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膝痛、腰痛特集<下>腰に悪い3つの姿勢

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 高齢者運動器疾患研究所代表理事で、伊奈病院(埼玉県伊奈町)整形外科部長の石橋英明さんが出演したBS日テレ「深層NEWS」の後半は、腰痛のメカニズムと対策についての詳しい解説があり、日頃の姿勢の重要性が強調された。

 (構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆原因多様な腰痛

膝痛、腰痛特集<下>腰に悪い3つの姿勢

図6 BS日テレ「深層NEWS」より

 続いて、腰痛についてお話ししましょう。

 腰痛の原因は、 沢山(たくさん) あります。

 図6は腰の模型です。白く見える腰骨が積み重なっている間にある灰色の部分が、椎間板です。椎間板は体重を支えながら上下の骨をしっかりつなぐとともに、しなかやかに動かなければならないのでかなり大変な仕事をしているわけです。黄色で示したのは、背骨の中を通っている神経です。ご覧のように、神経の枝( 神経根(しんけいこん) )が出ていて、その枝が脚の方に伸びていって、筋肉の動きや知覚を支配しています。このほかにも、ひとつひとつの骨をつなぐ靱帯や、腰骨の周囲の筋肉など、多くの要素があります。その要素の中のどれが痛んでも、腰痛を生じるわけです。従って、すべての腰痛を何らかのひとつの原因で説明することには無理があると思っています。きちんとした診察や検査で、個別に原因を判断することが大切です。

 たくさんの原因がある中で、レントゲンやMRI(磁気共鳴画像)などの画像検査で診断がつくものとしては、椎間板ヘルニア、脊柱管 狭窄(きょうさく) 症、感染症、腫瘍などが挙げられます。

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図7 BS日テレ「深層NEWS」より

 図7はMRIで撮影した画像です。中央の「正常な状態」の写真と、図6の模型を対比しながら見てください。積み重なっている部分を 椎体(ついたい) と言います。その間が椎間板です。その後ろ側で、骨の中を通っている黒っぽいスジが神経ですが、むき出しで通っているわけではありません。脊柱管の中で、硬膜という薄い膜の細長い袋に入った脊髄液の中を、神経が通っているつくりです。白い部分が脊髄液で、目で見ると水道水と変わらないような透明な水です。こうした構造によって、神経は圧迫や衝撃から守られています。

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図8 BS日テレ「深層NEWS」より

 しかし、図8の左側の写真では、椎間板が後方に出っ張ってはみ出ています。一般的に、組織が本来の位置からはみ出すことを、医学用語で「ヘルニア」と呼びます。椎間板に強い圧迫力がかかると、椎間板の芯の部分にあたる髄核が飛び出し、この状態が、椎間板ヘルニアです。

 飛び出した髄核が神経を圧迫し、圧迫を受けた神経の支配領域に応じた下肢の痛みがあらわれます。腰だけでなく、脚も痛くなるわけです。脚だけが痛い場合も少なくありません。椎間板ヘルニアは、診察所見とMRIなどの画像で診断が可能です。

 図8の右側の写真が脊柱管狭窄症です。加齢にともない、椎間板が傷み、腰骨が変形することで神経が圧迫されることで起きます。この写真の例ですと、上下の腰骨が前後にずれた感じになって、椎間板も少し出っ張っています。後ろ側に上下の骨をつなぐ靭帯( 黄色靭帯(おうしょくじんたい) )があり、これが加齢変化などのために厚みを増していくことで脊柱管が狭くなり、神経が圧迫され、腰や脚の痛みが出ます。これも診察所見とMRIで診断可能です。椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症は、腫瘍や感染と併せて、腰痛全体の15%ぐらいを占めていると言われています。

 残り85%の腰痛は画像検査では診断ができず、「非特異的腰痛」と言われることがあります。ただ、全く原因が分からないわけではありません。整形外科医が診察すると、原因の部位が (おおむ) ね判定できますので、それに応じた治療をするわけです。その一方で、同じようなレントゲン所見があっても痛みがある人もいれば症状がない人もいますので、難しいところです。要は総合的な判断が必要ということです。

◆腰に悪い「前かがみ」「重い物」「同じ姿勢」

 ぎっくり腰は、一般的に、何らかの動きで生じる急な腰痛を指します。ただ、筋肉が原因である場合や、椎間板が原因である場合があり、すべてのぎっくり腰をひとつの原因で説明することはできません。

 ただ私自身は、ぎっくり腰の原因の多くは椎間板の損傷だと考えると理解しやすいと思っています。例えば、ずっと前かがみになって原稿を打っていた新聞記者が、立ち上がったときにぎっくり腰になったというような事例は、腰椎が前かがみになって椎間板が継続的に圧迫されている状態から、立ち上がる際にかかる椎間板への大きな圧迫力によって起こると考えられます。

 立ち上がる時には、腹筋と背筋を同時に使います。前かがみになった状態で腹筋、背筋が収縮すると、体重プラス筋力で、また強い圧迫力が椎間板にかかります。そこで、すりつぶすように椎間板が押され、椎間板に傷ができて痛みが出るのです。その椎間板の傷が治るまでの1週間から3週間は、痛みが続くことになります。もっと強い力が瞬間的にかかると髄核が飛び出す椎間板ヘルニアになるわけです。

 「くしゃみをしたら、ぎっくり腰になった」という話も、椎間板への圧迫力で説明できます。くしゃみをする際には、息を出すために横隔膜があがり、腹腔の内圧が下がります。それが腰椎を下へ押さえつける力として働き、椎間板が圧迫されて傷ができるのです。

 腰にとって悪いのは、「前かがみになる」「重い物を持つ」「同じ姿勢でじっとしている」の三つだと言えます。

◆腰を反らす時間を

 ぎっくり腰はよく、繰り返されるといいますが、原因になった部分だけでなく、それ以外の部分にも負担がかかりやすい姿勢をとっているからだと考えられます。

 腰痛全般に言えることですが、大切なことは、姿勢を良くすることです。椅子に座る際には、背中を丸くして座った方が、筋肉は楽ですが、それだけ椎間板への圧迫力がかかることになります。少しお (なか) を引っ込めるように締めて、胸を軽く張るような姿勢が良い姿勢です。腰は本来、反っているものです。その反りをキープしている状態で座っているのが良い姿勢と言えます。背筋を使うのでちょっと疲れますが、やはり良い姿勢を意識していただきたいと思います。立っている時も歩く時も、お腹を締めて軽く胸を張るようにしてください。

 次に大切なことは、無理に重いものは持たないようにすることです。もし重いものを持つときは腰が前かがみにならないよう、腰を落として膝を曲げて、少し腰を反らすようにして持ってください。また、デスクワークで長時間座っていて、腰が少し重いなと感じたときは、少し立ち上がって歩くとか、両手を腰にあててちょっと反らせる動きをすることも効果的です。机に両手をついて、腰を反らせるのもいいでしょう。

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BS日テレ「深層NEWS」より

 うつ伏せになって上体を反らす「上体反らし」も、腰痛予防や丸い姿勢の予防に有効です。ベッドや布団の上で、うつ伏せになって両手をついて腰を反らせます。朝晩、上体反らしを10秒間、5回から10回やってみて下さい。その際に首をあまり反ると、肩が張ったり、腕がしびれたりしますから、首はあまり反らないようにやってください。「ふうっ」と息を吐きながら反らすと、腰の力が抜けて効果的です。最初は腰のところに詰まるような痛みを感じるかもしれませんが、気にせず続けて大丈夫です。通常、3回目くらいからは痛みを感じなくなります。

 ただし腰を反ったときに、足先にしびれが出る場合は無理に続けないでください。脊柱管狭窄症やヘルニアのような神経圧迫がある場合に、無理に腰を反る姿勢をとると神経圧迫が余計強くなって、足先にしびれや痛みが出ることがあるからです。

◆腰痛とストレスの関係

 最近、心因性の腰痛、または脳の作用で腰痛が続く、といったことをよく聞くと思います。ただ、純粋な心因性腰痛の患者さんはごくわずかです。また、原因がなく、幻覚のように腰痛が起きることも 滅多(めった) にありません。一方で、腰痛はいろいろな要素が絡んでいますので、精神的なストレスや不安感が腰痛に影響することは少なくありません。痛みのために思うように体が動かせなくなったり、通勤や仕事に支障をきたしたりすると、それが精神的なストレスになっていくことは十分あります。

 また、当初の予想以上に痛みが長引くと、もうずっと治らないのではないかという不安な気持ちがでてきます。そうした場合に、過度に安静を保って身体を動かさないようになりがちで、さらに背骨の柔軟性が悪くなって、筋肉も弱っていき、痛みが長引いたり、余計に強くなったりすることにつながります。腰の痛みが出た場合、1週間~3週間程度の安静期間のあとは、無理しすぎない範囲でできるだけよく動くようにしてください。できれば、痛くなかった時と同じような生活パターンにして、筋肉が弱くならないようにすると腰痛が慢性化しにくいと考えられています。

 膝と腰など、身体を支えて動かすための身体のつくりのことを、私たちは「運動器」と呼んでいます。足腰は非常に重要です。実際、要介護や寝たきりになる人の4人に1人は、運動器が原因です。足腰を健康に保つことは今の生活にとっても大事ですし、将来の介護予防にも大切ですので、ぜひ運動器を健康に保つようにしてください。特に、運動で筋肉を強く保つことが大切です。

  2015年12月14日放送のBS日テレ「深層NEWS」(月~金曜日の22時~23時放送)を再構成しました。

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