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オトコのコト 医師・小堀善友ブログ

妊娠・育児・性の悩み

手塚治虫が書いた論文…時代の最先端をいく研究!

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 漫画の神様、手塚治虫先生が書いた論文「精子の電子顕微鏡研究」を読んでみた

 私は精子を見るための顕微鏡の研究をしており、その知識を得るためいろいろな論文を検索して調べています。最近は、電子顕微鏡の画像とその他の新しい技術を併せて用いることによって、新しい知見が得られないかを考えていました。

 そこで、論文を調べていたところ、「手塚治先生」が書かれていた論文がヒットしてきました。これってもしや、漫画家の手塚治虫大先生の本名では?

 私は、昔から漫画を読むのが大好きでしたが、小学生の時に図書館で「火の鳥」を読んで以来、手塚治虫先生のファンになりました。手塚先生自身が医師免許を取得し、医学博士であったのは有名な話で、その専門知識を生かした「ブラック・ジャック」のような医学をテーマにした作品も書かれています。

 「ブラック・ジャック」を読んで医師を志した、というドクターも実際にいるのです。どうでもいい話なのですが、私は「ブラック・ジャック」ではなく、少年マガジンに連載されていた「スーパードクターK」という漫画を浪人中に読んで医師を志しました。今思い返すと、人生なんて漫画を読んで決まってしまうこともあり、何があるかわからないものですね。

手塚治虫が書いた論文…時代の最先端をいく研究!

 さてさて、手塚治虫先生の論文の話に戻ります。その論文の名は「異型精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的研究」というものです。検索をすればこの論文をインターネットから誰でも見られるようになっています。インターネットって素晴らしい。

 論文は1960年に書かれたものでした。なんと、手塚治虫先生は今から50年以上も昔に、私が現在研究しているテーマに取り組んでいるではありませんか!なんとも胸が熱くなります。

 論文では、タニシの 睾丸(こうがん) の中の精子を用いて、その膜構造について詳細に解析した実験結果について書かれていました。おそらく、その時代で電子顕微鏡を用いて研究をされていることを考慮すると、時代の最先端の研究をされていたに違いないと思われます。論文の内容をもっと詳しく説明したいところなのですが、正直言いまして、私から見ても内容が非常に難しく、完全に理解することができませんでした。あしからず。

 ちなみに記録を見てみると、手塚先生は1952年に「鉄腕アトム」、1953年にはリボンの騎士の連載を開始していたことが分かりました。漫画の連載を抱えているという、時間に余裕がない中で、その時代の先進的な医学的研究をするとは、さすが素晴らしい才能の持ち主と感動してしまいます。物語を作って、絵を描く才能だけでなく、医学的なアイデアもひらめいて実行してしまう行動力もあるのですから。

 私自身は、漫画の神様の研究の足元にも及びませんが、その精子の顕微鏡の研究を少しでも進歩させることができればいいなあと考えています。

 さて、先日1年7か月に渡る留学を終了し、米国シカゴより帰国致しました。今後は留学の経験を生かし、泌尿器科医だからこそ発信できる興味深い医学的情報を共有していければと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

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小堀善友 (こぼり よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。詳しくはこちら
主な著書は『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。詳細はこちら

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3件 のコメント

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精子や卵子は、学校で習った程度しか知りませんが、大きな関心と疑問があります。いつ頃、誰がどのようにして精子を発見したのでしょうか?少し、歴史的背景を解説していただけるとありがたいです。

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留学の成果が続々と発表されることに期待

miyagikenjin

留学から日本に帰国、まずは無事で何よりです。 今後はぜひ研究成果、アメリカでの性教育や文化などを一般の人に伝えてほしいです。 私は小堀医師とは同...

留学から日本に帰国、まずは無事で何よりです。

今後はぜひ研究成果、アメリカでの性教育や文化などを一般の人に伝えてほしいです。

私は小堀医師とは同い年(宋医師とも同じ)なので、同世代として記事に期待してます。(お2人とも1浪して医学部に合格したのも同じとは。)

個人的に聞きたいことは2つほど。
1.シカゴの学校ではどのような性教育が行われているのか?
日本と比べてアメリカは進んでいる、というイメージがありますが保守的な土地柄ではピューリタン(清教徒)の思想により禁欲教育、純潔教育が行われていると言われます。(「青少年に有害!」河出書房を読むとノーセックス教育が行われているとか…)シカゴのあるイリノイ州では何歳から教わり、どのような内容で、男女一緒に教わるのかそれとも別々か、性教育の効果は出ているのか、他の州ではどう違うのか、東部と西部、北部と南部、カトリックとプロテスタント、プロテスタントの右派と左派、共和党と民主党、等。留学している他国の医師からの世界の性教育の違い(公立と私立で違いはあるか、男女一緒か男女別々なのか、などに興味があります。)
2.男性の包茎について
先月日本で出版された「ひよこクラブ4月号」には男の赤ちゃんの性器の皮をむく、むかないの特集記事が載っていました。(今月15日に5月号発売なのでお急ぎを)記事は泌尿器科医監修(有名な岩室医師ではない)ですが、小堀医師の意見は?
4人の息子は赤ちゃんの頃剥いてましたか?
上の息子は10歳前後と仮定なら包皮はむけて、夢精・自慰を経験が近いと推測します。
アメリカでは子供の性について医師の親はどう教えるのでしょうか?
4人の息子には宋医師(3姉妹長女)に女子の体と心を教えるのが最適と思います。
宋医師は昨年11月男子を出産したので小堀医師が性器の洗い方を教えるのがいいですね。

今後の記事に期待します!

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手塚先生の影響

ムックウ

手塚先生の影響では特にロボット研究者に多いですよね。 これからも手塚先生の愛弟子の一人として小堀先生には多くの病人の為の治療研究をお願いしたいと...

手塚先生の影響では特にロボット研究者に多いですよね。
これからも手塚先生の愛弟子の一人として小堀先生には多くの病人の為の治療研究をお願いしたいと思います。

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