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ボンジュール!パリからの健康便り

yomiDr.記事アーカイブ

体臭+香水=人の匂い…フランスの香り文化に魅了され

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 パリはいろいろな匂いがする。メトロの中、バスの中など、人との距離が近くなる場面ではどうしても匂いが気になる。

 メトロでは、路線によって乗客の人種比率に大きな違いがあり、ガラリと匂いが変わる。体臭の違いもあるが、インドやアフリカの独特な香料の匂いが立ちこめるときもある。

 小雨降る日、バスの隣の席に1人の青年が座ってきた。時折、青年の匂いがする。決して臭いわけではないが、私にはどうしても好きにはなれない「匂い」だった。

 フランス人は香水やオーデコロンをつけている人も多いが、体臭も強いと思う。日本ではここまで「匂い」が主張することはないと思う。フランスにいると、日本人はほとんど体臭がないのではないか、と思う程だ。

 フランスに来て自分の匂いも変わったと思う。食べ物も変わったし、気候などもあると思うが、自分の「肌の匂い」をはっきりと感じ取れる。日本にいたころはあまり自分の匂いにも、人の体臭にも気をとられたことがなかったが、パリに来て人の「匂い」に気づくことも多く、また魅了されることも多い。フランスでは、お風呂に入る習慣がなかったことから匂い消しのために香水が発達したといわれているが、それだけが理由ではないと思う。

 私が初めて香水を買ったのは19歳の時。日本のデパートの香水売り場に行って、まずは紙で香りを試し、そして気に入った香りを肌につけてみた。肌につけると、その香りがなんとも言えない「匂い」に変わったのを今でもはっきりと覚えている。自分の肌の匂いと熱によって香りが変化していた。その魅惑的な香りに魅了されて、何度も何度も自分の肌の匂いをかいでいた。

 フランスに来て間もなくの頃、バス停でバスを待っていると、隣に並んでいたフランス人の女性が「いい香りね、何の香水をつけていらっしゃるの?」と聞いて来た。香水の名を教えると「でもきっとそれはあなたの肌だから良い匂いなのね。私がつけても同じ匂いになるとは思わない。ああ何とも言えなくいい匂い。あなたの匂いを魅力的にさせる香水ね」と言う。同じ香水をつけても、その人の肌の上で変化し、まったく違った様相を見せる。

 フランス人は、シャワーなどで肌をよく洗ってしまい、その人の「匂い」がなくなることを残念に思うことがあるという。特に、恋人との 逢瀬(おうせ) の前は、その人の肌の匂いを消されてしまっては魅力が半減するというのだ。恋人に会う前はできるだけ自分の肌の「匂い」を残しておく。恋人に会う前にシャワーを使うことが多い日本人とは「匂い」に対する思いが違うようだ。

 家族の匂いを嫌うのは近親 相姦(そうかん) を避けるためとも言われているが、子供が小さい頃は母親の匂いに安心する。母親の留守の時などは、洋服などでその匂いをかいで安心することもあるという。成人して人を好きになる時、無意識にその「匂い」のある人を選んでいることもあると思う。香水などの人為的な香りだけでなく、その人自身の「匂い」を好きになれなければ、恋愛は成立しないのではないだろうか。

 恋人と別れることになったフランス人の友人が「残念だわ。彼の匂い、好きだったのに」という。匂いは不思議な魅力をもっている、遠い昔の記憶を思い起こすこともあるし、説明しがたい魅力を感じることもある。私は人の匂いが好きである。匂いのする人が好きである。もちろん好みはあるが、それは自分でもわからない。本能的に好きな匂いが確かにある。

 フランス人は人のもつ「匂い」の魅力をよく知っており、香水なども使いながらさらに人を魅了する。フランスの香り文化は奥が深い。

■今週の一句

花冷えや そのうらはらに 熱を帯び

体臭+香水=人の匂い…フランスの香り文化に魅了され
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ボンジュール!パリからの健康便り_古田深雪_顔120px

古田深雪(ふるた みゆき)

1992年渡仏。
1997年より医療通訳として病院勤務。

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1件 のコメント

香り

セントパンクラス

2年半前に抗癌剤治療を受けてからというもの、元々鋭かった嗅覚(犬ではありませんが、笑)がますます敏感になりました。殊に治療中は家族の使用する制汗...

2年半前に抗癌剤治療を受けてからというもの、元々鋭かった嗅覚(犬ではありませんが、笑)がますます敏感になりました。殊に治療中は家族の使用する制汗スプレーの匂いが強烈に感じられ倒れそうでしたし、煙草の匂いなどもっての外でした(以前から自分の前を煙草を吸いながら歩いている人がいると走って追い抜くほど嫌いでした)。喫煙する人に染み付いた煙草の匂い、アジア系の人の衣服から漂う香辛料の匂い、何日もお風呂に入っていないような人の匂い(これがロンドンでは実に多いのです)。人間の私ですらこんな具合ですから、何十倍も嗅覚の鋭いワンちゃんたちは毎日どうやって耐えているのだろうと思います。

一方、若い頃愛用していた香水の匂いをかぐと、その昔ボーイフレンドと遊びまわっていた頃のことが思い出されます。彼も街でその匂いがすると私のことを思い出してくれているのでしょうか。

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