文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

yomiDr.記事アーカイブ

[カルシウム]加齢により吸収率は低下

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

骨や歯だけではないカルシウムの役割

 

第9回 カルシウム

 カルシウムは成人の体の中には約1kg存在しており、その99%は骨に、残りの1%は細胞や血液に分布しています。

 カルシウムは、骨や歯の構成成分であるばかりでなく、筋肉の収縮、血液凝固、神経の伝達、免疫機能の調節等、生命の維持にとって重要な生理機能の調節をしています。そのため、カルシウムの血中濃度は一定の濃度になるように厳格に調節されており、生体には血中のカルシウム濃度が低下したときには、直ちにカルシウムの貯蔵庫である骨からカルシウムを溶かして利用する仕組みが備わっています。

 その仕組みに関係しているホルモンは、活性型ビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニンです。活性型ビタミンDは、食物から摂取した、あるいは皮膚で合成されたビタミンDが肝臓と腎臓で代謝されて、より活性の強いかたちになったものです。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進するとともに、血中のカルシウム濃度が低下した時には副甲状腺ホルモンと共同して骨からのカルシウムを溶かし、また腎臓からのカルシウムの再吸収を 亢進(こうしん) して、血中のカルシウム濃度を高めます。血中のカルシウム濃度がもとに戻ると、カルシトニンが甲状腺から分泌されて、骨からカルシウムが溶けるのを抑えるように調節されています。

 カルシウムの吸収率は、栄養状態、年齢、活動量などにより影響を受けます。カルシウムの摂取量が少ないときは、カルシウムの吸収率が上昇するように調節されていますし、また、カルシウムの吸収能は妊娠により上昇し、加齢により低下します。

 

カルシウム摂取と骨の健康

 

 カルシウムは骨の重要な構成成分です。骨はコラーゲン等の骨基質たんぱく質に、リン酸カルシウムの結晶が沈着してできています。骨基質たんぱく質とカルシウム等のミネラルの量をあわせて骨量といいます。カルシウムと骨密度及び骨折との関連を調査した研究では、カルシウムの摂取量と骨密度とは相関するものの、骨折との関連は認められないとする報告が多いようです。すなわち骨密度はカルシウム等のミネラルの量を示すものですが、骨折は骨基質たんぱく質の質や骨の構造、筋肉の強さ、ホルモンの状態等に影響を受けるため、単純にカルシウムの摂取量に相関するものではないようです。

 特に閉経後5年以内の女性においては、女性ホルモンの急激な低下により骨量が減少するため、この時期のカルシウム摂取量と骨量に相関関係は認められません。一方、高齢者では食事の摂取量が少ないこと、腸でのカルシウムの吸収が低下すること、活性型ビタミンDへの変換が減少するため、カルシウムが不足しがちです。したがって、食事から十分に摂取できない場合は、不足の分をサプリメントから摂取することも必要でしょう。骨量は20歳頃に最大に達するため、それまでに十分な栄養(特にカルシウム)摂取と運動、日光浴を心がけることがもっとも重要です。

 

吸収を助けるビタミンDも大切

 

 日本人の食事摂取基準(2015年版)では、カルシウムの推奨量が策定されています。また、骨量の維持・増加によって骨折の一次予防が期待できることから、カルシウムの推奨量は、目標量の意味も併せもちます。日本人の食事摂取基準(2015年版)におけるカルシウムの一日当たりの推奨量は、15~29歳の男性で800mg/日、30~49歳の成人男女では650mg/日です。一方、2013年の国民健康・栄養調査の結果によると、男女とも20~59歳で一日当たりのカルシウムの平均摂取量は500mgを下回っています。

 従って、推奨量のカルシウムを摂取するためには、カルシウムを多く含む乳製品、小魚、野菜、大豆食品等をもっと意識して摂取する必要があるといえます(表1)。特に乳製品にはカルシウムの吸収を助ける食品成分が含まれていますので、お勧めです。なお、乳製品などが苦手で食事から十分な量を摂取することができない方は、サプリメント等を利用することも必要かもしれません。

 一方、小腸におけるカルシウムの吸収を助けるビタミンDも重要です。ビタミンDはしいたけやきくらげ等のきのこ類及びサケやニシン等の魚類に含まれていますので、これらの食品を積極的にとるよう心掛けるとよいでしょう。また、ビタミンDは皮膚で合成されるので、1日に15分程度は日光に当たることも必要です。長期間カルシウムが不足すると、骨粗しょう症、高血圧、動脈硬化を引き起こすことがあります。また、極度に不足すると筋肉のけいれんなどが起こります。

 

id=20160404-027-OYTEI50017,rev=2,headline=false,link=true,float=center,lineFeed=false
id=20160404-027-OYTEI50018,rev=2,headline=false,link=true,float=center,lineFeed=false

 

 

サプリメントからの過剰摂取には注意

 

 カルシウムは、食事以外からサプリメントのようなかたちで摂取する場合も想定されます。カルシウムは栄養機能食品の対象成分であり、特定保健用食品の関与成分にもなっています。関与成分とは、保健の機能を表示することができる対象成分のことで、カルシウムは骨粗しょう症の予防に関する表示をすることができます。また、その他のビタミン・ミネラルサプリメントを利用する機会も多いのではないでしょうか。

 その際に注意しなければならないのは、過剰摂取です。カルシウムは過剰摂取により、泌尿器系の結石、ミルクアルカリ症候群(高カルシウム血症による体調不良)、他のミネラルの吸収を抑えること等から前述の食事摂取基準では、成人におけるカルシウムの耐容上限量は2,500mg/日に設定されています。また、2008年、1日当たり1,000mgのカルシウムサプリメントを5年間摂取したニュージーランドの高齢者(平均年齢74歳)において、脳・心血管疾患の発症率が増加すると報告されたことから、高齢者においては、サプリメントからカルシウムを摂取する場合には、より一層の注意を払う必要があります。

 また、2008年の日本人男女4万人を対象とした疫学研究で、カルシウムの摂取量が少ないグループ(233mg/日)は、摂取量の多いグループ(753mg/日)に比べて、脳卒中の発症リスクが高いことが報告されました。このことから、カルシウムの摂取量は、少なくても多くても健康に悪影響を及ぼすことが分かります。したがって、カルシウムは通常の3食の食事から必要な量を摂取することを心がけ、足りない場合は栄養機能食品やサプリメント等の摂取目安量(栄養機能食品では下限値が210mg、上限値が600mg)を守って摂取するとよいでしょう。

 

 (国立健康・栄養研究所 石見佳子)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ss80

国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、現在はその中の組織として位置づけられている。

ホントはどうなの?健康食品・サプリメントの一覧を見る

最新記事