. 2014;32(29):3337-8.

3 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

katsumata

勝俣範之(かつまた・のりゆき)

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

 1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事