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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(27) 奨学金は幅広く、いろいろ探してみる

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個人の保証人はなるべく避けたい

 学生支援機構の奨学金を借りるときは、人的保証、機関保証のどちらかが必要です。

人的保証の場合、一般的には親が連帯保証人になり、独立した生計を営む4親等内の親族(原則65歳未満)を保証人にします。費用はかかりませんが、将来、何らかの事情で返還が滞ったら、親に請求が行き、親も払えないときは保証人に請求が行きます。払えないと訴訟を起こされ、場合によっては家が競売にかけられます。たとえ自分が自己破産して債務が消えても、家族・親族に迷惑が及ぶのです。

 機関保証だと、月々の奨学金から保証料が天引きされます。延滞が続くと、いったん保証機関が支援機構に残金を払いますが、今度は保証機関が本人に請求します。最近の保証料は貸与月額の3~5%前後です。支給額が減るのは痛いのですが、自己破産という最終手段を残せます。ほぼ確実に安定した職業につけそうな学生以外は、機関保証を選ぶことを筆者は勧めます。

自治体、民間団体、大学の奨学金

 しっかり探してほしいのは、地方自治体による奨学金、企業を含む民間の奨学金、大学による奨学金です。貸与型だけでなく、給付型、条件付き返還免除型もあります。優秀な学生を対象にした奨学金、特定分野の学生を対象にした奨学金のほか、家計事情を重視した奨学金もあります。

 ネックは、どこにどういう奨学金があるのか、把握しにくいことです。大学・学校が紹介する奨学生募集情報はもちろん、出身地の自治体の奨学金制度も必見です。それ以外でも、自分にあてはまるものがないか調べてみましょう。ただ、他の奨学金と併用できないこともあります。

 調べる手がかりのひとつは、学生支援機構の「 大学・地方公共団体等が行う奨学金制度 」のページにある調査結果です(すべては調査できていない)。「 奨学金なるほど相談所 」というサイトのうち、その他の奨学金のコーナーにも、ある程度、紹介されています。

 

 <家庭事情に着目して無利子貸与を行う主な団体>

日本教育公務員弘済会  経済的に苦しい学生

あしなが育英会     病気、災害、自殺などで保護者が死亡・重い障害

交通遺児育英会     交通事故で保護者が死亡・重い障害

 

「条件付き返還免除型」の奨学金も多い

 貸与の形をとっていても、卒業後の一定期間、指定された条件で働けば、返還が免除される奨学金もけっこうあります。いわゆる「お礼奉公」方式です。勤務の約束を果たさないと、借りた総額の一括返済を求められるので、人生の進路が制約されますが、月5万円、10万円といった多額の貸与を受けられる場合もあり、経済的に苦しい学生や親にとってメリットは大きいでしょう。

 とくに看護分野には、自治体、医療団体、個々の病院による奨学金がいろいろ存在します。たいていは、借りたのと同じ年数を指定範囲の医療機関で働いたら、返還が免除されます。レベルの低い病院が募集していることもあるので要注意ですが、一部の大学病院、国立病院機構、市立病院をはじめ、レベルの高い医療機関の奨学金もあります。リハビリ系や介護、保育の分野でも、そうした奨学金が一部にあります。このタイプの奨学金は、必ずしも大学や専門学校を通じて募集しておらず、積極的に宣伝していない場合もあるので、自分で情報を集めることが大切です。

 医学部だと、地域医療の医師を確保するために自治体が設けた指定入学枠や修学資金制度があります。私立の医学部でも、自治医大(栃木県下野市)は卒業後9年間、出身都道府県で条件を満たす勤務をすれば、学費負担がゼロになり、産業医大(北九州市)も9年間の一定範囲の勤務で負担が軽減されます。

 このほか、一部の県は、政府の地方創生基金を利用して地方に就職すれば、学生支援機構などの 奨学金の返還を支援する制度 を作っています。地方自治体の推薦による第1種奨学金(無利子)の地方創成採用枠も、16年度から新設されます。

国の教育ローン、民間の教育ローン

 教育ローンは、奨学金と違って、親が借りるもので、在学中から利息が発生します。

日本政策金融公庫の教育ローンは「 国の教育ローン 」と呼ばれます。収入が一定基準以下の世帯を対象に、子ども1人あたり350万円まで、約2%の長期固定金利で借りることができます。予備校や各種学校でも利用でき、用途も学費だけでなく、住居費、教科書代、パソコン代など幅広く使えます。ただし、保証料がそれなりにかかります。

 民間の教育ローンは、収入の多い世帯のほうが借りやすく。大手銀行、信用金庫、JAバンク、信販会社など、いろいろな金融機関が扱っています。金利の水準も保証料の水準も、まちまちです。大学・学校と提携している教育ローンが必ずしも有利とは言えません。金利が安いのは労働金庫ですが、保証料がかかります。一方、保証料込みで2%台前半という信用金庫もあるので、よく調べてください。

福祉の貸し付け制度を利用する

 「生活福祉資金」の貸し付けは、低所得世帯、障害者のいる世帯、高齢者のいる世帯が対象です。都道府県の社会福祉協議会が実施主体で、市区町村の社会福祉協議会が窓口になります。制度の一つに教育支援資金の貸し付けがあり、高校・高専・大学・短大の教育支援費(大学で月6万5000円以内)、就学支度費(50万円以内)を無利子で借りることができます。学生支援機構の奨学金を優先することになっており、そちらに採用されたら移らないといけませんが、入学月までのつなぎ資金に使えます。

 「母子・父子・寡婦福祉資金」は、都道府県が実施主体で、市区町村の福祉事務所が窓口です。高校・高専・大学・短大・専門学校・専修学校の修学資金、小中学校を含めた就学支度資金を借りることができます。貸し付け限度額は都道府県によって差があります。こちらは学生支援機構の奨学金と併用できますが、連帯保証人を立てないときは有利子です。

 なお、どちらも貸し付けであって、返済が必要なことを忘れてはいけません。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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