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先天性心疾患…乳幼児期に手術 自立へ支援

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自身の病気理解促す

 生まれつき心臓に異常がある 先天性心疾患 は、医療の進歩で乳幼児期での手術が可能になり、多くの患者が成人して社会に出られるようになった。周囲のサポートは欠かせないが、患者にも「自立」が求められている。

 「まだ遊びたい」

 東京都渋谷区の公園で、2~4歳の子どもたちが保育士に不満そうな表情を浮かべた。この子たちの胸やおなかには手術の痕が残る。健常児では問題にならない感染症も、この病気の子どもがかかると重症化しやすい。外出の機会が少ないため、週2回の通園は何よりの楽しみだ。

 ここは、心臓病の子を持つ親たちが自主運営する保育グループ「こぐま園」。1973年の設立時から関わる園長の田中千賀子さんは、「子どもは同年代の友達との遊びを通じて成長する。心臓病の子は普段、母親が付きっきりで面倒をみており、自立に向けて親離れ、子離れを促すのも目的の一つ」と語る。

 呼吸障害などの重い心不全症状が表れる難病「 総動脈幹そうどうみゃくかん (遺残)症」の長男(2)と、都内から電車で約1時間かけて同園に通う女性(32)は「息子はここに来て歩けるようになった。周りの子に刺激されたみたい」と目を細める。

 先天的な心臓病を持つ子どもは、約100人に1人。大半が3、4歳までに手術を終え、ほぼ9割が成人する。その数は現在、約50万人と推計され、毎年約1万人ずつ増えている。

 全国心臓病の子どもを守る会事務局長の 下堂前しもどうまえ 亨さん(51)は「私たちの会員も成人が4割以上。かつては20歳まで生きられるかが主たる関心事だったが、今は大人になって自立した生活を送れるかが課題」と話す。会員の相談内容も、学校や会社、妊娠出産など社会生活に関するものが増えているという。

 外見は健常者と変わらないが、多くは根治ではないため、成人後に改めて、治療や手術が必要になったり、心機能の低下や不整脈が出やすくなったりする。しかし、職場では、会社や同僚に病気のことをきちんと理解してもらうのが難しく、残業などで無理を重ね、体調を悪化させた例も報告されている。

 長野県立こども病院循環器センター長の 安河内やすこうち 聡さん(60)は「病気によっては、長期生存も可能になった。自分の病気を患者自らが早くから理解し、自分に必要なサポートを得る努力をすれば、より良い人生を送ることができる」と指摘する。

 自立を促すため、同病院では、小学生になると自分の病名を書けるようにする。心臓の異常を絵に描き、どんな手術を受けたか、何の薬を飲んでいるかなども周囲に説明できるようにする。高校を卒業して社会に出ると、体調管理をはじめとして様々な問題に直面し、親任せでは済まなくなるからだ。

 同様の取り組みは他の病院にも広がっている。

 安河内さんは「心臓病と共に生きる覚悟を決め、頑張っていこうとする患者に、私たちも何ができるかを考えていきたい」と話した。(赤津良太)

 先天性心疾患 
 心臓病のうち、生まれつき心臓の壁に穴が開いていたり、弁が狭く血流が悪かったりする病気の総称。心室に穴が開いている「心室中隔欠損症」、同症など四つの疾患を合併した「ファロー四徴症」などが知られる。多くは原因がわかっていない。
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