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[iPSの10年]医療を変える(5)細胞を培養、凍結保存

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理研は創薬目的、京大は「再生医療」

[iPSの10年]医療を変える(5)細胞を培養、凍結保存

 金属製のタンクのふたを開けると、冷気とともに白いもやがふわりと上がった。理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)の一室。タンクの中には、様々な難病患者らの皮膚や血液から作ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)約100万個が入った小さなアンプルが数百本、マイナス196度の液体窒素で凍結保存されている。

 同センター細胞材料開発室長の中村幸夫(54)が、アンプルを示しながら言う。「多くの難病患者の希望がここにある」

 同センターは2010年度から全国の大学などが作った難病患者らのiPS細胞の寄託を受け、大量に増やして凍結保存する「疾患特異的iPS細胞バンク」を始めた。

 現在、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)など60以上の難病患者のiPS細胞を保存。大学や公的研究機関なら1アンプル2万8800円、製薬企業など民間には同5万7600円で提供する。

 各施設は、提供されたiPS細胞から病気の特徴を再現した細胞を作り、病気の原因を探ったり、薬の候補物質を試したりする。

 中村は「各施設が同じ病気のiPS細胞を作り、保管していては時間も費用も無駄になる。作製したiPS細胞を1か所で保存し、必要な施設に提供すれば、研究が効率よく進む」と、バンクの意義を説明する。

 11年3月の東日本大震災では危機に陥った。地震直後に一帯が停電した。すぐに復旧したが、非常用電源は約6時間しかもたない設計だった。震災を教訓に、1週間はもつように非常用電源を強化した。

 ■ ストック不可欠

 京都大iPS細胞研究所もiPS細胞を大量に培養し、凍結保存する「iPS細胞ストック」を13年度から進める。理研の取り組みが創薬目的なのに対し、京都大は、iPS細胞を目的の細胞に変化させて移植する「再生医療」に使う。

 同研究所医療応用推進室長の高須直子(53)以下70人体制で、他人に移植しても免疫による拒絶反応が起きにくい白血球の型を持つ健康な人から採血し、iPS細胞を作製している。

 患者個人からその都度、iPS細胞を作れば拒絶反応は起きないが、「オーダーメイド」で、時間と費用がかさむ。一方、ストックができればiPS細胞を医療機関に素早く、安く提供できる。

 同研究所は日本赤十字社などと連携し、該当する白血球の型を持つ人に協力を依頼。協力者の血液を基に、同研究所内の「細胞調整施設(FiT)」で、専門の技術者がiPS細胞の作製や培養、安全性検査、凍結保存などを行う。

 高須は「iPS細胞による再生医療の普及にはストックが不可欠」と話す。

 (敬称略、おわり)

 (竹内芳朗、諏訪智史が担当しました)

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