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ボンジュール!パリからの健康便り

医療・健康・介護のコラム

フランスの歯科に根強いアメリカ神話

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 「どなたか良い歯科医をご存じありませんか?」と、よく聞かれるが、すぐに思いつくのは米国帰りの歯科医ばかりだ。私の周りでは何となく、米国の進んだ技術を学んできた歯科医が良いだろうというのが暗黙の了解になっている気がする。

 ヨーロッパの医療の各分野が世界的にどれくらいのレベルなのかはよく分からないが、特に歯学は米国に留学する学生が多い。でも1728年に世界初の歯学書を出したのはフランス人のピエール・フォシャールである。総入れ歯や歯石除去などを始めたのも、このフォシャールである。この時代には歯学の最先端を切り開いたフランスだが、今は米国神話が根強い。

 フランスでは、人口の約3割が虫歯や歯周病など 口腔(こうくう) 内の問題を抱えているという。そして虫歯の患者の半数は、痛みなどで緊急を要するまで悪化してから歯科医にかかる。子供の歯科矯正には積極的なのに、虫歯治療はあまり積極的ではないのは、費用の問題も大きいと思う。定期的な歯科検診や歯石除去なども、そのほとんどが自費となる。無料となるのは、6歳、9歳、12歳、そして妊娠4か月の妊婦の歯科検診のみだ。治療も自費となることが多く、先延ばしにしてしまうのかもしれない。

 高額な費用がかかる治療よりも、まずは予防が先決だとして、フランス歯科口腔衛生協会は、定期的な歯みがきや歯間ブラシの使い方、フッ素による虫歯予防、バランスのとれた食事などを、家庭や学校で指導するように求めている。また近年、子供が好きな甘いジュースなどが問題視されている。甘味料の入った甘い飲み物は、虫歯だけでなく、糖尿病や肥満などの問題も引き起こす。

 薬局では、ありとあらゆる口腔衛生グッズが売られている。歯磨き粉は、フッ素や美白成分、ビタミンAなどを配合したもの、刺激を減らすために研磨剤を減らしたもの、低発泡のものなどが多い。歯間ブラシやデンタルフロスなどの種類も豊富だ。最近人気の電動歯ブラシは、磨き残しが少ないことから歯科医も勧めている。

 口腔内の病原性細菌と様々な全身の病気との関連も分かってきており、高齢者の口腔ケアは必須といえる。口腔の問題は精神衛生面にも大きく影響する。私たちも、少しでも歯が痛かったり、口内炎ができたりするだけで 憂鬱(ゆううつ) になるし、おいしく食べられないのはとても悲しい。

 歯周病などで長期の治療を受けることを考えれば、定期的な歯科検診で口腔内の健康を保つことのほうが経済的なのかもしれない。

          ◇

 今村先生、ありがとうございます。

 先生のコラムをいつも拝読させていただいております。

 フランスではHIVエイズも増加傾向にありますが、梅毒も増えています。

 感染症の問題はフランスでもいつも大きく取り上げられています。

 これからも先生のコラムを楽しみにしています。

 

■今週の一句

超えるもの 空より高く 春嵐

フランスの歯科に根強いアメリカ神話
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ボンジュール!パリからの健康便り_古田深雪_顔120px

古田深雪(ふるた みゆき)

1992年渡仏。
1997年より医療通訳として病院勤務。

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4件 のコメント

イギリスでは避けたい歯科医療

セントパンクラス

イギリスでの歯科治療はNHS(ナショナルヘルスサービス)で18歳以下の子供、老人、妊婦、出産後一年以内の産婦は無料ですが、それ以外は有料です。料...

イギリスでの歯科治療はNHS(ナショナルヘルスサービス)で18歳以下の子供、老人、妊婦、出産後一年以内の産婦は無料ですが、それ以外は有料です。料金は3段階に分かれていて、歯を1本治しても複数治しても料金が同じというのには納得がいきません。しかも日本よりは格段に遅れていて、いまだに詰め物にはアマルガムを使用しているのです! 日本と同じ透明な詰め物もあるのですが、そちらはNHSでは使用できずプライベート扱いとなるため馬鹿高く、私は日本へ里帰りした時に近所の歯医者さんに治療してもらっています。自費診療でもNHS料金と変わらないか、それ以下となるのには驚きです。
また、ロンドンにはイギリス人の歯医者さんはあまりおらず、外国人移民の方ばかりです。うちの最寄りの歯医者さんはイラン人、子供たちがかかっていた少し離れた歯医者さんはポーランド人、南アフリカ人、イタリア人、イスラエル人などのグループクリニックです。以前スウェーデンで勉強されたという韓国人の凄腕歯医者さんもいらっしゃたのですが、プライベートの方に引き抜かれてしまったようでした(残念)。
ちなみにイギリスの水道水にはかなりの濃度のフッ素が入っていて、虫歯予防に一役買っているそうです。

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高額医療はなぜ?

ふらんす

日本でなら高く見積もっても保険診療内、1万5千円ほどの歯科治療に、フランスでは一回2500ユーロ×3回。追加加入保険のカバーがあっても、自費10...

日本でなら高く見積もっても保険診療内、1万5千円ほどの歯科治療に、フランスでは一回2500ユーロ×3回。追加加入保険のカバーがあっても、自費1000ユーロ以上。二度とかかれません。フランスはなぜこれほどに、高額なのでしょうか。

フッ素についてもいろいろな情報が飛び交っていて、いいのか、悪いのか。もし詳細をご存知であれば、ぜひご教授いただきたくお願いします。

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歯ブラシ

古田深雪

パパノエルさま いつもコメントをありがとうございます。 薬局の歯ブラシコーナーにいくと、ヘッドの大きさ、ブラシの硬さなど 選ぶことができます。 ...

パパノエルさま
いつもコメントをありがとうございます。
薬局の歯ブラシコーナーにいくと、ヘッドの大きさ、ブラシの硬さなど
選ぶことができます。
私はヘッド小さめで、ブラシのやわらかいタイプを購入しています。
ブラシはやわらかめが良いと歯科医から指導されました。
それから「一本一本磨く気持ちで」という日本の歯科医の言葉が頭から離れず
毎回一本一本磨くように心がけています。
歯間ブラシ、デンタルフロスも使用しています。
歯磨き粉は薬局で買えるフッ素入りのelmexを使用しています。
おかげでパリにきてから虫歯が一本もできていません。

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