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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

学校で13年ぶり色覚検査再開 異常知らず夢破れた悲劇、繰り返さぬよう…

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 2003年(平成15年)3月、文部科学省は学校保健法施行規則の定期健康診断の必須項目から、色覚検査を削除しました。

 これは、先天性色覚異常を有する児童、生徒が、色覚検査そのものや、色覚に関する問題で差別が生じたり、不利益を被ったりすることが社会問題としてしばしば取り上げられていたからだと思われます。

 しかし、当時、その理由として挙げられたのは以下の記述です。

 「色覚異常についての知見の集積により、色覚検査で異常と判別される者であっても,大半は支障なく学校生活を送ることが可能であることが明らかになっていること、これまでにも色覚異常を有する児童への配慮を指導していることを考慮し、色覚の検査を必須項目から削除した」

 この結果、学校での色覚検査は、例外的に希望者だけに行われるルールとなり、事実上はほとんど行わないまま、13年が過ぎました。

 しかし、その間に、自分が色覚異常であることを知らないまま、例えば自衛官、警察官、パイロット、電車の運転士などを夢見て育ち、入職寸前で門前払いを食ってしまうというケースがいくつも出現しました。私もそういう症例に遭遇し、本人も保護者も、何とか治らないものかと泣いて頼まれる事態を経験しました。まことに残酷な話だと思います。

 また、色覚検査が削除されたことで、教員の色覚に関する関心もすっかり薄れました。

そして、教員の無理解のために、色覚異常の児童、生徒に生ずる色使いや、色間違いに対して「ふざけている」など、不当な扱いを受ける例が報告されました。

 さて、本年4月1日付で、上記の法律が一部改正して実施されるようになりました。その中で、色覚検査についての取り扱いも再度見直されます。これについての文科省の通知を、官僚特有のまわりくどい言い回しですが、正確を期すために以下にそのまま引用してみましょう。

 ―――(前回の改正以来、色覚検査は希望者のみに実施していたが)児童生徒が自身の色覚の特性を知らないまま卒業を迎え、就職に当たって初めて色覚による就業規則に対して色覚異常及び色覚の検査に関する基本事項についての周知が十分に行われていないのではないかという指摘もある。 このため、(中略)

 1.学校医による児童生徒や保護者の事前の同意を得て、個別に検査、指導を行うなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えること。

 2.教職員が、色覚異常に関する正確な知識を持ち、学習指導、生徒指導、進路指導等において、色覚異常について配慮を行うととともに、適切な指導を行うよう取り計らうこと等を推進すること。

 特に、児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま不利益を受けることのないよう、保健調査に色覚に関する項目を新たに追加するなど、より積極的に保護者等への周知を図る必要があること。

 このように、今年4月からは、プライバシーには極力注意しながらも、学校での色覚検査が原則再開されることになります。

 そこで、次回は、先天性色覚異常に対する理解を深めていただくとともに、何が社会問題なのか、私なりに考察してみたいと思います。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

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