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佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」

コラム

身体拘束急増のなぜ

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 精神科に入院する患者の処遇は、人権意識の高まりと共に、以前よりはだいぶ改善されたはずだと思っていた人は多いだろう。私もそうだった。ところが、のど元過ぎれば熱さを忘れるこの国では、楽観は禁物なのかもしれない。

 

 身体拘束1万229人、10年前(5109人)の2倍に。4月8日付の朝刊で報じたこの数字は、希望的観測を打ち砕いた。これは2013年の調査日(6月30日)に身体拘束を受けていた患者数なので、1年間の数は分からないが、この数倍から十数倍、あるいはそれ以上になるのかもしれない。

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隔離室の稼働率は85%

 

 

 「保護室」と呼ばれる閉鎖個室に隔離される患者も、2003年の7741人から、2013年には9883人に増えた。2013年の調査日の保護室数は1万1628室なので、稼働率は実に85%となる。外国人観光客らの訪日でうれしい悲鳴をあげるホテル並の稼働率だ。

 

 精神科の病床数や入院患者数は減少傾向にあるのに、身体拘束や隔離はなぜ増えているのか。調査を行った厚生労働省は「症状が激しい急性期の患者や、アルツハイマー型認知症患者の入院が近年増えている」としながらも、「身体拘束や隔離の増加との関連は分からない」と言葉を濁した。

 

 そう答えるしかないのだろう。「アルツハイマー型認知症の患者が増えたから、身体拘束も増えた」などとサラッと答えたら、認知症患者の身体拘束を肯定したと受け取られかねない。厚生労働省は、介護保険制度では身体拘束を原則禁止しているので、この結果は直視したくないのかもしれない。だが「分からない」では済まされない。現実を見据えて詳しい調査を行い、迅速な手を打つことが必要だ。

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佐藤写真

佐藤光展(さとう・みつのぶ)

読売新聞東京本社医療部記者。群馬県前橋市生まれ。趣味はマラソン(完走メダル集め)とスキューバダイビング(好きなポイントは与那国島の西崎)と城めぐり。免許は1級小型船舶操縦士、潜水士など。神戸新聞社社会部で阪神淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。2000年に読売新聞東京本社に移り、2003年から医療部。日本外科学会学術集会、日本内視鏡外科学会総会、日本公衆衛生学会総会などの学会や大学などで講演。著書に「精神医療ダークサイド」(講談社現代新書)。分担執筆は『こころの科学増刊 くすりにたよらない精神医学』(日本評論社)、『統合失調症の人が知っておくべきこと』(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)など。

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