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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(27) 奨学金は幅広く、いろいろ探してみる

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 春を迎え、大学や専門学校への進学が決まって、心を弾ませている方もいると思います。とはいえ、頭が痛いのは、学費、生活費をどうやってまかなうかです。

  前回 は、貧しい家庭の子どもの進学を念頭に、入学料・授業料の減免制度や、夜間・通信課程を含めた多様な選択肢について紹介しました。今回のテーマは奨学金、貸付金。これは一般の世帯の子どもにも大いに関係します。

 ポイントは、給付型・条件付き返還免除型を含め、自治体・民間・大学による奨学金を幅広く探すこと、日本学生支援機構の奨学金は「借金」なので安易に多額に借りないこと、卒業後の安定収入が必ずしも見込めない場合は「機関保証」を選ぶこと、生活に困っている家庭なら福祉の貸し付け、一定の収入のある家庭なら金利の低い教育ローンも検討することです。

日本学生支援機構の奨学金のしくみ

 大学の学費の高さや、奨学金をめぐる問題については、このシリーズのうち、 貧困と生活保護(6)日本の未来を危うくする学生の「四苦」 でも、ある程度、説明しました。

 学費・生活費を調達するとき、主力になっているのは、 独立行政法人日本学生支援機構 (かつての日本育英会)の奨学金です。

 教育ローンと違うのは、親ではなく本人が借りる点と、家計の収入が低いほうが奨学生に採用されやすい点にあります。家庭の収入が多いと利用できません。利用できる年収の上限の目安は、給与収入の4人世帯の子どもが2016年度の入学後に申し込む場合、国公立大の自宅通学で第1種奨学金(無利子)なら776万円(税込み)、私立大の自宅外通学で第2種奨学金(有利子)なら1214万円(同)です。また、学生支援機構の奨学金は、大学・専門学校の通信課程の一部と、各種学校は対象外です。

 予約採用は、高校3年のときから申し込めます。第1種(無利子)を希望しても採用人数の関係で外れることがあるので、一応、第1種・第2種の併用で申し込みましょう。奨学金の種類や貸与額、保証方式などは入学後に変更申請できます。進学できない場合、辞退する場合もペナルティーはありません。入学後や、在学途中でも大学・学校を通じて申し込めます。保護者の失業、病気、死亡、災害などで家計が急変したときは、緊急採用・応急採用も可能です。

無利子は成績基準あり、有利子は希望すればおおむね可能

 第1種奨学金(無利子)は、成績と家計の両方で選考されます。学力の基準は予約の場合、申し込み時までの高校での平均評定が3.5以上(5段階評価)。入学後の申し込みだと高校2~3年の平均評定が、大学・短大の場合で3.5以上、専門学校の場合で3.2以上。在学2年目以降の申し込みだと、在籍する学部または学科で成績が上位3分の1以内であることです。

 第2種奨学金(有利子)は、予約でも入学後の申し込みでも、実質的に家計状況だけで採否が決まります。「高校の成績が平均水準以上」「特定の分野で特に優れた資質能力を有する」「学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがある」などのどれかにあてはまればよいからです。

 有利子でも、在学中は国が利子補給するので利息がつきません。貸与利率は貸与期間(在学)が終わったときの金融情勢で決まります。上限3%ですが、今は超低金利で、利率変動方式なら年0.1%。低金利時代は当分続くでしょうから、金利そのものを恐れる必要はありません。固定利率より、低利の利率変動方式を選ぶのがよいでしょう。

 日本学生支援機構の奨学金には近年、回収の厳しさもあって、「実質的に教育ローンだ」「貧困ビジネスではないか」といった批判があります。有利子奨学金に必要な資金を債券購入や融資で提供している金融機関や市場関係者から見れば、低利ながら安全で巨額な投資先であり、顧客開拓から貸し付け、回収まで学生支援機構がやってくれるわけで、一種のビジネスになっているのは確かです。とはいえ低利なので、国の給付型奨学金がない状況では、必要な範囲で上手に使うべきでしょう。

必要以上に借金をしない

 学生支援機構の奨学金の貸与月額は次の通りです。入学時特別増額は入学料のためですが、国の教育ローンを利用できなかった場合が対象で、支給は入学後なので、それまでの「つなぎ資金」が必要です。

 

貧困と生活保護(27) 奨学金は幅広く、いろいろ探してみる

 

 肝心なのは、1種も2種も貸与型。つまり返還が必要で、要は借金だということです。学生支援機構で返さなくてよいのは、海外留学用の給付型奨学金と、第1種奨学生のうち、特に優れた業績を挙げた大学院生の返還免除だけです。ほかは死亡するか重い障害を持ったときしか、返還は免除されません。経済的に苦しい事情があれば、減額返還、返還期限猶予の制度はありますが、返還を先延ばしするだけで、借金自体は消えません。制度を利用せずに返還が滞ると、年5%の延滞金がつき、取り立ては裁判所への申し立てを含めて、厳しく行われます。

 したがって、あまり大きな月額を借りることはお勧めできません。月10万円を4年間借りたら元本は480万円。卒業後、毎月約2万円を20年間にわたって返還しないといけません。月12万円借りると元本は576万円になり、毎月約2万5000円を20年間です。社会人のスタートから多額の借金を抱えると、生活が圧迫されるし、結婚の妨げになることもあります。若い世代が貧困に陥る原因の一つになり、返還が滞って生活破綻に至る場合もあるのです。

 かといって、アルバイトを週20時間以上やると学業に差し支えます。最低賃金は地域差がありますが、ふつうのバイトなら、収入はがんばっても月6万~8万円でしょう。たとえば、私立大の自宅外生で学費が月10万円ぐらいかかり、生活費も学生自身で調達しようとすれば、奨学金をたくさん借りるしかない。それで学生は苦しむわけです。学費・生活費を稼ぐために女子学生が風俗で働くという残念な状況も一部にあるようです。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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