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女性やジュニア期選手の健康問題、共有したい

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 読者のみなさま、こんにちは。医療部で記者をしています佐々木栄と申します。このたび、ヨミドクターで、「医療とスポーツ」をテーマにコラムを始めさせていただくことになりました。よろしくお願いします。

 2020年の東京五輪・パラリンピック開催が決まって以降、新聞やテレビのニュースでこの話題に触れない日はありません。医療の取材をしていても、スポーツに絡んだ話題に接する機会が増えました。五輪・パラリンピックに向けて、医療界でも、アスリートの健康対策の知識を広めようとする機運が高まっていることを肌で感じます。

 「アスリート」には、世界で活躍する選手、プロチームや実業団で活動する選手だけでなく、地方レベルの大会に出場している選手も含まれます。医療界がアスリートの健康対策の普及に力を入れる中で、とりわけ意識しているのが、ジュニア期の選手たちのこと。少子化時代だからなおのこと、才能ある子どもたちをつぶさず、健全に育てていくことが大切なのだと感じます。

 コラムで医療とスポーツについて書きたいと思ったきっかけが、いくつかあります。

「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」は女性選手の三主徴

 一つ目は、女性アスリートが抱える健康問題について、読者のみなさんと共有できれば、という思いからです。女性選手が激しい運動を行うと「エネルギー不足」になり、「無月経」や「骨粗しょう症」を引き起こしやすくなります。これらは「女性アスリートの三主徴」と定義されており、成長期にこうした状況に陥ると、骨が十分な強度を獲得できなかったり、将来、妊娠を望んだ時のハードルになったりするなど、影響は深刻です。日本代表クラスの選手は約1割が無月経で、月経周期に異常がある選手も約3割にのぼるという統計もあります。厳しい体重管理の中で、摂食障害に苦しむ選手もいます。

 女性ならば「生理はない方が楽」と思ったことがあるかもしれません。一般女性でも、無理なダイエットをして脂肪を落としすぎ、月経周期が乱れている人もいるでしょう。生理がちゃんと来るということは、健康で、体にエネルギーが備わっている証しでもあるのですが、このことを知らない女性は意外に多いようです。

 陸上長距離、体操や新体操、フィギュアスケートなど、競技の特性上、体重管理が求められる選手たちが、これらのリスクと向き合いながらトレーニングに励んでいることも、まだ十分には認知されていません。試合を見に行くと、「あの選手はもっと体を絞った方がいい」「体が重そうに見える」というような観客の会話を耳にすることがあります。体重管理に伴うリスクが正しく理解されていれば、このような言葉は出てこないだろうに……と、もどかしく感じます。SNSが発達したいま、このような書き込みが選手本人に届いてしまい、傷つけたりプレッシャーになったりしないだろうか、と心配にもなります。

 近年、世界の舞台で輝きを放った女性アスリートたちが、「後輩たちのために」と、婦人科疾患に悩まされた体験を明らかにする動きが目立っています。ヨミドクターでコラム連載が始まった陸上円盤投げ元日本代表の室伏由佳さんは、勇気ある告白をした“先駆け”的な存在です。プロフィギュアスケーターの鈴木明子さん、レスリング金メダリストの小原日登美さんの体験談を記事で紹介したところ、思いのほか多くの方に読んでいただき、社会の関心の高さを感じました。コラムでは、こうしたテーマをタブー視せず、読者のみなさんと共有できれば幸いです。

成長期にある子どものスポーツ障害も深刻

 もう一つ、考えさせられたテーマがあります。成長期にある子どもたちが、なるべくスポーツ障害に悩まされずに競技に打ち込むためには、何が必要なのだろうか、ということです。朝刊企画「医療ルネサンス」で「成長期」をテーマに連載し、子どもから大人へと体が変化していく時期にトレーニング法を誤ると、けが、貧血などの内科的疾患につながるということを書きました。

 その取材では、治療に携わる先生たちの言葉がとても印象に残っています。

 「成長期の子どもの骨は傷つきやすく、修復しやすい。この時期に骨に痛みがあるならば、しっかり休んで治した方がいいし、そこで無理したら、一生後悔することにもなる。子どもは大人のミニチュアではないことをちゃんと理解して、練習メニューを考えないといけません」

 「体の動きが悪そうに見えたら、選手に貧血などが隠れていないか疑ってほしい。目いっぱい頑張っているのに、『サボっている』と言われて傷つき、部活をやめてしまう子もいる。そんなのはもったいないでしょう」

 成長には個人差があります。骨が成長して身長が伸びている時期と、筋肉がついていく時期では、トレーニング法を変えなければいけませんが、チームの中で細かく分けるのが難しいケースもあるでしょう。痛みがある時には休む勇気も必要ですが、ライバルとの競争を意識して、「休みます」と言い出せなかったり、けがを隠して運動を続け、かえって悪化させてしまったりすることもあるかもしれません。だからこそ、成長期のスポーツ障害への対処には、保護者、指導者の方たちの見守りとサポートが欠かせないと感じます。このコラムでは、ジュニア期のアスリートの健康課題についても一緒に考えていきたいと思っていますので、ぜひ実体験を寄せていただければと思います。

女性やジュニア期選手の健康問題、共有したい

新体操で2度、五輪に出場した村田由香里さん

 次回からは、シドニー(00年)、アテネ(04年)と2度の五輪で活躍した新体操の元日本代表、村田由香里さんの体験談を紹介します。「スリムな体形の方が有利」とされる新体操。過酷なトレーニングと厳しい体重管理に向き合う中で、何を思い、どのように対処してきたのか。指導者となった今、伝えたい思いとは――。女性アスリートの“リアル”に迫ります。

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