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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

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[ココナツオイル]バランス考え、食べ過ぎに注意 

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第10回 ココナツオイル

 最近、スーパーなどで身近に販売されている食用油の種類がずいぶん増えました。今回は、その中でも最近注目を集めている「ココナツオイル」について解説します。

ココナツオイルの特徴

 

ココナツオイルはココヤシ(学名:Cocos nucifera)というヤシ科の植物のナッツから得られる油脂です。ヤシ油とも呼ばれ、日本で常用される食品の標準的な成分値を示した「日本食品標準成分表」には、こちらの名称で記載されています。ヤシ科のアブラヤシ(Elaeis属)の植物の果実から得られるパーム油や、種子から得られるパーム核油もヤシ油と呼ばれることがありますが、ココナツオイルとは原料となる植物が異なります。

 

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 油脂は様々な種類の脂肪酸によって構成されています。脂肪酸というのは、図のように、炭素(C)が鎖状につながった一方の端にカルボキシル基(-COOH)がついた構造をしていて、炭素の数やつながり方により、その種類や性質が異なります。中でも、炭素の数が8~12個(10個までとする説もあります)の脂肪酸を中鎖脂肪酸と呼びます。ココナツオイルは飽和脂肪酸(二重結合がない脂肪酸)の中鎖脂肪酸であるラウリン酸(炭素数12)が最も多く含まれ、オクタン酸(炭素数8、カプリル酸とも呼ばれます)やデカン酸(炭素数10、カプリン酸とも呼ばれます)の割合も他の油脂より高い点が、一番の特徴と言えます。

ココナツオイルなのか? 中鎖脂肪酸なのか?

 

 インターネット上では、ココナツオイルには、ダイエット、便秘、美容、免疫、心血管疾患、糖尿病、認知症などに対するとても幅広い健康効果が期待されているようです。しかし残念ながら、ココナツオイルを食べてもらい、その健康効果を食べなかった人と比べた、という臨床試験は、今のところ見つかりません。ココナツオイルの有効性の説明をよく読むと、「ココナツオイルには中鎖脂肪酸が多く含まれています。中鎖脂肪酸には……という効果があると言われています」というものがほとんどです。一つ目と二つ目の文章では、主語が変わっていることに、気づかれましたか? 食品の効果を (うた) う時によく使われる方法なのですが、こうした情報を目にした時には、効果があるかどうかの研究がされているのは後者(この場合、中鎖脂肪酸)の方であって、前者(ココナツオイル)ではない、という点に注意してください。

 中鎖脂肪酸は、炭素の数がそれ以上の長鎖脂肪酸と比較して、吸収が速い、腸から肝臓につながる門脈という血管を通って運ばれるので分解が速い、エネルギーとして利用されやすい、などの特徴があり、ヒトを対象にした研究の結果から体脂肪蓄積の抑制が期待できるのではないかと考えられています。ココナツオイルの主成分は中鎖脂肪酸ですので、同様の効果が期待できる可能性はありますが、それならば、ココナツオイルと脂肪酸の組成が似ているパーム核油でも、中鎖脂肪酸を主成分となるように配合した調理油でも、同じではないのか?ということになります。

ココナツオイルも油です

 

 「ココナツオイルは体にいいものだから、毎日一生懸命食べている。でも最近、何だかちょっと太ってきた。そんなはずはない。だって、体にいいものだし。ダイエットにもいいって聞いたし」。皆さんの周りに、そんな方はいらっしゃいませんか?

 もし、見つけたら、教えてあげてください。「でも、それ、油だよ」と。

 世の中に出回っている健康情報の中には、あたかも「いい食品」と「悪い食品」があり、「いい食品」はいくら食べても大丈夫でどんどん食べるべきで、「悪い食品」は食事から除去すべきである、というような極端なものがたくさんあります。しかし実際は、同じ食品でも、誰が、どれだけ、どのように食べるか、によって、「良い食品」にも「悪い食品」にもなります。様々な健康効果の可能性が期待されているココナツオイルですが、油ですので、大さじ1杯で約110kcalあります。ココナツオイルを摂取したら、その分だけ何かの摂取量を減らさないと全体の摂取エネルギー量はプラスになります。日々の食生活では、何よりも全体のバランスが大切になってきます。ココナツオイルを摂取するときにも、1日の食事全体における脂質(油)の割合や、摂取した油全体における各脂肪酸の割合を、なるべく理想と考えられているものに近づけるように利用することが大切です。

 何か「良い」という情報に飛びついて、そればかりを食べてしまい全体のバランスが崩れると、それは健康に「悪い」行動になってしまいますので注意してください。

アレルギーに注意

 

 ココナツオイルはこれまでも世界中で利用されて来た食品ですので、食べ過ぎに気をつければ安全に利用できます。ただし、ココナツやココナツオイルによるアレルギーの報告がありますので、もし、摂取してアレルギー症状が出た場合はすぐに中止してください。また、品質の悪いココナツオイル製品のナフタレン汚染による中毒の報告もありますので、表示等を参考に、品質のしっかりした製品を選択するように心がけてください。

 ココナツオイルの安全性・有効性に関する科学的根拠は以下のサイトを参照してみてください。

 ⇒ 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

 (国立健康・栄養研究所 佐藤陽子)

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国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、現在はその中の組織として位置づけられている。

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