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肩こり特集<上>解消運動はこれ!

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 全国で1200万人、国民の1割が抱えている「肩こり」を和らげるため、やみくもに強く揉もむのは逆効果だ――。BS日テレ「深層NEWS」に出演した東京医科大学整形外科講師の遠藤健司さんは、そんな警鐘を鳴らすとともに、肩こりを和らげるための方法を伝授した。また、肩こりの裏に潜んでいるかもしれない重大な病気の可能性についても詳しく解説した。

 (構成 読売新聞編集委員・伊藤俊行)

 

◆長引く肩こりは整形外科に

 厚生労働省の調査による体の不調ランキングで、肩こりは女性で1位、男性で2位と、高い位置を占めています(図1)。

 

肩こり特集<上>解消運動はこれ!

図1 BS日テレ「深層NEWS」より

 私が外来で主に担当している脊椎疾患でも、初期症状は意外にも、手足のしびれとか痛みではなく、肩の痛み、肩のこりなどの「不定愁訴」のようなものが多く、それが進んで、手足の症状が出てくる事例が増えている気がしています。

 

 肩こりで病院に行くのは、大げさだと思う人もいるでしょう。確かに、ほとんどの肩こりは生活習慣が原因ですが、中には神経が圧迫されて起こる肩こりとか、炎症や腫瘍などの病気によって引き起こされている肩こりもあるのです。

 

 従って、肩こりが長く続いたり、休んでいても楽にならずに肩こりが悪化したりする場合には、遠慮せず、整形外科を受診してください。

 

◆強く揉むのは悪循環

 

 多くの人は、肩がこると強く揉んでしまいます。番組での街頭インタビューでも、15人のうち8人が強く揉むと答えていましたね。揉むこと自体が悪いわけではありませんが、強く揉むことは良くないのです。

 

 肩こりとは、筋肉がダメージを受け、痛みのような張りを感じる状態です。ちなみに、「五十肩」は、肩の炎症や、老化による肩関節の周囲の組織が硬くなることによって起きる関節の問題ですから、イメージは似ていても、中身はずいぶん違います。

 

 肩こりに対し、強く揉めば、揉み方にもよるのですが、筋肉の組織により大きな損傷を与えてしまうことがあります。損傷が強ければ「揉み返し」という痛みになって出てきます。もちろん、揉めば、表面の筋肉の血流は良くなりますが、筋肉の深い部分まで揉めるわけではありません。筋肉の組織が痛み、その修復過程で硬い組織に置き換わり、柔らかかった筋肉が硬くなってしまいます。これを「 硬結(こうけつ) 」(本来は柔らかい組織が硬くなること)と呼びます。そうなると、次に揉む時は、より強い力で揉まなければならなくなり、悪循環に陥ります。とくに、機械などを使って強く揉むと、加減がなかなか効かないので、一層の注意が必要です。

 

 強く揉むことは、肩こりの根本的な解決にはなりません。一時的に気持ち良くても、結局、再び肩こりになって、その繰り返しとなり、慢性化していきますから、限界があるということです。

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