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医療・健康・介護のコラム
おしりペッタン…ぎょう虫検査の廃止について
小学校低学年で長く行われてきた「ぎょう虫検査」 が、4月1日より廃止されることになります。みなさんもよくご存じの、お尻にセロハンをペッタンされちゃう検査です。今日は、この検査にまつわる深いお話をしていきましょう。
幼い記憶に残る、屈辱の朝
母「今朝は検査よ」
子「うん、学校でもらってきたやつだね(まだ笑顔)」
母「さあ、ズボンとパンツを脱いで」
子「えっ!!(動揺)」
母「脱いだら、よつんばいになって、お尻をこちらに向けて」
子「・・・(気絶寸前)」
そこには、二度と忘れない屈辱の朝が待っていたのであった・・・
きっと皆さんも経験した、若かりし日の恥ずかしい思い出です。お尻にセロハンテープを貼りつける検査は、「ぎょう虫」の卵を調べるために行われていました。
ぎょう虫と検査
ぎょう虫は非常に小さな白いヒモのような寄生虫で、メスは 8~13ミリ、オスは2~5ミリと、メスの方が少し大きめです。このメスは、夜中にお尻から出てきて、肛門周囲に卵を産みます。その時に産む卵の数は1日に1万個ともいわれ、肛門部の強いかゆみにより、子どもはお尻をボリボリ 掻 いてしまいます。この卵は、乾燥した環境下でも数週間の感染力があります。人の手を介して、また口に入り、成長した約2か月後にはまた卵を産みます。
これまで学校保健安全法では、幼稚園と小学校の低学年を対象に、ぎょう虫の虫卵検査を行うことを義務づけていました。ぎょう虫の検査は、このメスが夜中に産んだ卵を、朝にセロテープでくっつけて調べることになります。そして、検査で卵が見つかった場合には、内服薬で治療していました。
ぎょう虫卵の保有状況
ぎょう虫検査が正式に行われるようになった1960年頃には、4人に1人くらいの割合で寄生虫卵の保有が確認されていました。その後、検査の徹底と治療、そして衛生環境の改善によって、虫卵の保有者は減少していきます。文部科学省によると、幼稚園と小学生における寄生虫卵は、祖父母世代から父母世代にかけて激減しており、子世代ではさらに減少して1%以下となっていることが報告されています。
「学校保健統計調査-平成26年度結果の概要」文部科学省の資料より
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/1356102.htm
また、こちらの東京都予防医学協会による2013年度の調査では、東京都の幼稚園・保育園児における寄生虫卵の保有率は0.06%、小学校では0.15%に減少していました。このような状況を受けて、寄生虫卵の定期検査を廃止することが議論されるようになっていたのです。
『寄生虫検査(学校保健分野)の実施成績』東京都予防医学協会検査研究センター
http://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/nenpo/pdf/2015/04_07.pdf
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ぎょう虫検査の廃止についての記事を興味深く拝見いたしました。 小生の居住する地方の保健所では、今まで、一般人でも希望すれば500円足らずの料金で...
ぎょう虫検査の廃止についての記事を興味深く拝見いたしました。
小生の居住する地方の保健所では、今まで、一般人でも希望すれば500円足らずの料金でいつでも検査を受けることができました。
ところが最近では検査セロファンの不足から予約制になり、セロファンの在庫がなくなれば検査はできなくなると聞きました。
うまみがなくなったのでメーカーが生産を投げ出したのでしょうか。何にせよ、小学校の検査が義務から外されたというだけのために、一般人までが希望しても検査が受けられなくなったわけで、これは検査が禁止されたも同然です。
九州など陽性率の高い地域では検査は継続するといっても、それも検査用セロファンがなければ、実際にはできないと思います。
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